「なになに、どうかしたの?」
練習を終えて、ポンツーンに戻ってきた。
これからヨットを陸上に上げて、艤装を解除して片付け始めるのだったが、ポンツーンの周りに少年たちが集まっていた。
「なんかいるの?」
陽子が覗きこむと、海面にクラゲがたくさん浮かんでいた。
「クラゲ」
「あ、本当だ!」
陽子が少年に頷いた。
「あれ、捕まえてみたいの」
「捕まえたいのか」
陽子は、ポンツーンの周りを見渡した。
「あ、ヨットがひっくり返った時に、水を掻き出す柄杓があるでしょう。あれをちょっと持ってきてくれる?」
「はい、お姉ちゃん」
少年がヨットに飛び乗ると、柄杓を持って帰ってきた。陽子は、柄杓を海面に入れると、クラゲを掬った。
「ほら、クラゲさん捕まえた」
陽子が少年に見せると、少年たちは嬉しそうに柄杓の中のクラゲを眺めていた。
「何をしているの?」
やって来た女の子に、少年の1人が柄杓を持って近づけた。
「きゃあああー!」
女の子が柄杓のクラゲから逃げ回るので、男の子は面白がって、柄杓を持って女の子たちを追いかけ回していた。
「俺もやろう!」
他の少年たちも、自分たちが乗っていたヨットから柄杓を持ってくると、海面に浮かんでいるクラゲを掬い始めた。
「ほら、クラゲだぞ!」
他の少年たちも、柄杓のクラゲを持って、女の子たちを追いかけ回していた。
「え、私ってもしかしたらマズい遊びを教えてしまったかな」
横にいた香代に、陽子が言った。
「お姉ちゃん、ほら」
男の子が香代のほっぺにクラゲを擦りつけた。
「きゃあああー!」
香代が思わず叫んでしまっていた。
男の子も、女の子もクラゲで遊び始めてしまって、収拾がつかなくなってしまっていた。
「コラッー!」
突然、香織の大声で少年少女の周りに轟いた。
「今はヨットのお片付けの最中でしょう!遊ぶのは、片付けが終わってからにしなさい!」
香織の一喝で、皆はヨットの片付けに戻っていた。
「さすが、先生!」
陽子は、香織に感心していた。
「ね、これどうしよう?」
男の子が柄杓の中のクラゲを陽子に見せた。
「それは、海の中に帰してあげましょう」
陽子は、少年と一緒に柄杓のクラゲを海の中に帰してあげた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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