クルージングヨット教室物語212
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「ねえ、君たち。君たちも、これからヨットを出すのかな」
ヨット教室の先生に、陽子たちは声をかけられた。
「これから出そうかどうしようか考えているところでした」
「もし、出航しないのならば、ヨット教室の指導を手伝ってくれないか」
ヨット教室の先生、片桐一郎は、陽子たちに質問した。
「若い指導者がいないからさ。もし手伝ってもらえるのならば助かるんだけど」
「良いですよ」
香織が片桐一郎に答えた。
ヨット教室の手伝いとは、まず艤装が終わってポンツーンに泊まっているOPに、子供たちを振り分けて、海に出航させてあげるというものだった。
「大丈夫?ティラーをちゃんと持った?メインシートは持っている?」
OPに乗り込んだ生徒たちに声をかけて、準備ができた艇から順番に舫いロープを外してあげて、海に送り出してあげるのだった。
「ほら、そのメインシートが体に絡まっているよ。ちゃんと持たないと手を怪我しちゃうからね」
香織が誤ってメインシートを持っている子を直してあげてから、舫いロープを外して、海に送り出してあげる。
生徒たち全員がOPに乗って、海に出航していった。
「それじゃ、私たちも出ましょうか」
片桐一郎の操船する小型のテンダーボート、モーターボートに乗って海上に出る。
海上で、生徒たちが乗っているヨットを確認して、乗り方の悪い子には、乗り方を注意して教えてあげたり、風に合わせてシートを引きなさいなどと指導するのだ。
「もう少し、ラダーを引っ張って、シートも引いてあげようか」
香織が、生徒たちに教えている。
「やっぱり、学校の先生だけあって教え方が上手いね」
瑠璃子が、香織のことを褒めた。
「え、何。彼女は学校の先生なの?」
片桐一郎が瑠璃子に聞いた。
「横浜市の養護学校の先生なんですよ」
瑠璃子が片桐一郎に自慢した。
「へえ、それでヨットもやっているんだ」
「はい」
「うちのヨット教室でも、毎週先生してほしいな」
片桐一郎は、香織に言った。
「君たちって、どこのヨットに乗っているの?」
「ラッコです」
陽子が答えた。
「ラッコか。それじゃ、隆くんのヨットだ」
「はい、隆さんのことをご存知なんですか?」
「うん。昔は、よくヨット教室のことも手伝ってもらっていたな」
「そうなんですか」
「ジュニアヨット教室を立ち上げる時、彼にも理事の説得とか助けてもらったよ」
「そうだったんですか!」
「大人のためのクルージングヨット教室ってあるだろう」
「ええ」
「大人のためのヨット教室があるのなら、子供のためのヨット教室もあっても良いだろうって、俺が発案したら、彼が真っ先にそれは良いって賛同してくれたんだ」
片桐一郎は、陽子に答えた。
「そうなんです、私たちって、去年の大人の方のクルージングヨット教室の生徒だったんです」
「ほう、なるほど。それで、ラッコに配属されたんだ」
「はい!」
香織も、他の皆と一緒になって頷いていた。
「君たちラッキーだよ。隆くんのところに配属になったのは」
「はい!」
陽子たち皆は一斉に頷いていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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