賀川記～LGBT人事・賀川のあゆみを紹介します③　人生の第三章～

こんにちは！
LGBTのトランスジェンダーで現在人事を担当する賀川さんへのインタビュー内容をお伝えしています。
前回は、人生の第二章、就活を前に手術を決意した賀川さんが一念発起して海外に飛び出したお話をお届けしました。

今回は賀川さんの人生の第三章についてご紹介します。
★前回のお話はこちらからご覧ください。

―――お金も貯まり、いよいよというところですが、手術は日本でしたのですか？

賀川：いえ、タイに渡って行いました。それを決めてからは、タイ語が少しでも理解できるように日本のタイ料理屋で働いたりもしましたね。

―――賀川さんは目標に向かって頑張るポテンシャルがすごいですね！タイ語はマスターできましたか？

賀川：日本のお店ということもあって、タイ語に触れる機会が少なくてマスターまでは全然！（笑）でも仲良くなったバイト仲間のタイ人の方に全面協力してもらって、手術の申し込みの電話をなんとか終えました。おかげで無事にタイに渡り、手術することができましたね。日本に帰ってきて性別変更の手続きを行い、戸籍上も正式に男性になりました。

―――何事もなく終えることができて本当に良かったです。男性の賀川さんとして、ここから就活のスタートに立ったわけですね。就活の中でトランスジェンダーであることは最初から話していたんでしょうか？

賀川：性別の話は、話したところと話していないところがありました。
最初の頃は自分から積極的に開示していたわけではないのですが、面接で大学時代の話をしていた際に、卒業してすぐに就職しなかったことなどいろいろな話に辻褄が合わなくなってきて。それで話した感じでした。
とある会社の面接官の方は「そうなんですね」といったくらいで、良くも悪くも反応なかった印象ですね。

―――実際に面接を受ける中で、賀川さんが感じた大変さなどはありますか？

賀川：「いつどのタイミングで話を出そう…」というストレスは少なからずありましたね。
そういう意味では、一般的によく聞かれる自己PRなどにプラスアルファで考えないといけないことがあるので、大変は大変でした。

また、面接でよくある「学生時代に頑張ってきたことは？」という質問は個人的にちょっと困りました。
自分の中では性別を変えること自体が人生の大きな目標だったので、当時はずっとそこをどう解決しようという部分しか考えていなかったんですよね。そのうえ、そもそも性別を変更したこと自体面接で話して良いものかと悩んでいたので、”頑張ってきたこと”という聞き方をされるとちょっとうまく話せなくて。

―――きっと今も同じように悩んでいる方ってたくさんいらっしゃると思うのですが、賀川さん的には、面接官にも正直に話した方が良いと思いますか？

賀川：はい。今思い返すと、自分は就活中もいろいろとらわれすぎていたなと思います。
これまでの話が弊害になることはなかったですし、なんなら言ってしまった方が考え方にも話にも辻褄が合います。
言うべきか迷っている人って、言いづらい理由と、相手が受け入れてくれる人なのかわからない不安とがあると思っていて。あとは言わないで済むならそれで良いと思っている場合もあるかな。でも実際、その会社に入社することになれば、いつ知られるかってもう時間の問題だと思うんですよ。まぁ、選考フロー中は基本面接官にしか会えないので、会社全体からどんな反応をされるかは正直入社してみないとわからないですけどね。でも、面接官の雰囲気でなんとなく会社の雰囲気がわかる時ってあるじゃないですか。だから、先に喋って反応を見てしまった方が後々楽っていうのが持論です。

―――なるほど。いずれわかるのだから、先に「こんな人なんだな」ってわかってもらっていた方が良いかもしれませんね。他に就活に対して感じたことなどありますか？

賀川：LGBTだからっていうくくりにはなりませんが、大学を卒業してから手術までの空白の期間があったので、書類選考で新卒の人たちと同じ土台に乗れなかったっていう意味でのやりづらさはありました。同学年のみんなと時期がずれたことで、選択肢が狭くなってしまったような感覚があったというか。

―――業界や職種は指定して探していたんですか？

賀川：人材派遣会社やシステム系など、興味がある業界をいろいろと受けていましたね。職種は最初から人事を視野に入れて見ていました。

―――それはなぜ？

賀川：バイトでリーダーポジションになった際、アルバイトという立場上、店舗のルールを変えられない壁にぶち当たった時があって。すごくもどかしかったんです。それをきっかけに、ルールを変えて人を動かす側の仕事に興味を持って…。
未経験でも人事をやらせてくれる会社を探していたところ、リングローに出会った流れですね。