こんにちは。千葉支社の松原です。
2025年、私たちは「宿泊事業」をスタートしました。
一つの宿との出会いをきっかけに、千葉県富津市の旅館を引き継ぎ、運営を行っています。
実際に現場に入る中で見えてきたのは、後継者不足や人手不足、バックヤード業務の肥大化といった、地方の宿泊業が抱えるさまざまな課題でした。
地域や施設によって状況はさまざまですが、こうした課題に直面しているケースも見られます。
魅力的な宿であっても、「事業」として成立しなければ、継続は簡単ではありません。
そうした中で私たちは、宿を運営するのではなく、事業として再設計しています。
合宿特化への転換や、自社開発システムとAIを活用した現場改善。
なぜIT企業が宿を運営するのか。
そして、現場では何が起きているのか。
そのリアルをお伝えします。
目次
1. 受け継いだ宿を、次につないでいくために
2. 愛されてきた宿と向き合って、見えてきたこと
3. 現場を支え続けるための仕組みづくり
4. 持続可能な形をつくるために、私たちができること
1. 受け継いだ宿を、次につないでいくために
私たちが事業承継したのは、千葉県富津市にある「パークサイドインなかむら」です。
地域の方々に長く親しまれてきた、歴史ある宿。
海のそばに佇むこの建物は、どこか懐かしく、地域の魅力が詰まった素敵な空間でした。
一方で、後継者不足や人手不足といった課題により、こうした地域の資源が少しずつ失われていく現実にも直面しました。
どれだけ魅力的な場所であっても、「事業」として成立しなければ、続けていくことはできません。
現場に入ったからこそ、その課題を強く実感しました。
これまでの地方創生の多くは、ボランティアや一時的な補助金に支えられてきました。
もちろんそれらは大切な取り組みです。
しかし、それだけでは持続的に地域を支えることは難しいと私たちは感じています。
本当に必要なのは、利益を生み、雇用を生み出し、自走できる「強い事業」です。
だからこそ私たちは、単なる宿としてではなく、地域経済を回すエンジンとして捉え、事業承継を決断しました。
地域の資源を「守る」だけでなく、その価値を最大化し、「攻める事業」へと進化させる。
それが、私たちがこの宿を引き継いだ理由です。
2. 愛されてきた宿と向き合って、見えてきたこと
私たちは、「和室10部屋」という施設の規模に着目し、ターゲットを個人観光客から、法人・団体の合宿ニーズへと大きく転換しました。
実際に運営を始めて見えてきたのが、陸上競技をはじめとした合宿ニーズの存在です。
旅館の周辺には平坦な地形が広がり、近隣には運動施設も点在しています。
そして、団体を受け入れられるキャパシティ。
これらの条件が揃っていることから、この宿は合宿地として非常に相性が良いと分かりました。
こうした事業の方向転換にあわせて、宿の名前も変更しました。
もともと「パークサイドインなかむら」という名前で営業されており、地域に長く愛されてきた宿です。
しかし、この場所のあり方に改めて向き合う中で、その想いに合った名前にしたいと考えるようになりました。
そこで新たに名付けたのが、「やどり 富津」です。
「やどり」という言葉には、「宿る・寄る・ひととき滞在する」といった意味があり、
人が集まり、時間を過ごす場所としてのあり方を表しています。
単なる宿泊施設ではなく、人が集まり、時間を共有し、何かが生まれる「居場所」でありたい。そんな想いを、この名前に込めました。
名前を変えるという意思決定も、この宿と向き合う中で自然と生まれたものでした。
私たちは、これまで大切にされてきた価値の大きさを実感しています。
その価値を受け継ぎながら、新しい形でも活かしていきたいと考えています。
現在では、スポーツ合宿にとどまらず、企業の研修などにもご利用いただいています。
運営開始から10カ月足らずですが、すでに企業で40社、学生団体で18団体にご利用いただけるまでになりました。
この場所に関わる人や時間を大切にしながら、私たちも一つひとつの取り組みを積み重ねていきます。
3. 現場を支え続けるための仕組みづくり
団体合宿を受け入れるようになると、これまでとは比較にならないほどの業務が発生します。
部屋割りの調整、予約管理、食事の手配、変更対応。
一つひとつはシンプルな作業でも、それが重なった瞬間、バックヤード業務は一気に限界に近づきます。
実際に、対応が追いつかず、現場が回らなくなる場面もありました。
これは、地方の宿泊業が構造的に抱える「バックヤード業務の肥大化」という課題です。
どれだけ良いサービスを提供しても、裏側の業務に追われてしまえば、現場は疲弊してしまう。
そこで私たちは、業務の進め方そのものを見直しました。
その上で、IT企業としての強みを活かし、現場の課題を仕組みで解決するという選択を取りました。
その解決の中心にあるのが、自社開発システム「SmartPMS(※)」です。
SmartPMSは、約7年前に自社開発したシステムです。
当時は既存システムからの切り替えハードルもあり、導入は広がりませんでしたが、現在は自社の現場で改めてその価値を見直しながら活用しています。
そして現在は、AIを活用した開発体制により、当時と比べて圧倒的なスピードで改善を進められるようになりました。
これまで数ヶ月かかっていた改修も、現在では最短で翌日に反映されるようになっています。
現場で生まれた課題が、そのまま次の日には改善される。
このスピードで、業務改善を回し続けています。
IT化の目的は、単なる効率化ではありません。
現場の負担を減らし、人が本来向き合うべき「お客様への価値提供」に集中できる環境をつくること。
それこそが、事業を継続させるための土台になると、私たちは考えています。
※SmartPMS:サイトコントローラーとPMS(宿泊管理システム)を統合し、予約から運用までを一気通貫で管理できる自社開発システム。
4. 持続可能な形をつくるために、私たちができること
事業承継は、これまでのやり方をそのまま引き継ぐだけでは、うまくいかない場面も多いと感じています。
私たち自身も現場に入る中で、その難しさに直面してきました。
地域に根ざした価値を大切にしながらも、その価値を「事業として成立させる形」にアップデートしていくこと。
そして、その裏側をITで支え、現場が疲弊しない仕組みをつくること。
この両輪があってはじめて、持続可能な地方創生は実現できると考えています。
千葉県富津市の「やどり 富津」での取り組みは、まだ途上ではありますが、地方で事業を展開したい企業や自治体の皆さまにとって、一つのヒントになれば幸いです。
現在は、この経験をもとに、2件目となる宿泊施設の事業承継も進めています。
複数拠点での運営を通じて、地方の宿泊事業を「持続可能な形」で展開していくモデルを構築しつつあります。
ご関心をお持ちの方には、現場の視察も随時ご案内しています。
また、宿泊事業の立ち上げや事業承継、AIを活用した業務改善・システム開発(SmartPMS)に関するご相談も歓迎しております。
地方には、まだ活かされていない可能性が数多く眠っています。
その価値を見つけ、事業として成立させるためには、現場に即した仕組みづくりが欠かせません。
私たちは、AIと自社開発システムを活用しながら、その実現に向き合い続けています。
地方での事業運営や業務改善に課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。