クルージングヨット教室物語18
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「どうせなら、今夜のうちにマリーナに行って、ラッコに泊まらないか」
隆は、麻美子の母親が作ってくれた夕食を食べた後、麻美子家の皆とリビングでゆっくりしているときに、麻美子に話しかけた。
「良いけど」
麻美子は、クローゼットに置いていたエスティマの鍵を取ってきつつ、隆に返事した。
「何も、こんな真っ暗になってから横浜まで車を出さなくても良いんじゃないの」
麻美子の母親は、夜中に横浜まで出かけようとしている2人に声をかけた。隆は、普段、会社がある平日は、ここではなく渋谷の自分の家で過ごしていた。麻美子の母にとっては、隆とは、週末の休日しか会えないので、今夜は中目黒の家で過ごしてほしかったようだ。
「これから、夜道を走って横浜まで向かうのも面倒だし、明日の朝でいいか」
「隆が、それで良いなら、私は別にどっちでも良いけどね」
麻美子は、取ってきた鍵を元あった場所に戻しながら、隆に返事した。
「次の海の日の三連休も、あなたたちはヨットでお出かけするの?」
「そのつもりだよ」
麻美子は、自分の父親に返事した。
「まあ、次の三連休はヨットで出かけてもいいけど、その後の週末は、仕事で弟が帰ってくるぞ」
麻美子の父は、姉である麻美子に伝えた。
「そうなんだ。少し前に、LINEで弟と話した時に、私が隆の買ったヨットに毎週末乗っているって話をしたんだ。そしたら、ヨットなんてサンフランシスコじゃ、周りじゅう海に囲まれていて、あっちこっち走っているから全然珍しくないってさ」
「そうなんだ。サンフランシスコなんてヨットマンには羨ましい環境だよな」
隆は、麻美子に答えた。
「隆くんが、うちの会社で貿易商になってくれると言ってもらえるなら、こいつの弟なんて、すぐに下ろして、サンフランシスコ店の支店長に昇格させるけどな」
「お父さん、隆が返事に困るようなこと言わないの」
麻美子の父は、隆のことを自分の貿易会社に誘っていた。
「お母さんも、隆くんが、うちの麻美子と一緒になってくれたら、中目黒の実家にあるもの全部、隆くんに譲ってしまうわ」
麻美子の母は、キッチンにある食器棚の中を眺めながら、隆に話しかけていた。
「ここの棚に入っているものは、ヨーロッパから取り寄せたとっても良い食器なのよ」
「お母さんも、変なこと言い出さないでよ」
麻美子は、自分の両親たちに苦笑していた。
「隆は、明日横浜のマリーナ行くのに早いし、そろそろ寝る?」
「そうだね」
「じゃ、弟の部屋のベッドメイクしてくるね」
「いいよ。そのぐらい自分で出来るから」
と、隆は弟の部屋に1人で行ってしまった。
「弟じゃなく、あんたの部屋で一緒に寝たって良いんだけどね」
「そんなわけにいかないでしょう」
麻美子は、母の言葉に苦笑してしまった。