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クルージングヨット教室物語219

Photo by asagi on Unsplash

「こんなところにヨットハーバーがあったんだ」

その日、横浜のマリーナにやって来た松下明子は思った。

ここのマリーナでクルージングヨット教室を開講していることを横浜市の市報で知って、毎年応募者多数で抽選と聞いていたので、どうせ当たらないと思いながら応募したのだった。

それが当選してしまって、ヨット教室初日の案内ハガキが届いたのであった。

案内ハガキに記載されていた地図を参考に、根岸線に乗って根岸駅で降車すると、地図の示すままに歩いて行くと、橋を渡った先にヨットのマストが見えて、横浜のマリーナが在った。

「すみません、クルージングヨット教室に来たんですけど」

エントランスにいた職員に聞くと、クラブハウスの2階を案内された。

正面に教壇が置かれていて、その前に椅子が並んでいて、もう既に何人かの生徒たちが来て、座っていた。どの人も皆、静かに椅子に腰掛けているので、明子も静かに空いている席へ腰掛けた。

「でも、これってヨットのクルージングヨット教室だよね。学校の塾とか予備校のセミナーじゃないんだし、もっとワイワイお喋りしたって良いんじゃないかな」

そう思った明子は、元来お喋り好きの性格を活かして、さすがに知り合い同士で来ていたり、ご夫婦で参加している人には声をかけづらかったので、自分の側に腰掛けていた1人の女性に声をかけてみた。

「私も、ヨットって覚えて見たいなと思って」

「そうなんですね。私もです」

明子は、授業が始まるまでの間、ずっとその女性と話しこんでいた。

「それでは、本年度のクルージングヨット教室を開講します」

教壇に上がって来た男性が言って、ヨット教室は始まった。

このマリーナの理事長だという男性が挨拶し終わると、今年のクルージングヨット教室の担当だという男性が教壇に上がり、授業が始まった。

授業が始まったので、明子も隣の女性とのお喋りを辞めて、先生の話に集中していた。

「それでは、午前中の授業はここまでにしましょう」

先生が言うと、午前中の授業が終わった。

「午後は1時から始まりますので、それまでにはここへ戻って来てください」

先生が教壇を後にした。

「わかりました、浄行の内容?」

明子は、隣の知り合った女性に質問した。

「ええ、一応はわかりましたよ」

「本当ですか?私、全く何を言っているのかわかりませんでした」

明子は、隣の女性へ正直に白状していた。

「なんか風向きによってヨットって走れたり走れなかったりする向きがあるなんて知らなかったです」

「そうなんですか」

「ええ。先生に教えられて、風向きで走るって知れたのすごく勉強になりました」

女性は、明子に答えた。

「そうなんですか。風向きでヨットって走れないんですか?」

「え、先生が何度も説明していましたよね」

隣の女性に言われたが、明子は先生の話が頭に入っていなかったので、女性の話が、まるっきりちんぷんかんぷんで何も答えられなかった。

「本当に全然わからなかったんですね」

「たぶん、この辺のところを復習しておいた方が良いですよ」

隣の女性が、明子の持っているヨット教室の教科書を開いて、明子に教えてくれた。

「はーい、勉強しておきます」

と明子は隣の女性には答えたものの勉強して理解できるか自信が持てなかった。

「お昼どうしますか?」

「お弁当持って来たので」

隣の女性は、自分のバッグからお弁当箱を取り出した。

「私、持って来ていないので、なんか買って来ますね」

「その先に、相鉄ローゼンがありますよ」

隣の女性に教えられて、明子はローゼンまでお弁当を買いに行った。

「ただいま」

お弁当を買って、戻って来たときには、隣の女性は既にお弁当を食べ終えていて、隣の女性とお喋りしながら、明子は1人でお弁当を食べていた。

天気が良かったので、明子はマリーナの敷地内の面で食べたかったのだが、隣の知り合った女性が日に焼けそうで表に出たがらなかったので、明子も一緒にクラブハウスの中で食事していた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など

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