クルージングヨット教室物語240
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「で、艇長会議の結果は?」
麻美子は、隆に聞かれたので、艇長会議でもらってきた資料を渡した。
「で、どんなコースなの?」
「いつもと同じ、去年のクラブレースと同じコースみたいよ」
麻美子は隆に答えた。
「いつもと同じってどういうコースなのよ」
「なんだっけ、あ、そうそう、なんだかの黄色いのを三角に回るようにって言ってたわよ」
麻美子は、艇長会議で松浦さんが話してた内容のうち、うろ覚えの部分を隆に説明した。
「あれじゃない、金沢沖のグリーンのブイを回って、大きな黄色のブイを回ってからゴールラインに向かう三角のコースって言っていたんじゃないの」
瑠璃子が麻美子に代わって説明した。
「そうそう!それそれ、それを松浦さんも言っていたわ」
麻美子が瑠璃子の説明を繰り返していた。
「ぜんぜん理解できていないじゃん」
隆が麻美子に言った。
「艇長会議に参加していない瑠璃子の方がコースの内容を麻美子より上手く説明できるってどういうこと」
「そうね、だってレースの説明難しいのだもの」
麻美子が隆に弁解していた。
「もう次から麻美子じゃなくて瑠璃子が艇長会議に出た方が良くないか」
「っていうか、瑠璃ちゃんが麻美ちゃんと一緒に出てあげたら良いのよ」
陽子が隆に言った。
「それじゃ、出航しようか」
隆が船台の上のラッコから降りた。他のメンバーも皆、ラッコから降りてマリーナスタッフにクレーンでラッコを海上へ下ろしてもらうようにお願いした。
「香代。俺らは先にポンツーンへ行って待っているから、おまえが麻美子や香織とクレーンから下りたラッコに乗って、ポンツーンまで持って来てよ」
隆は香代に言うと、自分は陽子たちと先へポンツーンに向かった。
「あ、船がこっちに来る」
隆たちとポンツーンに向かっていた雪は、ポンツーンに海上からやって来たマッキーの姿に気づいて、舫いロープを取ってやりに先へ向かった。
「舫いをお願い」
マッキーの原田さんが、バウの船上から雪に向かって、舫いロープを投げた。
「はーい」
雪が舫いロープを受け取ると、クリートにもやい結びで結ぼうとしていた、さすがに去年のクルージングヨット教室の雪は、1年を過ぎてもう舫い結びの結び方は完璧にマスターしていた。
「雪!風上かの舫いから結んであげなきゃ」
隆に言われて、風上ってどっちだったかと一瞬動作が止まってしまっていた。
「風上だよ」
再度、隆に言われてどっちが風上か迷ってしまっていた。雪が迷っている間に、陽子が来てさっさと風上側の舫いロープをしっかりと結び終わっていた。
「こっちで良いか」
雪は、陽子が別側の舫いロープを結んでくれたので、最初に受け取った舫いロープを急いで初めの予定通り結んだのだった。
「雪って、まだ風上と風下の違いも良くわかっていないのか」
少し呆れてしまっていた隆だった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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