「これから本船航路を横断するけど、陽子に任せてもいい?」
隆は、アクエリアスが観音崎を越えて、浦賀の辺りに差し掛かったときに聞いた。
「え、代わってくれるの?」
「いや、代わらない」
隆は即座に答えた。
「不安だから代わってくれって意味じゃないんだ」
「いや、ぜんぜん。陽子はもう任せても不安なんかないし」
隆は、陽子に言った。
「むしろ麻美子が不安だからさ、俺は横断するときはラッコの方も気にかけておこうかと」
「あ、そういうことね」
陽子は納得した。
でも、隆の不安は全く的中しなかった。
本船航路の横断中、アクエリアスは何事もなく本船とミートすることも無かった。その先を走っていたラッコは、1回ミートするかなと思った本船はいたのだが、その本船がミートするだいぶ以前に、しっかりラッコが避けていて、全くミートすることなく横断し終わっていた。
「麻美ちゃんもベテランじゃん。ぜんぜんミートしてないよ」
陽子は、本船航路を渡り終えて、隆に言った。
「本当だよな。ぜんぜんミートせずにラッコも横断し終えていたよな」
中村さんは陽子に答えていたが、
「でも、麻美子は何もやっていないじゃん。香代と香織、雪がウォッチして本船避けていただけじゃん」
隆は陽子に答えた。
「それだけ、皆が成長したってことよ」
「そうなのか」
「そうよ!」
陽子は隆に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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