元ミュージシャンの北原豪とファッション雑誌の編集やAmazonのWEBプロデュースをキャリアとする浅野雄介が立ち上げたweroll、その展開する事業は多岐にわたる。各々の事業内容のコアにあるものを、その成り立ちから辿り着きたいその先まで、2人の対話形式で紹介していくクロストーク。
第2部は「遊ぶように働く」人たちのためのマッチングサービス、Poolsideについて。仕事とプライベートを楽しむ人々へ、より高い価値を提供できるライフスタイルとなるべき人材サービスを始めたきっかけとは。
03.Poolside
Enjoy Your Private Life. 仕事のマッチングや遊びを中心とした新しいライフスタイルを提案する、遊ぶように働く人のためのサービス。
ライフスタイルとしてのフリーランス、その象徴となるサービス。
浅野 なんでwerollがフリーランス系のサービスを作ることになったんだっていう感じかもしれませんが。そもそものきっかけは、いつもの感じでビジネス談義というか雑談をしている中で、クリエイティブドリブンでやろう、そっち軸でサービスをとにかく立ち上げようっていう話になって。
北原 とにかくうち上げようっていう話にね。
浅野 っていうのがありつつ、もう1つ別でサービスを企画していて。それで、「簡易的に人材のサービス立ち上げてよ」っていうのが依頼としてきていたんですよね。それで人材系のサービスを色々調査してたら、もう、あれあれ?っていう感じだったんですよ。日本にある人材系のサービスのほとんどが、フリーランスの不安や恐怖を煽る集客ばっかりで。「あなたの仕事が明日なくなるかもしれない」「案件安定してますか?」みたいな感じなの。もしくはすごく金額の高い「ハイクラスです、高い案件あります」っていうどっちか。もう、打ち出しが全部「恐怖を煽るか」「お金で煽るか」。
北原 「欲望煽るか」ね。
浅野 そう、これはなんか、すごい不健全な世界だなと思っていて。
北原 人をざわつかせる、ざわばっかり。
浅野 いや、本当そうですよね。で、企業側に向けて開かれてるのもそんな感じで、もうこれ全部煽る系じゃんみたいな。みんな散々、すごく煽ってきて「よく耐えられるね」って思うような状況がまずベースにあって。せっかくフリーランスになったのに、煽られてばっかりで不安と恐怖と欲望で縛られていて全然フリーじゃない。なんか、そんな人生どうなの? みたいな話から、結局やっぱり僕らがやるからにはライフスタイルですよね、と。フリーランス人材サービスの世界でも、と言うことです。それらの象徴としてのプールサイドなんですけどね。
北原 …ここら辺までのサービスの生まれ方で共通してるなっていうのは、結構、雑談から盛り上がっちゃったやつがそのまんま形になるみたいなのがあるよね。1個テーマとしては、その飲み会で面白かった話は具現化する。
浅野 それはありますよね、さっきの広告のサービスもそうだし、weroll自体がそうなんですけど。…なんか僕らは常日頃、ビジネス談義みたいなのをよくやっていて。その中で、なんかこれこれがいいんじゃないか? って話題に上がったものが5分間話が盛り上がって、ビジネスのクローズとユーザーイメージまでついたやつはやろうっていう決まり事に今していて。で、それで言うと、weroll Adsもそうだし、Poolsideもそうだし。そもそもで、werollもそうって言うことになる、つまりは結構みんな5分ぐらいで話が片ついてるんですよ。
それで、盛り上がった話題としてユーザーイメージまでついて、プールサイドなんかは、もうクリエイティブイメージまで見えてきて。それでビジネス始める前に、「もう先にクリエイティブ依頼しよう」みたいな話からできてきたサービスっていう感じですね。
北原 そうだね、クリエイティブ作っちゃえばいいねって言うので、盛り上がった。
浅野 そうなんですよ。で、それがなぜそれだけ盛り上がったのかっていうと、既存のフリーランス人材サービス使おうとすると、ユーザーが結局あんだけ煽られてて...めちゃめちゃな煽りじゃん!? 誰にとってもけっこう重要なトピックのはずの仕事、人生の選択肢が「高収入」か「仕事がない」の2択ってやばくない? それって宣伝トラックでやってる夜バイトの「高収入!」と、なんら違いないしやっぱりそれは品もない。ちゃんとクリエイティブで見ていいねと思って参画してもらう方が当然いい訳で。そうすると、やっぱりそういうところに、金額が高いからやるとかいう話じゃない、ちゃんとした仕事を求めている質の高いユーザーが入ってくるよねっていう仮説がもともとあって。実際、去年すごく獲得できたんですよね。
北原 このままじゃ良い人となんか知り合えないよね、みたいな感じだったんで。そこから始まった話なんだよね。そもそも良い人が欲しいんだから、良い人が見てくれる「良い」サービスじゃないと。
浅野 端的に言うと、一緒に仕事やる前にさ、まず金の話からしてくる人って絶対に嫌じゃん。そこから始まっちゃうと、もうお互いに金の話からしか入っていけない。そうすると、その人がどういう人なのか何をやりたいのかよりも、こんなに欲しがってんだっていうことしかわからなくなりますよ(笑)。一緒にやれる人かどうか、ってところの話の前に(金の話が)きちゃダメでしょ。
北原 本来、最初はよくわかんないものだからね。……雇用っていうのとはちょっと違うけど、「なんか新しくてわかんないこと」を始めようとしたら、まずみんなギブし合ってさ、うまくいったら、それはみんなで分け合えばいいと思う。本来はそういうもののはずなんだけど、仕事って呼ばれるものがあまりにも分業というか、仕組みが発達しすぎちゃっていて。その結果そういう「お金」っていう、本来じゃないところからばっかりスタートしちゃっているのが既存のサービスのほとんど。そこから始まっちゃうと、結局なんかサイクル的にもう本来に戻れないってなる。
浅野 まあ、ここも結局weroll oneでのさっきの話と同じところになるけれど。金の話か、金とその工数の話からしか話せないヤツって、完全に仕事の価値やその時間を薄めにかかっているから。価値は薄くてもお得に高い金がほしいという、すごいふざけたこと言ってきてるっていう話になるじゃないですか。
北原 そうだよね。楽でお得な時間の切り売りが最高っていう。
チームアップの「寄り合い方」を文化としてつくりたい
浅野 やっぱりちょっとそこ(切り売り)じゃないところが大事で。例えば、僕らも映画の投資とかの話って「新しくてわからないこと」どころじゃなくて、今思えばむちゃくちゃな始まり方だったよね。ちなみに言っちゃうと、最初話が来たとき、まだプロットも上がってなかったんですよ(笑)。
そんな、「仕事的に」考えたらすごくむちゃくちゃなタイミングで「濱口竜介が映画作るんですよ」って言われて「投資しますか?」っていう。でも、とにかく「その前に作品を見て」って言われてビデオで作品を見て、あ、確かにすごいなと思った。それで実際に出てきたら、あれよあれよという間に、やっぱりすごいものができて……っていう感じだったんですけど。端的な例としては、例えばそういう感じなのかなとは思っているんです。
そんな段階でお金入れたのだから、すごい話のように感じるかもしんないけど。そうじゃなくて、例えば雑誌作る時とかも、最初お金じゃなくて、やっぱこういう企画やりたいよね?っていうところから入ってく「寄り合い方」みたいなのあるし。そういうチームアップ。なんか、結局はそういう知り合い方っていう方がいいよねっていう。そういえば実際、うちのスタッフでもここ最近だと「(werollへの)コミット量増やすから、そろそろ身を固めたい」とか(笑)、そんな感じで入社とかね。そういう感じで関係が続いていて、お互いにセンスが分かってるから、少額でもお互いに仕事を受け合うっていう形。ここの仕事だったらやってもいいかなとか、彼の仕事だったら面白そうだしいいかな、っていうやり方っていうか。
編集者やってると、よくあるんですよね。フォトグラファーに「金額はそんなに出せないんすけど、この企画よくないスか?」「これ、ちょっとどうしてもあなたに撮ってほしいんですよね」っていう提案をするみたいな場面。そうすると向こうも「これだったらいいですよ、作品集的に出せるし」とか、ちゃんと納得感と落とし所を持って選んでくれる。そういう寄り合い方がなんか、BtoBのフリーランスの仕事環境に文化としてないのが今回見直したら改めて辛くて。その文化をちゃんと作っていきたいっていうのが、究極的にPoolsideの目的。だから、メディアをやりたいんです、機能として。
北原 まあ、きっかけはそういうフリーランス系のね、新しいサービス立ち上げたいって相談に乗っていく中で、既存の形にもう限界しか見えないと。こう感じてる中で、話してた時に出てきたもの。多分そこ(文化としての人材サービス)としての視点の転換があれば、そもそもシステムとかを先に作る必要すらないし、そのコンセプトにもう共感できたりする。これ、コンセプトだけ立ち上げたらもう十分なんじゃないか。むしろ、それが1番なんじゃないの?って言う話になって、そしたらうまくいっちゃった。…っていうか普通に人材系って、広告出すにしてもホントもう単価超高くて。そこにリソース食われるの本末転倒だしね。
浅野 そうですね。
北原 当然、リクルートとかね。ああいう巨大な企業の人たちが大量のお金使ってやってる領域なんだけど。でもこっちでヒョイと出してみたら思いのほか、なんかいい反応をもらえることができて。ニーズはやっぱりあるじゃんって言う結果になった。
浅野 最初にまず、この業界のうち全部で80社ぐらいサービスを全て比較調査しました。で、ジョブ出していったら、やっぱ「不安なくしたい系」と「損したくない系」とかばっかり。そこを煽られてるのばかりなんですよね(笑)。見ての通りで、みんな色々、折られちゃってるっていうか。もうキャッチコピーもすごいことになってるし。煽り方もひどくない?「最短3日で即戦力フリーランス」とかマジであるしね..…。「フリーランスで、年収1000万稼ぐ」「社員並みの保証と年収アップで、リスク0のフリーランス」。これとかもう、ヤバいですよね。
北原 これさすがにヤバいね。
雑談から始まる、本気のビジネスの話
浅野 既存のサービスが、本当こういうのばっかりで、この状況はヤバいねっていうところから僕らができることあるね、と。それで調査結果をマッピングしてやって、実際出てきたのをみて、やっぱもうこれは「プールサイド作るしかないね」って感じになってですね。なんでかって言うと、それぞれのJOB*を「この仕事を楽しみたい」「プライベートを楽しみたい」「損したくない」「不安をなくしたい」で分類するとはっきりわかる。
「仕事を楽しみたい系の人たち」ってその成果は、楽しい仕事が見つかるなんですけど、楽しい仕事ってなんなのかっていうと、この人たちってとにかく仕事が好き。お金じゃない。とはいえ、お金と時間っていうところだと、時間よりお金をとっているのかもなというのはあるんですけれど。仕事でお金をもらって行くポジティブ的な思考の人たち。で、そこからの派生は「損したくない」とか「社会貢献したい」とか「面倒を減らしたい」とか「知識・ノウハウを知りたい」とかで、こういうのがまたJOBとして出てくる。
そしてそれと別軸で、フリーランスになってまでして何したいかっていうなかに、やっぱりプライベート楽しみたいっていう人たちがいて。その人たちにとってはプライベートが楽しめる仕事が見つかるっていうのが、成果なわけですよね。そうすると、プライベートを楽しむJOBを持ってる。消費者としては、お金・時間でいうと、時間を大切にしてる人たちで、派生JOBとしては「趣味が楽しめるか」「家族の時間が楽しめるか」ていうところなのかな、みたいな。これらを、それぞれでネーミングしていったという。
あとは、そうじゃないネガティブ志向だと、まず「損したくない人たち」。損したくない人たちは損しない仕事が見つかるってことが成果なんだけれど、「求めてるのは完全にお金なのに、ネガティブ思考で、かつ、おそらく時間がない」んですよね。損したくないってことは、多分時間的な余裕がなくて、かつ現在の報酬に不満がある人。さらに「不安をなくしたい系の人たち」というのは、時間はあるけど、お金がないっていう。やれる仕事を見つけたいっていう。ここの区分の人たちはフリーランスっていう仕事のスタイルに向いていない。そもそも、この人たちは多分フリーランスになっちゃいけないのに、流されてきちゃった人たちだと思う。そういうわけで、ここの区分帯にいる人たちについては業態に向いてないし、サービスとして対象にするには難しいんじゃないかなって思っている。今の既存サービスではこっちの不安煽ってくばっかりの世界になっちゃう。
北原 うんうん。
浅野 なので、この2つで考えた時に、新規開発する際、どっちをメインのJOBにするかって言った時に、当たり前に「仕事を楽しむ人の仕事が見つかる」っていう方がすごいスムーズなんです。だけど、「この人たちって日本に果たしているのか」っていう(笑)。外資に行ってるんじゃね?っていう。
例えばこれで言うと「仕事を楽しみたい、それで楽しい仕事が見つかる。しかも損したくなくて」っていうところだと、すごいハイレイヤーのところを求めていますよね。それってもう、経営者レイヤーとか、そういうこと。(株式的な)ストックでなんか欲しいとか、そういう感じがします。
で、仕事の面倒減らして損したくないっていう人たちに対しては、ツールを提供しないといけないわけです。面倒が減らせる仕事が効率化できるツールだとか、あとは給与計算とか、あとは報酬計算。精算業務とかそういうのがなくなるツールやサービスっていうことなんだけど、これはこれでなんか別のサービスになっちゃうし。で、知識ノウハウを知りたいとかっていうところ、ここは元々やろうとしてたんだけど、これはこれでやっぱりかなり難しいということで、こっちやめたんすよ。
そうすると、プライベートを楽しむってことしかなくて。「プライベートを楽しむ人のための仕事」のサービスを始めようってのが、もともとの着想です。そんなのが、今回やってきたPoolsideのサービス設計なんですけれど。
北原 まあwerollでのプロジェクトって、このPoolsideみたいな依頼とか、仕事をきっかけにしたり、ただの雑談から発生することもあるし、世の中のトピックとかから発生することもあるけれど。そういうのは、ビジネス談義っていうのも割と普段からしているのがあるんだよね。ちょっと言葉的にはかっこつけすぎてるような気もするけれど......哲学的っていうかね、「これから世の中どうなるかな」とか、けっこうそういう話題を普段から普通に喋っているからね。自分はバンドメンバーとかと喋っている時のようなイメージなんですけど、「音楽をやる意味ってなんだ」みたいな話。まあ、そういう話をいつもするわけですよ(笑)。werollだとなんかそういうノリでね、仕事でのサービスも盛り上がったものから派生していっているよね。
浅野 なんか形而上学的っていうか、概念的って言ったらいいのかわかんないですけど。そういうところで、まずは雑談や世の中の話題から他人事として話を始めて行って、最後これ自分事にできるじゃんってなったやつを、自ら形にするっていう感じですね。僕らでできることで、動けるもの、僕らだからやるべきこと。それこそ、ライフスタイル枠で人材サービスを作る、みたいな。そんなものの中から、更にそれをいいって言う人がいるのであれば、とにかく立ち上げてみようかっていう話ができる。これもwerollの強みかな。
北原 パッと見た時に、ね。ある程度近場にそういうものがあるっていうか、組み立てられるパーツがちゃんと見つかって、道筋がバッと見えたら、やってみる。そういう感じで立ち上がってきたものが多いよね。それを雑談で、常日頃しているっていうのがまずベースにあるからこそなんだけれど(笑)。
(3へ)
Cross talkers;
Asano Yusuke weroll共同代表
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HOUYHNHNMやEYESCREAMなどのライフスタイル雑誌/WEBマガジンの編集者・広告営業から、一転、AmazonのWEBプロデューサーに。その後、独立し、2019年デジタルマーケティング会社weroll Inc.設立。マーケターはDJのようなものだと考えているが、DJ自体はあまり上手くない。PDCAを含め、自転車、レコード、スケートボードなど、回るものが大好物。気持ちは生涯編集者。青山学院大学卒、中央大学法科大学院中退。千葉県出身。
Kitahara Gou weroll共同代表
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大学在学中から音楽活動を始め20代をインディーズのバンドシーンに捧げる。この時に、作品や見え方にこだわり過ぎて周りが見えなくなる間違いや、限りある中でもこだわり抜いて最善を尽くす喜びを学ぶ。そのモノづくりの経験や挫折から、現在は企業やサービスの「伝えたい」ことを「伝わる」に変えることを信条に活動。Webサービス・アプリの構築からグロースまで支援する株式会社Sunborn代表、マーケティングの力で企業をグロースする