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クルージングヨット教室物語117

Photo by Boey Jun Hui on Unsplash

「なんか清々しい朝だね」

「そうか、いつものクルージング先の朝だけど」

隆は、漁港の岸壁を陽子とお散歩しながら歩いていた。

「それは隆さんは生徒じゃなかったからよ、今日からクルージングヨット教室は卒業して、生徒ではないんだって思うと寂しいような、清々しい気分」

陽子は、隆に話していた。

「そんなものかな」

2人が歩いていた岸壁の先で、少年たちが釣りをしていた。少年たちの釣竿には、岸壁で釣れていた魚に比べると、比較的大きめの魚が釣れていて、少年たちは大騒ぎしていた。

「釣れないよ」

「重くて、ぜんぜん上がらないよ」

少年たちは話していた。

「網を持ってきてあげようか」

隆が声をかけると、少年たちは手伝ってという表情で、隆の顔を覗き込んでいた。

「網を持ってきてあげるよ」

隆は、ラッコに戻って、1人残された陽子は、少年たちが持ち上げようとしていた釣竿を手伝っていた。

「あ、香代ちゃん。ちょうど良いところに来た。魚釣りの網を船から持って来てよ」

隆に言われて、香代がラッコに走って、戻って行った。ラッコに戻ると、積んであった漁網を持って戻って来た。隆が、走って行くよりも、早くに戻って来た。

「入るかな」

香代は、持って来た網の中に、釣竿にかかっている魚を入れると、隆と一緒に岸壁に引き上げた。

「食べれるかな」

「家に持って帰っても、お母さんがお料理できないよ」

少年たちは、釣り上げた魚のことで揉めていた。

「お兄さんのヨットにおいで」

隆は、少年たちに声をかけた。

「お兄さんのヨットに、魚を捌くのが得意な人がいるから、捌いてもらって、持って帰れば良いよ」

隆は、大きな魚の入ったバケツを持って、少年たちをラッコに案内した。

「すげえ、大きなヨット!」

少年たちは、隆が案内したラッコのヨットに興奮していた。

「どうしたの?」

キャビンから麻美子が出て来た。

「お魚が釣れたけど、うまく捌けないんだって」

隆が説明すると、麻美子は少年から魚を受け取ると、捌いてあげた。

「ほら、こうやって持って帰ったら、お母さんに焼いてもらえるよ」

麻美子は、捌いた魚を新聞紙でくるみ、ビニール袋に入れてあげると、少年たちに手渡した。

「ありがとうございます!」

少年たちは、麻美子お姉さんから魚を受け取ると、嬉しそうに帰って行った。

「かわいいね」

「ね、かわいいわよね。私も、あのぐらいの子供がいてもおかしくない年なんだよな」

麻美子は、帰っていく少年たちの後ろ姿を眺めていた。

「そうだよね」

陽子は、麻美子の言葉に返答しつつ、隆の表情を眺めたが、隆は無頓着だった。

「それじゃ、出航しようか」

隆は、香代に言った。

ポンツーンから一番外側に停泊していたラッコから順番に保田のポンツーンを離れた。

「帰りもよろしく」

横浜のマリーナ、ハーバーマスターの鈴野さんも、帰りもラッコに乗っていく。

「あら、香織ちゃんもこっちに乗って帰るの?」

「うん。中村さんがラッコに乗っていいって言ってくれたの」

香織は、麻美子に答えた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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