成果を出すためのピープルマネジメント――「人」を動かすということ
マネジャーという役割は、個人の成果ではなく、組織として成果を出すことを求められる立場です。
どれだけ優秀であっても、ひとりで完結する仕事はほとんどありません。
必ず「人」を介し、「チーム」として結果をつくることが求められます。
よく、マネジメントはカードゲームに例えられます。
手札は最初から配られており、途中で交換することはできない。
どんな手札であっても、勝つことが求められる。
強いカードが揃っていても、使い方を誤れば負ける。
逆に、決して恵まれた手札ではなくても、戦い方次第で勝てる。
これは、組織もまったく同じだと考えています。
人は「正論」では動かない
メンバーは人間です。
感情があり、自尊心があり、プライドがあります。
にもかかわらず、マネジメントの現場では
「正しいことを言えば人は動く」
という前提でコミュニケーションをしてしまうケースが少なくありません。
もちろん、論理や正論は大切です。
しかし、正論だけで人が動くほど、人は単純ではありません。
むしろ、
- 正論で詰められた
- 否定されたと感じた
- プライドを傷つけられた
こうした感情が先に立つと、人は防御に入ります。
表面上は従っているように見えても、内心では距離を取り、主体性を失っていきます。
結果として、
「言われたことしかしない組織」
「自分で考えないチーム」
が出来上がってしまいます。
怒りと恐怖で人を動かすマネジメントの限界
怒りや恐怖心を使えば、人は簡単に動きます。
- 声を荒げる
- 詰める
- 失敗を強く責める
- 評価や処遇をちらつかせる
短期的には、確かに効果があります。
締め切り前、修羅場、炎上案件などでは、即効性があるように見えます。
しかし、これは極めて消耗型のマネジメントです。
このやり方で成果を出し続けるには、
常に怒り続ける必要があり、
常に緊張状態を作り続けなければなりません。
結果、何が起きるか。
- メンバーは疲弊する
- モチベーションが下がる
- 自発性が失われる
- 離職が増える
- チームの空気が重くなる
最終的には、チームの崩壊に直結します。
怒りと恐怖は「即効性のある毒」です。
効きますが、確実に組織を蝕みます。
では、どうすれば人は動くのか
答えは、決して難解ではないと考えています。
しかし、手間がかかる。だからこそ、多くのマネジャーが途中で諦めます。
大きく分けて、ポイントは4つです。
1. まずは「目標の共有」
人は、意味がわからないことには本気になれません。
- なぜこの目標なのか
- 何を目指しているのか
- これが達成されると、何が変わるのか
これを、繰り返し、丁寧に伝える必要があります。
「言ったから伝わっているだろう」は、ほぼ間違いです。
人は、自分の関心事しか聞いていません。
目標は、理解されるまで伝える。
これがマネジャーの仕事です。
2. 価値観の理解なくして、信頼は生まれない
次に重要なのが、お互いの価値観の理解です。
- 何を大事にしているのか
- 何に不安を感じるのか
- 何にやりがいを感じるのか
これを知らずにマネジメントをしようとするのは、
地図を持たずに山に入るようなものです。
人は、「理解されている」と感じたときに、初めて心を開きます。
逆に、「わかってもらえていない」と感じた瞬間に、距離を取ります。
スキルや成果の前に、人としての理解が先です。
3. 少しだけチャレンジングな目標を与える
ここがマネジメントの腕の見せ所です。
- 簡単すぎると、成長しない
- 難しすぎると、折れる
メンバーの力量を見極めながら、
「少しだけ背伸びが必要な目標」を与えます。
この「少しだけ」が、非常に重要です。
人は、
「頑張れば届くかもしれない」
という距離感のときに、最も集中力を発揮します。
4. 達成したら、即座に賞賛する
そして、最も重要なのが賞賛です。
成果を出したら、すぐに認める。
できれば、具体的に。
- 何が良かったのか
- どこが成長したのか
- どんな価値を生んだのか
人は、承認されることで、
「またやろう」
「次も頑張ろう」
と思える生き物です。
ここで一つ、重要なポイントがあります。
賞賛は、上司からだけでなく、他のマネジャーや役員からも得られるように仕向ける。
つまり、
上司が部下の成果を、上に伝える。
これが、マネジャーの役割です。
自分の手柄にするのではなく、
部下を主役として、スポットライトを当てる。
これをやり続けると、
メンバーは驚くほど自発的に動くようになります。
これは実体験です。
マネジメントは「工数がかかる仕事」である
ここまで読んで、
「それは理想論だ」
「そんなに手間をかけていられない」
と思った方もいるかもしれません。
正直に言います。
マネジメントは、工数がかかる仕事です。
- 話を聞く時間
- 目標をすり合わせる時間
- 状態を観察する時間
- フィードバックする時間
これらを省略して、成果だけを求めるのは、構造的に無理があります。
しかし、ここに投資しない組織は、
いずれ必ず、どこかで破綻します。
マネジャーの評価軸は「部下の成長」であるべき
マネジャーは、
自分がどれだけ頑張ったかではなく、
部下がどれだけ成長し、成果を出せるようになったか
で評価されるべき存在です。
マネジャーは、主役ではありません。
主役は、メンバーひとりひとりです。
私のマネジメントスタイルは、
部下のサーバントとして、
環境を整え、障害を取り除き、成長を支えること。
スポットライトは、常にメンバーに当てる。
その積み重ねが、
「強い組織」
「自走するチーム」
をつくります。
最後に
ピープルマネジメントに、魔法のようなテクニックはありません。
あるのは、
- 人を尊重すること
- 人に向き合うこと
- 人に時間を使うこと
ただ、それだけです。
しかし、それを本気でやり続けられるマネジャーは、実は多くありません。
だからこそ、
そこに本気で向き合える人は、
間違いなく、強い組織をつくれます。
成果を出すマネジメントとは、
人をコントロールすることではなく、
人が力を発揮できる状態をつくることです。
その覚悟を持てるかどうか。
それが、マネジャーとしての分かれ道だと、私は思います。