【山本達也:千葉県/市川市】椅子が語る働き方の未来
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会社に入ると最初に与えられるものの一つが椅子だ。誰も特別に意識はしないが、私たちは一日の大半を椅子に座って過ごしている。デスクの高さや画面との距離は気にしても、椅子そのものに意識を向けることは少ない。しかし、ふと考えてみると椅子は働き方そのものを象徴する存在ではないだろうか。
固くて動かない椅子に座っていると、体も気持ちも固まってくる。反対に、リクライニングが深く柔らかすぎる椅子に座っていると、いつの間にか集中力が途切れてしまう。椅子の形状や機能はそのまま働き方の在り方と似ている。硬直した環境では新しい発想は生まれにくいが、快適すぎる環境もまた怠惰を誘う。
オフィスに並ぶ椅子を眺めていると、それぞれが社員の性格を反映しているように思える。背もたれをいっぱいに倒している人は思考を広げるのが得意かもしれないし、常に背筋を伸ばして座っている人は責任感が強いのかもしれない。椅子はただの道具ではなく、日々の姿勢や意識を映し出す鏡なのだ。
最近ではオフィスチェアに限らず、ソファやスタンディングデスクを取り入れる会社も増えてきた。場所や体勢を自由に選べる環境は、働き方を固定概念から解放する。座るという当たり前の行為すら再設計することで、組織の文化や社員の関係性が変わっていくのを目にすることがある。椅子のあり方を変えることが、働く人のあり方を変える一歩になるのかもしれない。
一方で、椅子に縛られない働き方を選ぶ人たちもいる。ノートパソコン一つを抱えてカフェを渡り歩いたり、公園のベンチで資料をまとめたり。オフィスの椅子から解放されることで、逆に自分の働き方を主体的に考え直すきっかけになる。固定された席に座ることと、自由に場所を変えること。その間で揺れ動く選択肢は、これからの働き方の象徴と言えるだろう。
私たちはいつも椅子に座りながら仕事を進めている。しかし実際には、椅子が私たちを座らせ、考え方を形づくり、時には生き方まで導いているのではないか。椅子は静かに語りかけてくる。「あなたはどんな働き方を選びたいのか」と。
次にオフィスで椅子に腰を下ろすとき、自分がどんな姿勢で座っているかを少し意識してみてほしい。その姿勢が、あなた自身の働き方や未来の方向性を映しているかもしれないのだから。