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『ONSEN RYOKAN 由縁 札幌』ができるまで

ビルが立ち並ぶ札幌に、温泉を楽しめる旅館があるのをご存知でしょうか?札幌市の都心部にて、新しい旅の形を体現する『ONSEN RYOKAN 由縁 札幌』。長い歴史を持つ旅館の良さを活かしつつ、現代の感覚に合わせて旅館をアップデートし、北海道らしさを五感で感じられる施設が出来上がりました。


《旅館の再編集から誕生した"由縁"シリーズ》

都市型の温泉旅館ブランド『由縁』は、"旅館の再編集"をコンセプトに誕生しました。ホテルが主流となり旅館が衰退の一途をたどる中で、旅館の良さが見直されつつあるタイミングを捉えています。



『由縁』は、「事の起こり、由来」という言葉の意味から来ています。旅館の本質や背景を大切にしながら、若い世代や海外の方でも利用しやすいように再編集し現代風にアレンジ。2019年5月の「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」開業をかわきりに、2020年8月に「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」、2020年9月には「由縁別邸 代田」が開業し、現在国内3箇所に展開しています。


《札幌にいながら自然を感じる》  

札幌の「由縁」開業は、当初から検討されていた案件でした。ただ、札幌という土地の運営の難しさから、なかなか企画に踏み出せなかった。それでも、敷地の目の前に素敵な植物園があることで「都心でいながら北海道の自然を感じられるシーンを作れるのでは」と、企画が本格化します。


お客様が客室に入って来るところからイメージし、広縁の窓際に座り、景色を見たときに植物園が見えることで「北海道に来てよかった」と思えるような、旅館らしいストーリーを描きました。



また、そのまま由縁新宿を踏襲するだけでは札幌のニーズに合わないと考え、由縁のパッケージを一度解体。「旅館の再編集」としてコンパクトな部屋をつくった新宿に対し、家族や複数人数に対応できる部屋を用意しました。なにより「旅館らしさ」を表現するため、外観のデザインにもこだわりました。



門をくぐってアプローチを通るという「旅館らしさ」を大事にしつつ、デザインのバランスを考え大きめの門を作成。​​北海道では、雪の落下事故防止の観点から縦に長いビルが一般的です。ただ、旅館の雰囲気になじまないと判断し、ヒーターで雪が溜まらない工夫をしながら、旅館らしい横に長いデザインを取り入れました。


《やわらかな質感の『北国の旅宿』》 

デザインコンセプトは、由縁全体で統一せず、その土地ごとに向き合い、テーマに沿って考えることにしました。「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」のデザインコンセプトは、『北国の旅宿』。色の全体構成では、彩度を落として、落ち着いたしつらえ・やわらかなしつらえを表現しています。



また、この場所ならではの空間にするために、札幌の素材を多く活用しています。中でもこだわったのは、入口のフロントカウンターやレストランカウンターに使った北海道の「ミズナラの木」。北海道らしさを表現するため木を多く使用するだけでなく、壁の仕上げや塗装でもあたたかな雰囲気を表現しています。



他にも、札幌から30分ほどの所で採れる「札幌軟石」を使用。男性風呂は、自然なごつごつした表情やナチュラルな風合いを活かし、女性風呂は、土目加工で仕上げています。温泉は本物を体験してもらうために、登別カルルス温泉の湯を運んでいます。


《おもてなしの心を伝える伝統の"室礼"》  

滞在や体験の中に、北海道らしさ・旅館らしさを表現するためにどうすればいいか。そのために歴史を紐解くことから始め、さりげなく伝わるように館内に工夫を施しています。


館内各所には室礼(しつらい)をちりばめました。そもそも室礼とは、平安時代に室内を飾り整えたことを言い、日本では自宅でお客様を迎えるために”おもてなしの心”でお花をしつらえていた文化があります。ただお花を飾るだけではなく、酉の市で買った熊手を装飾するなど、祭事になぞらえたお花を使用し、季節と地域性に沿った飾りとしています。



また、音楽もオリジナルのものを使用。由縁新宿の音楽コンセプトである「一つの楽器のみで四季を表現」は引き継ぎつつ、四季に応じた「北海道大学植物園」「円山」「札幌市内」の自然や動物、またアイヌ音楽などから着想を得たフレーズを散りばめ、北海道・札幌ならではの音楽表現を目指しました。



レストランの名前は、由縁新宿から「夏下冬上」を継承。食そのものの魅力を大事にする札幌の地で、素材の良さをそのままお届けしようと、囲炉裏で作る原始焼きを提供しています。


《おもてなしをされていると感じるサービスとは》

由縁では、"旅館の再編集"をコンセプトに掲げる上で、おもてなしも重要な要素と考えています。


昔ながらの旅館の過剰なサービスを、インバウンド対応や現代のくらしにも合わせて、柔軟に変化させています。お客様自身が滞在の中で「おもてなしをされている」と感じられるようなサービスを設計しました。



運営コンセプトは、「五感で四季を感じるおもてなし」。五感を刺激するものの一つである「香り」を大切にし、春は桜、夏は蓮、秋は菊、冬は松の香りをしつらえています。歴史あるお香職人に、それぞれ香りに対する解釈を深め、由縁の場所で香らすにはどんな香りがベストかと考えオリジナルで作成してもらいました。「お客様に福が舞い込みますように」との願いが込められています。



一般的なホテルの運営と異なる点は、完全なマニュアル通りの運営ではなく、一人ひとりが由縁ブランドの表現者として考え、自身で作っていける”余白”があること。そのため、“由縁らしさ”を考え作っていくことが仕事であり、働くうえでのミッションであると考えています。


《あとがき》

『ONSEN RYOKAN 由縁 札幌』は、都市部にて北海道ならではの自然を感じさせる別空間でありながら、伝統的な日本文化の良さも同居する稀有な存在となっていました。


「由縁らしさ」とは何か。建物を作って完成ではなく、常に更新されながら、日々を彩る企画が”由縁札幌の今”をつくっていく。サービスやデザイン、食事、音響など多岐にわたるこだわりが凝縮された"北国の旅宿"は、由縁シリーズの象徴的な存在といえるでしょう。


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