経営者が気づかない管理会計の本当の力
「うちの会社はちゃんと管理会計をやっているから大丈夫」そう思っている経営者の方は少なくないでしょう。でも、ちょっと待ってください。もしかしたら、その管理会計は会社の数字をまとめているだけで、社員のやる気を引き出す本当の力を発揮できていないかもしれません。今回は、そんな経営者が陥りがちな落とし穴と、会社全体を元気にする管理会計の秘訣についてお話しします。
管理会計には「二つの顔」がある
管理会計には、大きく分けて二つの役割があります。一つ目の顔は、いわゆる「情報システム」としての役割です。これは、社長や役員が正しい判断を下すために、会社の数字を集めてレポートにする機能です。どの部門が儲かっているか、どの製品が売れているか、といった情報を知るためのものです。
そして二つ目の顔が、今回一番伝えたい「影響システム」としての役割です。これは、数字を使って現場で働く人たちの行動を変える力のことです。人は、自分の仕事がどんな風に評価されるか分かると、その評価が良くなるように動きますよね。この「人の行動を変えること」こそが、管理会計の一番大切な役割だと私は考えています。
多くの経営者は、この二つ目の顔に気づいていないことが多いように思います。会社の数字をまとめて満足してしまい、その数字が社員の心にどう響くか、どんな行動につながるかまで考えていないのです。これでは、もったいないですよね。
数字を配っただけでは人は動かない
会社の売上を製造部門やその他の部門に安易に割り振るだけの管理会計をしていませんか?これでは、単なる「情報システム」の役割しか果たしていません。特に、直接売上を立てない製造部門の人たちは、「自分たちの頑張りが会社の儲けにどうつながっているのか」が見えにくくなってしまいます。
「一生懸命働いているのに、会社の儲けに貢献できているか分からない」「数字だけ見せられても、どう改善すればいいか分からない」。こんな風に社員が感じてしまったら、いくら立派な数字の資料があっても、会社全体が良くなるための行動はなかなか生まれません。数字を配るだけでなく、その数字が社員一人ひとりの「やる気スイッチ」を押すものでなければ意味がないのです。
解決策は「全員経営」できる仕組み
これからの時代、社長一人が頑張るだけでは会社の成長は頭打ちになります。社員全員が「自分もこの会社の経営者だ!」という気持ちで動いてくれるような仕組みが不可欠です。
そこで役立つのが、「小集団部門別採算制度」です。これは、会社を小さなチームに分けて、それぞれが自分たちで儲けを計算する仕組みです。この制度では、単なる売上だけでなく、生産量など製造現場の頑張りが直接数字に反映されるように工夫します。そうすることで、今まで儲けが見えにくかった部門でも、「自分たちの頑張りが、こんなに会社の利益に貢献しているんだ!」と実感できるようになります。
自分の仕事が数字に表れるようになると、社員は「もっと効率よくするには?」「どうすればコストを減らせるか?」と、自ら考えて行動するようになります。これこそが、会社の活気を生み出す「影響システム」の力なのです。
おわりに
管理会計は、ただの「実績報告書」ではありません。それは、社員の心を動かし、会社を未来へ導くための「羅針盤」です。もしあなたの会社の管理会計が数字をまとめるだけで終わっているなら、今こそ見直すチャンスです。社員の力が最大限に発揮できるような「影響システム」としての管理会計を設計することで、会社はきっと大きく変わっていきます。