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クルージングヨット教室物語33

Photo by 簡 宇廷 on Unsplash

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「なんか、すごい厳かな正門の料理屋さんね」

雪は、隆の運転する車が懐石料理屋の正門をくぐった時に感じていた。

「歴史のある由緒ある老舗の懐石料理屋さんなんだってさ」

「なんで、そんなお店が大島にあるんだろう。東京辺りで営業した方が儲かるだろうに」

隆は、運担しながら麻美子に聞いた。

「それは、きっとお金だけじゃないんでしょうね。都心でやったら、いくら儲かるとかじゃなくて、この地で、この地のもので料理を提供したいみたいなポリシーなんじゃないの」

「さあ、お腹が空いた。お昼ごはん食べに入ろう」

隆は、車を駐車場に停車させると、車を降りて、陽子や瑠璃子と一緒に料理屋の建物の中に入った。

「どうして、こんな高そうな所に、私たちと入ろうと思ったの」

「え、今回、大島に行くって隆から聞いてさ。せっかくだし、母からいつも聞いていたここで食べてみたいなって思っただけなんだけど」

麻美子も、車から降りると、懐石屋の建物の奥に歩きながら、雪に返事した。

「それにさ、ほら、車をたまご型の中古エスティマに買い換えたじゃない。あいつ、買い換える前って無駄に高価なスポーツタイプの輸入車に乗っていたじゃない。それを下取りに出したら、だいぶ予算が余ったのよ、それをクルージングの予算に回そうってことになったのよ」

あいつで、前を歩く隆の方を指差していた。

「そうなんだ。隆さん、やっぱり輸入車の方が良かったとか買い換えないかな」

「大丈夫。次から買い換えとか大きいものの時は経理部長の私にぜんぶ相談するってさ」

麻美子は、香代の手を繋ぎながら雪と話していた。

「建物の中庭も、すごく広い庭よ」

瑠璃子が、建物の奥にある中庭を走り回りながら、後から入ってきた麻美子に叫んだ。

「本当、すごい豪華なお庭ね」

「あれ、隆はどこに行ったの?お店の中に先に入ったのかな」

麻美子が、中庭をキョロキョロと見渡していると、中庭の奥から隆と陽子が戻ってきた。

「あの2人、本当いつも一緒にいるわね」

仲良く談笑しながら、こちらに戻ってくる隆と陽子の姿があった。

「麻美ちゃん、もしかして焼いてる?」

「え、なんで?ぜんぜん焼いていないけど」

麻美子は、雪に返事した。

「むしろ、陽子ちゃん、あんなおじさんの隆といつも仲良くしてくれてありがとうって感じ」

「そうなんだ」

瑠璃子は、麻美子に答えた。

「さあ、お店の中に入ろう!」

麻美子は、料亭の入り口のドアを開けて、店内に入った。

「隆ー!お店の中に入るよ」

「いらしゃいませ」

お店の女将が、店内から麻美子たちのことをお出迎えしてくれていた。

「すごいな、貸し切りですか?」

隆と陽子も、お店の中に入ってきた。麻美子たちは、もう店内の和室のテーブルに座っていた。広い和室の中央に、大きなテーブルが置かれているだけで、テーブルの周りに座布団が敷かれていて、そこへ麻美子たちが座っていた。

麻美子たち以外に、他にお客さんはいなかった。

「うちは、基本的に1日1組限定でお食事をお出ししております」

女将が、後から入ってきた隆と陽子にも説明していた。

「佐藤様のお父様、お母様には、たまに東京からおいで頂き、ご利用頂いておりますよ」

女将は、佐藤麻美子に話していた。

「お料理の方は、お任せで宜しいですか?」

「お願いします」

麻美子が、女将に返事した。

「お宜しいです」

隆も、麻美子の返事に合わせて、女将に変な日本語で返事して、皆に笑われていた。

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