※この記事は2024年に書かれたものです。
こんにちは、TRAILHEADSです。
今回は3回にわたってお送りしてきたスイス研修の番外編です。このシリーズの執筆を担当した櫻井、高山、増田3人が、それぞれの目線で選ぶベスト建築・インテリアを紹介していきます。
目次
一度は訪れたい場所「テルメ・ヴァルス」と、 ピーター・ズントー -Masayuki Sakurai
「ヴァルス」を目指し山奥へ
地域と素材が息づく建築
雨の日の静寂とハプニング
建築と共鳴する体験
バイエラー財団での心躍る体験 -Nozomi Takayama
バイエラー財団とは
いざレンゾ・ピアノの作品に会いに
おまけに
スイスで泊まったインテリア・居心地◯な宿2選 -Momoko Masuda
「建築好きならここに泊まるべし」な宿
「今あるものを生かす」丁寧なリノベーションホテル
一度は訪れたい場所「テルメ・ヴァルス」と、
ピーター・ズントー
-Masayuki Sakurai
この旅の中でも特に印象深く忘れがたい体験でもあった内容を、櫻井が紹介していきます。
「ヴァルス」を目指し山奥へ
イタリアの国境に近いアルプスの山々にひっそりと佇むテルメ・ヴァルス。
そこは建築に関心のある人々にとっては、一度は訪れたい憧れの場所です。
設計を手掛けたピーター・ズントーは、素材の選定にこだわり、建物と周囲の自然との調和を生み出すことに定評のある世界的な建築家です。
テルメ・ヴァルスは、ズントーの代表作の一つであり、単なるスパ施設にとどまらず、「感覚を研ぎ澄ます場所」としても広く評価されています。
アルプス山脈に囲まれた小さな村「ヴァルス」に位置しており、バーゼルから車で約3時間、スイスを縦断するように移動しました。
当然他の建築も見学しながら向かったため、移動に半日かかるほど遠い山奥にありました。
スイス横断の長距離移動です
地域と素材が息づく建築
アルプスの山々に囲まれた静かな谷の中、その幾何学的な建築は、自然の中に力強く佇んでいます。
周囲に広がるのは手つかずの自然、小さな集落、そして地元の人々の暮らしが息づく風景。
広大な自然の中、奥に集落が見えます
テルメ・ヴァルスは単なる人工物ではなく、自然に溶け込みながらもその存在感を感じさせていました。
この建物の特徴のひとつは、地元で採掘された石英岩を使用していることです。約60,000枚もの板状の石が積層されており、石積みは周囲の山々や谷の地形と調和し、建物が自然に溶け込む印象を与えます。
その独特の重量感とテクスチャーは、空間全体に圧倒的な静寂と重厚感をもたらし、不思議な安心感を感じさせました。
圧倒的な存在感と重厚感を放つテルメ・ヴァルス
また、この建築は小さな部屋と板状の屋根が一つのモジュールとなり、それらを組み合わせた構成をしています。中に入ると、部屋が柱のように感じられ、屋根の隙間からトップライトが差し込みます。最小限の照明と外の光を取り込むことで、独特の空間が広がり、まるで大地に包まれたかのような感覚を覚えました。
室内は撮影禁止だったため、写真は以下より引用:
https://architectuul.com/architecture/thermal-baths-vals
自然への敬意を表しながらも、現代的な建築要素を持ち、周囲の環境との調和を見事に表現されていたことにとても印象が残っています。
建築がどれほどその場所と深く結びつき、地域の風景の一部となり得るのか、その素晴らしい実例を目の当たりにした体験でした。
雨の日の静寂とハプニング
訪れた日はあいにくの雨。灰色の空からしとしと降る雨は、テルメ・ヴァルスをさらに静寂な空間へと変えていました。
雨に濡れた石英岩の表面は光を反射し、どこか幻想的な美しさを放っていました。
雨の中独特の美しさを放つテルメ・ヴァルス
外で必死にその様子を撮影しようと草をかき分けていると、予期せぬ事態が起こりました。
濡れた地面で足を滑らせ、首から下げていた愛用のLEICAのカメラを落としてしまったではないですか!筆者のフィジカルを持ってしてもこの事態には敵わず…
一瞬心が沈みましたが、幸いにも地面は柔らかい土や草だったため、カメラは無事。その瞬間の焦りと安堵は今でも鮮明に覚えています。
建築と共鳴する体験
テルメ・ヴァルスへの道のりは長く、この移動があったからこそ着いた時の感動がありました。
そして、雨に濡れた石英岩の美しさや建築のディテール、そして予期せぬハプニングも含め、すべてがズントーの建築がもたらす体験そのものです。
建築が人の感覚や記憶に深く響く力を持っていることを改めて実感しました。
バイエラー財団での心躍る体験
-Nozomi Takayama
スイスにいた数日間、毎日のように美術館やギャラリーを見て回りました。その中で高山のベスト美術館をご紹介します。
私たちがスイス・バーゼルを訪れる数日前まで、世界最大級のアートフェアである「Art Basel」が開催されていました。実はスイスは人口あたりの美術館の数が多いことでも知られています。裕福な国=美術などへの投資も盛んということなのでしょうか。
バイエラー財団とは
数ある美術館の中で今回私がもっとも印象に残った場所は、そのArt Baselを最初に開催したという美術商のバイエラー夫妻のコレクションが見られる「バイエラー財団」です。
バイエラー財団はバーゼルの郊外にあり、電車で15分ほどで市内から訪れることができます。
建物はイタリア人建築家のレンゾ・ピアノが設計しており、今回の訪問の目的も彼の建築を体験することでした。
豊富なコレクション数を誇る「バイエラー財団」
いざレンゾ・ピアノの作品に会いに
レンゾ・ピアノは東京銀座のメゾンエルメスの設計でも知られています。関西国際空港のターミナルも彼の作品のうちの一つ。個人的には彼自身のオフィスが大好きで、学生時代に写真で見て衝撃を受けました。ということでバイエラー財団でレンゾ・ピアノが体験できることを楽しみに向かいました。
建物の外観は緑豊か
普段海外で美術館にいくと、建築6展示品4くらいの割合で見るのですが...結果として、今回は展示にほぼ全てを持っていかれました!
まず、中に入ると絵が積まれている...あれ?入れ替え中?と思いきやこれも作品展示のひとつ...
「展示全体が変化する生命体」というコンセプトで、実験的な展示の企画のようです。
コレクションの展示も作品を単体ではなく、複数の作品につながりを感じさせるような展示になっていました。見る側が類似性や違いを考えさせられるような構成です。
隣あった似ている作品でも実は作者違っていたり
大地から空、宇宙まで視点が流れていくような展示があったり
ジャコメッティの彫刻が他の絵を鑑賞しているかのように置かれているのには笑ってしまいました。
展示期間中に展示作品や順序が変化。こちらのフクロウは移動中...
ペアで置かれた彫刻
作者も年代も異なる作品であっても、ペアにされることで何かそこにストーリーを感じてしまいます。
バイエラー財団の中の蓮池
建築自体も、自然光を取り入れた展示室や、睡蓮の絵とひつつづきになる蓮池なども期待通り良かったのですが...
圧倒的な収蔵量だからこそできる面白い企画で、外の庭にもタワーのような作品や温室の中に不気味なクマが寝ていたり...敷地全体を使った展示が面白く、気づいたら建築を見るのも忘れて楽しんでしまいました!
増築部分にも期待が膨らみます
バイエラー財団は増築の計画もあり、そちらは櫻井がご紹介したピーター・ズンドーが担当するそうです。工事中の状況が見れるのも貴重だな、と思いカメラを向けておきました。
おまけに
人格を持っているかのようなチケットセンターの案内表示
チケットセンターの料金案内にユーモアがあり、施設の人格というか姿勢のようなものを感じますね。
最後に手荷物を預けておくロッカーのキーを紛失した私にも優しく鍵を開けてくれて...大好き!!という気持ちを抱えて帰途につきました。
スイスで泊まったインテリア・居心地◯な宿2選
-Momoko Masuda
普段の旅行でも滞在先でのインテリアや居心地を重視して宿を探す増田です。
今回宿泊したうち2つはリノベーションホテルとなっていて、どちらもそれぞれの良さや比較してみてみると面白い点もあったのでご紹介します。
「建築好きならここに泊まるべし」な宿
1つ目の滞在先はバーゼルに位置しています。建築好きなら泊まるべし!と友人におすすめされ、「フォルクスハウス」という宿に宿泊してきました。
ヘルツォーク&ド・ムーロンがリノベーションを手掛けた「フォルクスハウス」
その理由は、バーゼルを拠点に世界的で活躍する建築家ユニットのヘルツォーク&ド・ムーロン(以降H&dM)がリノベーションを手がけているから。
建築自体は14世紀から存在し、1925年に建て替えられ市民館(=フォルクスハウス の意味)としてコンサートホールやレストランなど市民の交流の拠点となっていた場所です。
H&dMによるリノベーションは2021年に行われました。1920年代の雰囲気を取り戻すような作りをコンセプトとして、アールデコ、アール・ヌーヴォーを取り入れつつ、窓や躯体など当時のものをそのまま残すような設計がされています。
お部屋・エントランス・カフェスペースには、市民館で実際に使われていたチェアをリメイクしたものが設置されています。
このチェアは、オリジナルからPC技術で背もたれに1点づつ異なるモデリングしアレンジを加えていると聞いたのですが、実際に見てみると大体3~4パターンぐらいに見受けられました。
リモデリングされたチェアたち
レセプションは近所のギャラリー「Von Bartha」とコラボレーションしており、作品が定期的に入れ替わる仕掛けも面白かったです。
ホテルレセプションは比較的カジュアルに
「今あるものを生かす」丁寧なリノベーションホテル
もう2つ目はValsで宿泊したリノベーションホテル「HOTEL ALPINA」。スイス人のジョン・A・カナミダが2001年に手がけています。
ジョン・A・カナミダがリノベーションを手がけた「HOTEL ALPINA」
とても豪華というわけではないですがが、丁寧なリノベーションがされた、なんだか落ち着く部屋やエントランスになっていました。
家具や内装は地元の大工が手掛けているそう。エレベーターが手動の扉で、この建築がかなり古いものだということがわかります。クラシカルな部分を残しつつ、表層的に上手にリノベーションがされていました。
ボタンやシガーソケットなど古いものをそのまま残しつつ、
カーペットのようなもので壁面を仕上げています。
その他にも、目立つことではないが特徴的だったのがは、部屋の狭さを感じにくいように斜めにされた天井、地元の動物(山羊?)の毛で作られたラグ、Valsで取れる水がフリードリンクということ。
またValsは小さな谷の村で、この村を題材にした小説が枕元に置かれていたのも印象に残っています。
窓からの借景も印象的でした。
HOTEL ALPINAは1つ目のホテルに比べて、居心地の良い落ち着く印象を受けました。その印象は、表層的な見た目のデザインも影響しているかもしれないですが、それ以外の部分も大きいと感じました。
自分たちも東京都の檜原村という小さい村に、HINOKOというキャンプ・宿泊のできる施設を現在計画しています。地元で取れるもの、今ある環境を活かすこと、その場所での体験を加えることを自分たちも考えてHINOKOの施設で計画していています。
この考えに共感できる部分があったのかもしれないと思いました。
いかがでしたか?
4回にわたってスイスでの社内研修の様子をお届けしてきましたが、スイスに行かれたことのある方もない方も、新しい視点や発見を得るきっかけにしていただけたら幸いです。
Writing/ Photo: Masayuki Sakurai, Nozomi Takayama, Momoko Masuda(TRAIL HEADS)
Editing: Yuri Ishiguro(TRAIL HEADS)
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