クルージングヨット教室物語134
Photo by Yiran Ding on Unsplash
「すごいじゃないですか!でかいヨットですね」
弟は、マリーナでラッコに案内されて、驚いていた。
「うちのヨット、33フィートあるのよ」
麻美子は、自分の弟にラッコのことを自慢していた。
「うちのって、お姉ちゃんのヨットじゃないでしょう、隆さんのヨットでしょう」
「まあ、そうだけどね」
「麻美子のヨットでもあるよ」
隆が補足していた。
「このヨットって土台に乗っかってるし、もう海には出れないんですよね。よくある日本丸みたいに」
「え、海にちゃんと出せるよ」
隆は、弟からの意外な質問に驚いていた。
「あそこに、白い細長い車が置いてあるだろう。あれで、この土台、台車を引っ張って、あのクレーンのところに持って行って、クレーンで海に下ろせば、いつでも出航できるよ」
「そうなんですね」
弟は、隆の説明を聞いて、納得していた。
「え、まさか、あんた、このヨットが桜木町に置いてある日本丸みたいに、ずっと土台に乗っかったまま、マリーナに飾ってあると思っていたの」
「うん、なんかステータスみたいな感じで置いているかのかと」
「そんなわけないじゃないの」
麻美子は、自分の弟に呆れていた。
「それじゃ、海に出せるんだ」
弟は、船台を引っ張る白い車のところに行き、その上に乗ってみながら、ヨットで出航させたそうに姉へ返事した。
「今日は、もう夕方だし出航できないわよ」
「なんだ、つまらない」
「明日、出航してみる?」
隆は、姉と弟の会話を聞きながら、弟に聞いた。
「明日だったら、出航できますか?」
「うん」
「明日も、またマリーナまで来るの?」
隆が答えたので、麻美子は隆に聞き返した。
「ここに、今夜は泊まってしまえば良いじゃん」
「そうか。まだ、電気ストーブ置いたままにしてあるし」
麻美子は、隆に答えた。
隆は、ラッコのコクピットロッカーから陸電のコードを引っ張り出して来ると、マリーナの電源設備に繋いだ。これでラッコのキャビン内で電気が使い放題になった。
「これで、今夜は船の中で眠れるぞ」
隆は、麻美子の弟をラッコのキャビン内に案内した。
「どこに寝るの?」
「ここの部屋がベッドになるから」
麻美子は、弟の前で、ギャレー前のダイニングスペースのテーブルを下ろすと、そこにクッションを敷いてシーツを敷くと、ベッドを作った。
「これで、後ここのカーテンを閉めれば、中でぐっすり眠れるでしょう」
「おお、すごい」
弟は、ベッドに変わったダイニングルームに驚いていた。
「お姉ちゃんは、どこで寝るの?」
「私は、こっち」
アフトキャビンのベッドを弟に見せた。
「ああ、ここで隆さんと一緒に寝るんだ。もうお姉ちゃんと隆さんって夫婦じゃん」
「夫婦じゃないよ」
隆が、慌てて否定していた。
「今日は、いないんだけど、ここにもう1人、本当に香代ちゃんって女の子がいるの。その子と3人で、香代ちゃんが真ん中で川の字になって寝ているのよ」
麻美子が、弟に説明した。
「今夜は何を食べたい?」
「何でもいいけど」
「じゃ、ここにレトルトのカレーがあるから、これでもいい?」
「いいよ」
麻美子は、使い慣れたラッコのギャレーで、お米を炊くと、カレーライスを料理していた。
「なんか、姉ちゃんの台所だな」
弟は、自分の姉が慣れた感じでヨットの中で夕食を作るのを見て、呟いた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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