クルージングヨット教室物語140
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「香代、ラット変らなくてもいいのか?」
いつもならば、マリーナを出航したらすぐに、隆からヘルムを交代する香代だったが、今日は交代しようと言ってこないので、隆の方から香代に声をかけた。
いつもならば、元気にラットに飛んでくる香代だったのに、今日は麻美子の横でおとなしくしていた。
「香代ちゃん、おじさんたちは気にしなくてもいいのよ。隆のところに行って、隆からラットを代わってもらいなさいよ」
麻美子が、自分の横に隠れるようにしている香代に声をかけた。
「どうぞ、ラッコのボースン、いつものようにヘルム取ってください」
市毛さんも、香代に言った。
ラッコのメンバーの中で、一番背も低く、体も小さくおとなしい香代が、ここ最近はラッコのクルーの中で一番ヨットの成長が著しく常にラットを握っていることは市毛さんも、マリーナでのラッコを見ていて、すっかりわかっているようだった。
市毛さんは、横浜のマリーナに30フィートのクルーザーレーさタイプのヨットを保管しているオーナーだった。松浦さんは、言わずとしれたレース艇のうららオーナーだ。
阿古さんは、職人気質のアパレル関係のスタイリストさんで、横浜のマリーナにはステラマリスという30フィートのヨットを学生時代の仲間と2人で共同所有しており、保管していた。
「ほら、香代!」
香代は、隆に言われて、ラットのところまで行くと、隆が握っていたラットを交代してもらった。香代は、ラッコのラットも握っているのだがt、ラット以外に、側にいる隆の袖もずっと握ったまま、まるで隆の陰に隠れるようにして、ラッコのヘルムを取っていた。
「それは、恥ずかしいよな。いきなり、おじさんたちがこんなに乗り込んで来たら」
松浦さんは、香代の態度を見ながら呟いた。
「普段は、同年齢の若い女の子同士でしかヨットに乗っていないのだものな」
阿古さんが、香代のことをかばってあげていた。
「こんなおじさんが3人もいたら、びっくりしちゃうよな」
「私、女の子だけじゃなくても、ぜんぜん平気だよ」
瑠璃子が、3人のおじさんたちに言った。
「知ってる!お前はセクハラの会話の中でも全く関係ないものな」
市毛さんが、いつも明るく陽気な性格の瑠璃子に答えた。
「セクハラの会話は、さすがの私でも無理かな」
「そう?先週、プロントの人たちの下ネタの会話に、自分から入っていってなかった」
陽子が、瑠璃子に聞いた。
「ああ、あれはね・・」
瑠璃子が、陽子への返答にちょっと困っていたが、
「あれは、ほら、セクハラじゃなくて下ネタだから」
瑠璃子が陽子に返事を返していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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