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プロ事業者サービスを可視化 日本を愛する米国人が立ち上げたZehitomo

このコンテンツはDGDV様の運営するメディア【DG Lab Haus】にて初出、Wantedlyに転記したものです。

「ちょっとキッチンをリフォームしたいかな」と考え、その工事をしてくれる人を探すとなると、どうするだろう?技術が信頼でき、自分の思いをかなえてくれ、そして適正な料金を提示してくれる事業者を知っていれば、そこに頼めばよいのだが、多くの人にはそんな知人はいない。ネット検索や広告で探した大手リフォーム業者に依頼することになるだろう。すると、実際に工事を行うのは、下請けの工務店や職人さんであるにもかかわらず、安くはない金額が窓口となったリフォーム業者によって、手数料として上乗せされてしまう。

事業者側の視線で見てみよう。大手リフォーム業者が手数料を取るなら、それなりの仕事をしてくれればいいのだが、工事中のクレームや仕様変更対応もすべて現場に丸投げで、単に「中抜き」されるだけだと不満が残る。

手数料は徴収しないスキーム「応募課金制」

仕事を頼みたい一般の人と、その道のプロ(専門性を持った事業者)との間の取引を可視化したいと考えるのが、依頼者とプロ事業者をつなぐプラットフォーム、株式会社Zehitomoが提供する「ゼヒトモ」だ。

依頼者が受けたいサービスを選び、いくつかの質問に答えると、ニーズに合ったプロフェッショナルを紹介してくれる。受けられるサービスのカテゴリーは、リフォーム、ヨガレッスン、出張カメラマン、出張料理、雪かき代行、ペットのお世話など500種類以上もある。

他にも、生活者とプロ事業者を結びつけるマッチング・プラットフォームはいくつか存在する。しかし、ゼヒトモが他のプラットフォームと違うのは「応募課金制」を採用しているところだ。同様のサービスを提供するほとんどのプラットフォームは、業務完了後、依頼者が支払った料金から手数料を徴収する。20~30%、なかには40%を徴収するものもあるという。これでは「中抜き」が横行する今までの取引構造とかわらない。

ゼヒトモの場合、まずプロ事業者がゼヒトモに登録し、自分のプロフィールページを作成するが、それ自体は無料だ。その後「Zコイン」を購入する。依頼者からゼヒトモに見積依頼があったとき、事業者はそのコインを利用して手を上げ、見積りを提出する。つまり依頼者に見積もりを提案するときにだけ、事業者側がお金を負担する仕組み(応募課金制)だ。そして、依頼者が納得し、業務が成立したあとは、どちらからも手数料は取らない。双方が納得できる価格を直接やり取りし、仕事が終われば依頼者が払った金額をそのまま事業者が受け取ることになるので、お互いにモヤモヤ感は残らない。米国ではこうした取引の方法は一般的とのことた。


出張シェフの様子(提供Zehitomo)

ビジネスモデルはリードジェネレーション

このビジネスをスタートしたのは日本を愛する米国人、ジョーダン・フィッシャー氏(株式会社Zehitomo共同代表者)だ。

「Zehitomoのビジネスモデルはリードジェネレーション(見込み顧客の獲得活動)です」(フィッシャー氏)

つまり、“見込み顧客獲得のための媒体”がゼヒトモだということだ。フィッシャー氏は、プロ事業者側の目線を大事にしている。もちろん「依頼者(消費者)」の目線も大事だと考えているが、不透明な商慣行を可視化して、プロ事業者に適正な収入を得て欲しいと考えていると話す。

「日本には、確かな技術を持ったブロ事業者の方がたくさんいますが、中間業者が儲かるようになっているのではないでしょうか。技術を持って、サービスを提供する方が儲かる公平な市場に変革していきたいと思うのです」(フィッシャー氏)

ゼヒトモにはさまざまなプロが登録しており、その一例として「ボイストレーニング」というジャンルがある。「歌のレッスン」という音楽系の習い事のイメージだったが、「カラオケでうまく歌いたい!」ということで、カジュアルにボイストレーニングを受ける人が急増し、人気のジャンルとなっているそうだ。また、「ペットのしつけ」と「ペットのお世話代行」も人気を集めているとのことだ。こうしたものは、誰かにお願いしたくとも、その方法がわからない人も多いようで、マッチング成立後、喜ぶ声が多いという。

解決したい課題は、「出会い」の部分にある

フィッシャー氏は大学を卒業した2008年に来日し、金融エンジニアの職に就いた。もともとAIに興味があり、AIの仕事ができるのは当時ゲーム会社だったので、ゲーム市場が大きい日本で働きたいと日本語を学んだ。しかし、来日した頃にはゲームよりも、世の中の課題を解決したいという気持ちに変わっていたという。

そんなフィッシャー氏がゼヒトモの原型になるサービスを始めるのは2015年頃だ。共同創業者と身銭を切って副業として始めた。本格始動は2016年で、2017年には資金調達もおこなった。そこから5年経つが、現在のビジネスモデルとコアな部分は変わらないということだ。

「事前に買ったコインを利用する応募課金制のリードジェネレーションというビジネスモデルが、グローバルで一番証明されているモデルだと思います」(フィッシャー氏)

しかし、日本では「間に入って手数料を取る」という商習慣が普通とされているので、当初はそれも検討してみたという。しかし「解決したい課題は、出会いの部分」であり、出会いをマネタイズするのが一番自然だと思い、方針を変えることはなかった。

「重たいオペレーションを作って、間に入って手数料を取るよりは、価値を提供してマネタイズした方が自然だし、その方がいい体験にもつなげられると気づいたのです」(フィッシャー氏)


非効率なことが嫌いと笑うフィッシャー氏

非効率を解決しプロ事業者により多くの収入を

そういったことを再確認したのは、フィッシャー氏に娘が生まれた時だったという。

「やっぱり僕はエンジニアなので非効率なものが大嫌いなんですよ。家を引っ越すとか、子供部屋でいろんな工事をしようとすると、何をやろうとしても、(料金や手続きに)かなり面倒くさい課題があるんですよね」(フィッシャー氏)

これからも住み続けたい日本に存在する、不透明な市場を変革していきたいという思いにつながっている。また、フィッシャー氏が米国で聞いた話では、米国の水道サービス事業者の中には、年収4000万円を超える人もいるのだという。

フィッシャー氏は、日本の鉄道運行の正確さ、食事の美味しさ、そしてサービスの質の高さについては「変えて欲しくない」と笑う。ゼヒトモによって、日本のサービス業の生産性を上げていけば、プロ事業者の収入も上がり、日本の経済全体にも大きく貢献できるんじゃないかと考えていると続けた。

この5月には、新たに資金調達が完了したことを公表している。今後はテック・カンパニーとしてのZehitomoをきちんと作り上げるために、エンジニアの採用なども進めていくという。

最後に、こうして取引を可視化することに、反発する動きはないのかと聞くと、むしろプロ事業者側では取引の可視化を望む声が増えているという。

「プロの皆さんとしても、“この市場が変わっていかないといけない”という共通認識が強くなっているようです。うちがいいきっかけになればと思っています」(フィッシャー氏)

※株式会社Zehitomoは、DG Lab Fundの出資先の一社となります。DG Lab Fundは、株式会社大和証券グループ本社と株式会社デジタルガレージのジョイントベンチャーである、DG Daiwa Venturesが運用しております。

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