「え、何それ?」
麻美子は、先週の横浜のマリーナでのことを聞いて羨ましがっていた。
「それじゃ、子供たちと一緒にヨットに乗ったの?」
「うん。まあ、子供たちと乗ったというよりも、ボートから指導したというか・・」
陽子が麻美子に答えた。
「よかったね。私も先週、マリーナにいたかったわ」
麻美子は、心からそう思っていた。
「何、麻美子はヨットを教えたかったのか」
隆が麻美子に聞いた。
「教えたいって、私じゃヨットのことあまり知らないし、教えられないよ」
「まあ、麻美子じゃヨットのこと人になんか教えられるわけないよな」
隆が笑った。
「何よ、その言い方、憎たらしいんだから」
麻美子は、隆の頭を小突いた。
「教えたいっていうか、私は子供が好きだからさ」
「ジュニアヨット教室は、麻美子の子供ができた時に、その子のことを入れさせれば良いじゃん」
「そうだね」
隆は、ラッコのデッキに上がって、香代や瑠璃子たちと艤装をしていた。
「私、まだ誰とも結婚もしていないし、子供ってどういう意味よ・・」
麻美子は1人呟いた。
「多分だけど、それって照れ屋の隆さんのプロポーズみたいなもんじゃないかな」
陽子が麻美子に言った。
「えっ」
麻美子は、陽子の言葉に戸惑っていた。
「そういえば、麻美子!」
隆が船台の上のラッコから地面の麻美子に声をかけた。
「お昼過ぎから生徒の明け渡しだってさ」
「え?クルージングヨット教室のこと?」
「ああ」
今日は、4月上旬で新しく始まる横浜のマリーナのクルージングヨット教室初日だった。
「また、新しい生徒さんが4人ぐらいくるの?」
「4人も取ったら、ラッコがいっぱいになってしまうから」
隆は、瑠璃子に答えた。
「今年は1人だけ生徒を取った」
「そうなんだ」
瑠璃子は隆に答えた。
「今年の生徒は、俺は何も教えないから、瑠璃子とか皆で教えてやれよ」
隆は、瑠璃子や香代たちに伝えた。
「そうなんだ。確かに、人に教えることで、自分たちの勉強にもなるものね」
瑠璃子は、隆に言った。
「生徒の明け渡しは、お昼過ぎだから、それまでに少しだけ海に出てこよう」
「了解!」
瑠璃子は隆に答えて、ラッコの艤装を終えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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