クルージングヨット教室物語221
Photo by Shubham Dhage on Unsplash
「おまえ、バカなんじゃないの!?」
麻美子が香代を連れて、クルージングヨット教室の生徒を迎えにクラブハウスに来ていた。
麻美子たちがクラブハウスに入ると、クルージングヨット教室の授業は、まだロープワークの講習をしているところだった。
ステラマリスの阿部さんやアクエリアスの中村さんも、生徒のお迎えにクラブハウスに来ていて、教室の後ろの方で実習が終わるのを待っていた。
麻美子も、香代を連れて、教室の後ろの方に立って、授業を眺めていた。
「そこは、上側に通すと、ほら、結べるよ」
授業は、ロープワークの実習中で、後ろの方にいた生徒さんに阿部さんや中村さんはロープの結び方を教えてあげていた。
どの生徒たちも、必死にロープの結び方を実践していた。
「おまえ、バカなんじゃないの!?」
それは、前の方の席に腰かけていた若い男子生徒の声だった。
「え、どうした?」
麻美子は、声のする前の方の席を見た。
大声をあげていた男子生徒のすぐ後ろの席に、ショートヘアーの可愛らしい女の子がいた。どうやら、その女の子のロープワークの覚えが悪いらしくて、怒鳴られていたようだった。
「何も、あんなに怒鳴らなくても良いじゃないの」
麻美子は呟いた。
「麻美ちゃんが代わりに教えに行ってあげる?」
香代が麻美子に聞いた。
「え、そうね」
香代に言われて、本気で教えに行こうかと思ったが、教室のずっと前の方なので、ぜんぜん見ず知らずのおばさんが教室を縦断するのも幅枯れたので行けなかった。
「だから、さっきから上から通せと言っているだろうが!」
その男子生徒は、ショートヘアーの子が持っているロープを掴んで教えていた。
「上・・」
男子生徒に言われても、よくわからないようで、その女の子はロープを持ったまま動かせないでいた。
「もう、おまえに結べないから、結び方覚えなくても良いよ」
男子生徒は、ショートヘアーの女の子に怒鳴った。
「あんな言い方したら、泣いちゃうじゃないの」
麻美子は、ショートヘアーの女の子のことを心配していた。でも、その女の子は気が強いのか、うまく結べずにロープを持ったままオロオロしてはいるが、泣くことは無かった。
「麻美ちゃんさ、彼女のことをラッコで預かる気はないか」
松浦さんが、ショートヘアーの女の子のことを心配している麻美子に聞いた。
「え、別に良いですけど・・」
麻美子は、松浦さんに答えた。
「いや、俺が午前中の学科の講師をしたんだけど、その時にも彼女の反応とか見たんだけど、障害があるってわけでは無いんだけど、少し頭の回転が鈍い子みたいで」
歯科医の松浦さんが答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
東京国際ボートショー開催中の横浜マリーナではクルージングヨット教室生徒募集中!