「この人、使えないんですよ。」
組織の中で、この言葉を耳にすることがあります。
仕事が遅い。
報告が苦手。
営業成績が上がらない。
気が利かない。
周りと比べて目立った成果が出ない。
そんな姿を見て、「使えない」という評価が下されることがあります。
でも私は、その言葉を聞くたびに考えます。
本当に、その人が使えないのでしょうか。
評価は、役割によって変わる
例えば、人と話すことが苦手な人が営業を任されたとします。
毎日お客様を訪問し、初対面の人と話し、契約を取る。
本人は一生懸命頑張っています。
それでも結果が出ず、「営業には向いていない」と評価されてしまう。
では、その人が経理や品質管理、データ分析の仕事を任されたらどうでしょう。
細かな数字を正確に扱い、ミスなく仕事を進めることが得意だったとしたら。
今度は「この人がいて助かる」と言われるかもしれません。
同じ人なのに、評価は大きく変わります。
変わったのは能力ではありません。
役割です。
苦手ばかり見ていませんか
組織は、できないことに目が向きやすいものです。
「もっと早くできないの?」
「どうして覚えられないの?」
「もっと積極的に話して。」
もちろん、改善は必要です。
しかし、苦手を克服することだけが成長ではありません。
人には、自然とできることがあります。
周りは苦労しているのに、自分は当たり前にできてしまうこと。
本人にとっては普通なので、強みだと気づいていないこともあります。
私は、その「当たり前」の中に、その人らしさがあると思っています。
能力より、特性を見る
能力やスキルは努力で身につけることができます。
経験を積めば、できる仕事は増えていきます。
それは素晴らしいことです。
でも、努力だけで身につけた能力は、常にエネルギーを使います。
頑張ればできる。
だから任される。
また頑張る。
その繰り返しでは、いつか疲れてしまいます。
一方で、特性は違います。
本人は頑張っているつもりがなくても、自然にできてしまう。
細かな変化によく気づく人。
最後まで話を聞ける人。
全体の流れを見るのが得意な人。
コツコツ積み重ねることが苦にならない人。
そうした特性は、長く安定して発揮できます。
だから私は、人員配置では能力だけでなく、特性を見たいと思っています。
「使えない」のではなく、「合っていない」
これまで現場で多くの人を見てきましたが、「使えない」と感じた人が、別の役割では活躍する場面を何度も見てきました。
接客では緊張していた人が、裏方では誰よりも正確だった。
人前では話せなかった人が、文章では分かりやすく伝えられた。
指示を出す立場では苦労していた人が、サポート役ではチームに欠かせない存在になった。
その人は何も変わっていません。
変わったのは、役割だけです。
だから私は、「使えない」という言葉を簡単には使いたくありません。
その人に合う役割を、まだ見つけられていないだけかもしれないからです。
組織の課題は、人ではなく配置かもしれない
成果が出ないとき、多くの組織は人を変えようとします。
教育を増やす。
研修を受けさせる。
厳しく指導する。
もちろん、それが必要な場面もあります。
でも、その前に考えたいことがあります。
本当に変えるべきなのは、人なのでしょうか。
役割を変える。
担当を変える。
組み合わせを変える。
仕事の流れを変える。
それだけで驚くほど力を発揮する人は少なくありません。
つまり、問題は人ではなく、配置や仕組みにあることも多いのです。
人を活かすのが、組織の役割
私は、「適材適所」とは、優秀な人を重要な仕事に配置することではないと思っています。
一人ひとりの特性を理解し、その人が自然と力を発揮できる場所をつくること。
それが、本当の意味での適材適所です。
だから組織に必要なのは、「使える人」を探すことではありません。
人を活かせる組織をつくることです。
「この人、使えない。」
そう思ったときこそ、一度立ち止まって考えてみてください。
その人が力を発揮できる場所は、本当に今の役割なのでしょうか。
もし違う場所があるのなら。
変えるべきなのは、その人ではなく、組織の設計なのかもしれません。