国際基督教大学 / 教養学部・アーツサイエンス学科
Maurice and Arvilla 'Billie' Troyer Prize in Education (Troyer Prize in Education)受賞
内閣府男女共同参画局(2019)の調査によると女性研究者は研究職員総数の割合の16.2%にとどまっており、理系分野での女性活躍は進んでいない。論文では、このような文系/理系分野でのジェンダーギャップの根源となる文理選択の制度をかまえとアスピレーションの関連から分析した。 ジェンダー・トラックに加えて、性別/コースごとに異なるかまえ/アスピレーションを持つ「ジェンダー・文理・トラック」が観察された。異なるトラックが形成される理由として、幼少期の理系的経験、保護者の専攻/理数系科目における女性教師の存在が鍵となる。しかし、データからは自分とは異なるコースに対してより肯定的なかまえを持っていることも明らかになっている。ここから文理選択時にはかまえやアスピレーションの質は直接的には影響せず、むしろ選択時の周囲からの影響と本人の進路希望の強弱が、文理選択に大きな影響を及ぼすことも分かった。特に文系には「逃げとしての文系」という考えがあるため本人の強い意志が重要となる。 <結論> 「ジェンダー・文理・トラック」形成の因果関係が不明なことと、かまえとアスピレーション以外の要素を調査に考慮できていないことが本論文の限界である。しかし、文理選択のジェンダーギャップは人権に関わる問題であるため、今一度文理選択の制度の必要性を見直すことが重要であると考える。