この連載では、私が歩んできたキャリア――労働基準監督官という仕事を、民間の職種に置き換えて紹介していきます。
〇なんでそんなことをするのか?
「労基って何してるの?」と聞かれるたびに「いわゆる労基だよ」で終わる、この伝統芸能のようなやりとりに終止符を打ちたいからです。
全国に3,000人しかいない職種、エンカウント率低めで、労働者の味方や摘発官というイメージ。
けれど実際の現場は、人と企業に深く入り込み、伴走するものでした。
〇営業職と同じ「信頼ゼロからのスタート」
労働基準監督官の調査はアポなし訪問。
最初は門前払い、信頼ゼロどころかマイナスからのスタートです。
そこから関係を築き、改善提案を受け入れてもらう。
売るのは商品ではなく「労務環境の改善」。
相手を動かせるかどうかは、人としての信頼にかかっています。
これは飛び込み営業と驚くほど似ています。
〇強み×弱み×未来
◎強み:制度を背景にした「提案力」
営業がプロダクトを売るのに対し、監督官は法令を背景に「改善提案」を売り込みます。
一方的に命じるのではなく、納得して動いてもらうために、相手の現場に沿った提案を出す。
これは営業力そのものです。
×弱み:数字で成果を示す文化が薄い
ただし営業と違うのは、成果を数字で可視化する文化が弱いこと。
監督官のゴールは「改善の定着」ですが、それは契約件数や売上のようにシンプルに数値化できません。
この点は、スタートアップで求められる“数字に強い営業力”と比べると弱点かもしれません。
★未来への補強
だからこそ今後は、
・改善活動のROIを示す
・定着率やリスク低減を定量化する
・KPIを設計し、成果を「数字で語れる」ようにする
このトレーニングを積めば、監督官出身者は営業以上に説得力のある「改善ストーリー」を描けるはずです。
〇学び
制度より人。
人を動かすのは法律ではなく、人間力。
そして未来のキャリアでは「人間力×数字」が揃ったとき、より大きな価値を生み出せる。