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亡くなる前日まで、隣で歌い続ける。

私たちは何のために仕事をしているのか。
それを改めて時間して、ある患者様との関わりを紹介させていただきます。

指揮者として、演奏家として、ずっと音楽の世界で生きてきたAさん。
〇才にして、〇〇と言う病気になり、もう今はベッドから起き上がることもできません。

しかし身体が動かなくなってからも、
Aさんはまたみんなでコンサートがしたいという思いを持ち続けていました。

ある日、Aさんから
「みんなでコンサートがしたい。わたしの指揮でうたってほしい。」
という想いを聞いた私たちは、
「一緒に歌いましょう。指揮をしてよ」とAさんにお願いし、一緒に歌を歌いました。




いつもは病によって乏しい表情が、その時はキラキラの笑顔に変わり、
「楽しいね」と言って指揮をしながら、Aさんも大きな声で歌ってくれました。
その笑顔が嬉しくて、ご自宅のピアノも弾かせていただいたり、
いつの間にか、診療の後は必ずみんなで歌うようになっていました。

Aさんの病気は進行しました。
11月の定期訪問では、意識朦朧としており、もう呼びかけに対しても、反応はありません。

それでも、私たちは変わらず歌いました。
Aさんの昔のコンサート映像を流し、その音楽に合わせて歌いました。

翌日ご家族のいないAさんは旅立たれました。
まるで寝ているかのような、穏やかな表情でした。


”医療者が歌う” ”診療時間に歌う”この行動だけを見たら、
「そんなのは医療者の役割ではない。」「偽善だ、自己満足だ」と思われるかもしれません。

しかし、私たちはそうは思いません。

病気になっても、歳を取っても、
「自宅で自分らしく生きる」を支えることこそが、私たちが在宅医療を行う目的だからです。

診療はそのための手段の一つです。
Aさんと一緒に歌い、共に楽しい時間を過ごすこともそのための手段の一つです。

”最期の最期まで自分らしく″
それを実現するために、私たちは仕事をしている。

そのことを、改めてAさんに教えていただきました。

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