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クルージングヨット教室物語220

Photo by Johnny on Unsplash

「お昼は食べ終わりましたか?それでは授業の続きを始めます」

クルージングヨット教室の午後の授業が始まった。

「風がこちらから吹いています。左と右からヨットがやって来ました。こちらは風上、こっちは風下なので、風上のヨットが先に走って行きます。どうしても風下のヨットは遅くなりますね」

教壇の講師は、ホワイトボードにわかりやすいようにヨットの図柄を書いて、風を受けるセイルの説明をしてくれるのだったが、明子にはさっぱり理解できなかった。

「なんか難しいな」

明子は、必死で先生の言うことを聞いてはいるのだが、いまいちよく理解できない。周りの生徒の様子を確認すると、うんうんと先生の言うことに一つずつ頷いたりしている人が多いので、他の人たちは皆、一応先生の話すことを理解できているようだった。

「私、頭が悪いな」

明子は、授業が進むにつれて、どんどん先生の説明から置いていかれてしまっていた。

「だめだ、私ったら初回でもう既についていけていない」

クルージングヨット教室は、まだ初日が始まったばかりでまだ後、半年ぐらい受講するのに、どうやって先生の言うことについていけば良いのだろうと悩んでいた。

「ヨットの走る仕組み、基本的なことは以上になります」

先生は、生徒たち皆に伝えた。

「後は、この仕組みを理解しながら、実際にヨットに乗りながら身体で覚えていきましょう」

先生が言った。

「基本的には、午前中から今までお話した内容を理解できていれば、後は実戦でヨットを操船していけば、簡単に乗りこなせるようになりますから安心してください」

先生は、生徒たちに言った。

「今まで話した内容については、皆さんお分りになられておりますよね。簡単な内容だったと思うので、わからなかったって方はいませんよね?」

教壇の先生は、生徒たちに聞いた。

「はーい、よくわかりませんでした」

と明子は先生に答えようと思ったが、周りの生徒たちを見ると、どの生徒たちも、講義の内容は簡単だったみたいで、うんうんと大きく頷いている人ばかりだったので、明子も手を上げられなかった。

「ここがわからないってところありませんか?」

先生が生徒たちに聞くと、どの人も皆、わからない箇所などありませんって表情の人ばかりだった。

「基礎的なことで、簡単なことばかりだったので皆わかっていると思います」

一番最前列に座っていた男性が、先生に頷き、周りも大きく頷いていた。

「そうですよね。皆さん、理解できているようですね」

先生も最前列の男性やその周りの生徒たちの表情を確認して頷いていた。

「では、続いて次に進みたいと思います」

先生は、短いロープを手にしていた、

「皆さんも、この短いロープを事務局で教科書と一緒に受け取られているかと思いますが、この短いロープを使用して、基本的なロープの結び方について実習したいと思います」

先生は、皆に伝えた。

「講義の方でわからないことが結構あるんだけどな」

先生にわからないと聞きづらくて、聞けなかった明子は、講義内容があやふやなままに、次のロープワーク実習に授業が進んでしまったことに戸惑ってしまっていた。

「後で、職員室みたいなところに行けば、特別に先生から教えてもらえたりできるのだろうか」

明子は、先生のロープワークを眺めながら考え込んでしまっていた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など

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