「管理者なんだから、もっと現場を手伝ってください。」
そんな言葉を耳にしたことはありませんか。
現場が忙しい。
人手が足りない。
トラブルが起きた。
そんな時、真っ先に現場へ飛び込んでいく管理者は、一見すると頼もしく見えます。
しかし私は、管理者は「一番動く人」になってはいけないと考えています。
もちろん、緊急時には現場へ入ることもあるでしょう。
私自身も必要に応じて現場へ入ってきました。
問題なのは、それが日常になってしまうことです。
管理者が毎日現場を走り回っている組織は、本当に健全なのでしょうか。
管理者が動くほど、組織は育たない
管理者が動けば、その場の問題は解決します。
担当者が困っていれば代わりに対応する。
問い合わせが来れば自分で返事をする。
判断に迷えば自分が決める。
その瞬間は確かに助かります。
しかし、その仕事は次回もまた管理者へ集まります。
担当者は、
「困ったら管理者がやってくれる。」
という成功体験を積み重ねます。
管理者も、
「自分がやった方が早い。」
という成功体験を積み重ねます。
この積み重ねが、少しずつ属人化を生み出していきます。
イベント現場でも同じことが起こる
イベント運営でも同じです。
ゲストのアテンドはもちろん大切な仕事です。
来場されたゲストをお迎えし、控室へご案内し、安心して登壇できるようサポートする。
イベントの印象を左右する重要な役割です。
だからこそ、経験のある統括が担当したくなる気持ちもよく分かります。
しかし、統括とアテンドを兼任してしまうと、現場全体が混乱し始めます。
統括がゲスト対応をしている間も、
スタッフからは判断を求められます。
予定変更が発生するかもしれません。
機材トラブルが起きるかもしれません。
そのとき、統括と連絡が取れなければ、現場は判断を待つしかありません。
では、
「アテンドではなく受付ならどうでしょうか。」
受付も重要な役割です。
参加者の受付を行い、お金を預かり、領収書を渡し、名札を管理する。
しかし受付に入ってしまうと、今度は別の問題が起こります。
場内スタッフから呼ばれても、その場を離れることができません。
お金を扱っているため、受付を空けられないからです。
場外でトラブルが起きても。
登壇者の到着が遅れても。
スタッフから判断を求められても。
受付を離れられない。
つまり、担当する現場が変わるだけで、「全体を見る」という役割は果たせなくなってしまいます。
だから統括は、どこの持ち場にも固定されないことが大切です。
必要な場所へ行き、
必要な判断をし、
必要な人を動かす。
統括の仕事は、一つの持ち場を担当することではありません。
イベント全体が滞りなく進むように、全体を見渡し続けることです。
管理者の仕事は、問題を解決することではない
管理者の本当の仕事は、目の前の問題を一つずつ片付けることではありません。
同じ問題が起きない仕組みをつくることです。
問い合わせが多いなら、案内を見直す。
判断に迷うなら、判断基準を決める。
引き継ぎができないなら、マニュアルを整備する。
担当者が育たないなら、教え方を見直す。
現場で起きた出来事を、「仕組みの改善」に変えること。
それが管理者の役割です。
「自分がやった方が早い」は危険なサイン
管理者からよく聞く言葉があります。
「自分がやった方が早い。」
確かに、その通りです。
経験も知識もある管理者の方が早く、正確にできる仕事はたくさんあります。
でも、その考え方を続けている限り、担当者は育ちません。
管理者だけが忙しくなります。
そして管理者が休んだ瞬間に、組織は止まります。
速く終わらせることと、組織を育てることは同じではありません。
管理者は「今日の効率」だけでなく、「半年後、一年後の組織」を見て判断する必要があります。
管理者は、現場より一歩先を見る人
担当者は、自分の仕事を見る人です。
管理者は、チーム全体を見る人です。
だから見るべきものも変わります。
誰の仕事が止まっているのか。
どこに負荷が集中しているのか。
誰しか知らない仕事はないか。
判断者が不在になっていないか。
情報共有はできているか。
管理者が見ているのは、「仕事」ではなく「仕事の流れ」です。
現場が前を見るなら、管理者は少し先を見る。
その視点の違いが、組織を支えています。
管理者が本当に動くべき場所
私は、管理者は動かなくていいと言いたいわけではありません。
動く場所が違うのです。
現場で担当者の代わりに動くのではなく、
役割を決める。
優先順位を決める。
判断基準を決める。
情報が流れる仕組みを整える。
担当者が安心して動ける環境をつくる。
そこに時間を使うべきだと考えています。
管理者の仕事は、自分がいなくても回る組織をつくること
管理者が頑張れば、現場は回るかもしれません。
しかし、それは管理者が頑張っているだけです。
組織が回っているとは言えません。
管理者が休んでも。
異動しても。
退職しても。
担当者が変わっても。
変わらず仕事が流れていく。
そんな状態をつくることが、本当の管理ではないでしょうか。
管理者の役割は、自分が一番働くことではありません。
自分がいなくても仕事が止まらない仕組みをつくること。
私は、それが管理者に求められる最も大切な役割だと考えています。