東京エレクトロン九州株式会社 / ソフトウェアエンジニア チームリーダー・PL
クロスファンクション表彰
私はシリコンウェーハを貼り合わせする半導体製造装置の開発に従事してきました。その中でも製造プロセスの生産性を2倍にするプロジェクトに最も情熱を注ぎました。 2018年に3D NANDフラッシュメモリを製造される顧客から製造プロセスの生産性を1.5倍にしてほしいといったご要求をうけました。3D NANDフラッシュメモリの市場規模は今後さらに拡大する見込みでした。ご要求をいただいた顧客は3D NANDの最先端技術を保有する顧客でしたので弊社としても事業拡大のチャンスと捉え、すぐに開発プロジェクトを立ち上げる事となりました。 半導体製造におけるプロセス性能と生産性はトレードオフの関係にあります。 プロジェクトの難しさはプロセス性能をそのままに生産性をドラスティックに改善する必要があることでした。私はソフトウェア部門のリーダーとしてアサインされ、主な責務は必要技術の調達および開発と実現プランを作成することでした。 プロジェクト発足当初は目標達成の実現性を計るにはあまりに判断材料が少ない状況でした。まず私は知見者から協力を得て生産性に関与する製造工程の現状を徹底的に分析しました。そうすることで工程ごとに必要な時間とプロセス性能に与える影響の大小を判定することができました。ただし、工程ごとに既存技術を適用し生産性を向上するプランを作成しても目標達成の見込みは立ちませんでした。既存の工程を無くし代案となる工程を開発するといったドラスティックに変えるプラン作成が必要と考えました。アイデアは浮かぶもののあまりに不確定要素が多く、途中で頓挫する可能性が大きいと考えました。そこで私は生産性を1.5倍にする開発計画を作成するのではなく、2倍にする計画を作成しようとチームメンバーに提案しました。2倍にするという計画であればプランの一部が失敗したとしても最終的に1.5倍になる可能性は高いだろうと考えたためです。ただ、生産性を2倍にする計画を短期間で作成するためには追加で数々の評価を行う必要があり協力者の確保が課題でした。プロジェクト外のメンバーの協力が必要となるケースもしばしばあり、その場合はメンバーの上司にプロジェクトの重要性を説明して協力を得られるようお願いしました。当時、関係者の中では実現不可能と言われたプロジェクトでしたが計画をまとめ経営層へプレゼンし承認が得られリソースを確保することができました。 フェーズが計画から実行に移ってからは作業が計画通りにいかないことがしばしばで計画修正と新たな開発アイデア創出を並行して行いました。困難だったことはプロジェクトメンバーのモチベーション維持でした。作業を実行すればするほどに課題が浮き彫りになりメンバーの疲弊状態が続いていた印象がありました。会議においても責任転嫁が生じる事も数回ありました。そんな際に私はメンバーをランチに誘ってコミュニケーションをとるようにしていました。オフレコ前提の閉ざされた空間で会話するとメンバーは悩んでいること、考えていることを素直に話してくれた気がします。基本的に悪い人はいないので真剣に話を聞いて理解しあうとそこからまた協力関係が再燃してくれていい方向に進んでくれたと感じました。 プロジェクトの成果として製造プロセスの生産性は2倍を超える形で要求元である顧客へリリースされました。顧客から感謝され、信頼関係を築くことができたと感じています。 またプロジェクトのメンバー数も当初は4名でしたが最終的には20名近くまで拡大しました。チームの成果が経営層に認められ昨年度のクロスファンクションチームとして表彰されました。 私は当プロジェクトを通じて2つのことを学びました。1つ目は達成困難な課題をチーム一丸となって達成することで困難さのレベルに応じてチームが強くなるということです。2つ目はチームのモチベーション維持にはこまめなコミュニケーションが必要不可欠であるということです。そして、リーダーとはビジョンを語り、メンバーとコミュニケーションをとり、チームの成果を最大化できる人であることを理解しました。