タウンWiFi by GMO、運営会社立ち上げからGMOインターネットグループジョインまでの道のり<社長インタビュー>
フリーWi-Fi自動接続アプリ「タウンWiFi by GMO」を運営しているGMOタウンWiFi株式会社。2019年11月にGMOインターネットグループにジョインし、一つの節目に立ったこのタイミングで社長の荻田にこれまでの道のりと今後の展望を聞いてみました。
まずは、会社立ち上げの経緯についてお聞かせください。
荻田:2006年に楽天株式会社に入社して、最初は開発チームでエンジニアリングを行っていましたが、次第にプロデューサーとして楽天市場全体の流通を増やす施策を担うようになりました。そんなある日、スマホの通信制限に引っかかってしまって。「なんだこれ!」と個人的にもフラストレーションを感じましたが、通信が制限されるとインターネット接続自体を控えるようになってしまうので、みんな楽天で買い物をしてくれなくなるんですよね。「これはインターネット産業の損失だ」と感じると同時に、それならどこにいてもWi-Fiにつながればいいんじゃないかと、シンプルなアイデアが浮かんだんです。
そこからすぐに会社を立ち上げることになったんでしょうか?
荻田:いえ、最初は社内で事業化できればと考えました。楽天モバイルもあったので、新事業として受け入れられると思ったんですよね。でもなかなかうまくいかなくて、社内で事業化の道がないならいっそ自分でやってしまおう、と起業しました。2015年4月のことです。今振り返ると、よく決断したなと思いますが、そのときは天命だと思ったんです。「この問題は自分が解決しなければ!」という強い気持ちがあったので、やりきってやるというモチベーションは高かったんですが、勢いで起業した部分もあったので、そこからはすごく大変でしたね(笑)
お一人で起業されたんですよね、ご苦労が多かったのではないですか?
荻田:突然収入がゼロになるわけですし、起業や会社運営の知識もないから調べながら進めるしかないので、もちろん最初は大変でした。そういった部分は覚悟していたんですが、思った以上に一人というのがきつかったですね。起きてから寝るまでずっと一人だからモチベーションを維持するのが難しいですし、誰かと話して一緒に考える、というチームのありがたさを痛感しました。
最初はどんなサービスをリリースしたんですか?
荻田:初めは、自分の空いている通信量を販売し、必要な人が購入するというマーケットプレイス型マッチングサービスとしてリリースしたんですが、Wi-Fiは届く距離が限られるため、ユーザーがなかなか集まらなかったんです。そこで、街中で飛び交っているフリーWi-Fiを便利に使えるサービスにしようと2015年12月に舵を切りました。2016年3月には優秀なエンジニアである戸部(現CTO)がジョインし、2人で作ったのが「タウンWiFi」という今のサービスです。起業してから1年、試行錯誤を重ねてようやく形になりました。
サービスをリリースした後の反響はいかがでしたか?
荻田:2016年5月にアプリストアでリリースするとあっという間に広がって、2ヶ月で100万ダウンロードを突破しました。特別な宣伝もせず、プレスリリースすら行っていない状態だったので、それだけニーズがあったのだと思います。
「タウンWiFi」のサービス内容を改めて教えてください。
荻田:「タウンWiFi」は、フリーWi-Fiを使うときの登録・ログイン作業を自動化するアプリです。フリーWi-Fiを使うときは、提供元のサービスごとに初回登録やログインが必要になります。例えば電車では鉄道会社ごとに提供元が異なりますし、店舗でもそれぞれ異なります。1つ1つ設定する作業はとても面倒ですよね。その煩わしさを解消できるサービスが「タウンWiFi」で、登録やログインをアプリが自動で代行するものです。
ユーザーとしては、コンビニに近づいたらコンビニのWi-Fiが使え、飲食店に入ったらお店のWi-Fiに自動でつながるんですね。Wi-Fi提供者側は何をするんでしょうか?
荻田:Wi-Fi提供者に行っていただくことは何もありません。我々の方から「連携していますよ」ということはお伝えしていますが、提供側からすると、登録された情報が「タウンWiFi」経由のものかどうかの判別はできません。
利用者はやはり都市部に集中しているんですか?
荻田:Wi-Fiのスポットがないと接続できないので、地方だとつながりにくいと思われがちですが、実際は地方でもよく使われています。人口分布に比例する形で各地にユーザーがいるイメージです。
「日本はフリーWi-Fiが少ない」という声を耳にしますが、実際はとても多く、世界でもトップクラスです。ただ提供元が細分化されているので、使い勝手がいいとはいえません。自治体ごと、交通機関ごとに別のWi-Fiがあり、「Tokyo Wi-Fi」みたいな形で統一されていないため、みんな不便に感じるんです。日本にたくさんあるフリーWi-Fiを活用しやすくするために、我々は「タウンWiFi」をもっと広めたいと思っています。
利用者数が増えて安定したサービスを提供される中、2019年11月にGMOインターネットグループジョインを果たします。その理由を教えてください。
荻田:端的に言えば、「タウンWiFi」の利用者をもっと増やしたいからです。サービス開始から3年半で650万ダウンロード、320万MAUまで成長しましたが、フリーWi-Fiの利用者は3,500万MAUといわれているので、もっと伸ばせたはずなんです。今以上のスピードで成長させるためには、顧客基盤のしっかりした企業との連携が必要だと感じ、ジョイン先の検討を始めました。
何社か検討をした中で最終的にGMOインターネットグループに決めた理由は2つあります。1つは、「すべての人にインターネット」を掲げるGMOインターネットグループは、通信の利便性を広げたい我々とビジョンが近いと思ったから。もう1つは、グループ会社の社長がみんな楽しそうだったからです。
僕たちのような10名にも満たない会社が6,000名を超える企業グループにジョインするのは勇気がいることで、カルチャーが変わってしまうのではないか、自分たちらしさが失われるのではないかと不安でした。でも、GMOインターネットグループは梁山泊経営で、共通のポリシーを持ちながらも個社を尊重して任せる方針という話を聞き、さらにお会いする社長や役員の皆さんがどなたも楽しそうにお仕事をされていて、「ここならジョインしても自分たちの良さが消えることはない」と確信しました。
具体的に今後はどのような展開を考えていますか?
荻田:我々のマネタイズポイントは、広告とデータ提供です。あるWi-Fiにつながったら、その場所にいるということなので、その人に最適な広告を表示させることが可能です。広告主の店舗の近くいるユーザーに店の情報を表示したり、店で販売している商品やキャンペーン情報を表示したり。まさに「エリア広告」ですね。位置情報を取得できる「タウンWiFi」をメディアと捉え、GMOアドパートナーズと協力することで新しい広告サービスを展開していく予定です。
さらに、GMOメディアと協力してフリーWi-Fiに接続する機能をSDKとしてパッケージ化し、他のアプリに提供する事業を進めています。今年はオリンピックイヤーということもあり、インバウンド系のアプリをターゲットにしています。
これからはオンラインとオフラインの垣根がどんどんなくなっていきます。Wi-Fiというのは店舗のデジタル空間なので、その2つを結びつける役目を果たすことができます。例えば、店舗には来店しているけれど自社のWebサイトに来ていない人も特定可能ですので、そのユーザーに対して、自社のWebサイトを薦める広告を出すことも可能なんです。
GMOインターネットグループ内でのシナジーの結果、「Wi-Fiにつながるといいことがある」という文化を創り上げたいと思っています。数値目標としては、2021年12月を目途に、「タウンWiFi」のMAU1,000万を目指します。高い目標ですが戦略を練って必ず実現させます。
最後に、この記事を見てくださっている方にメッセージをお願いします。
荻田:「タウンWiFi」はすごくいいサービスですし、すごくいい会社だと自負しています。小さな会社なので、自分で正しいと思うことを自由にできる環境がありますし、権限を持ってサービスを動かすことができます。今、サービス拡大に向けて人財を募集中ですので、自分の力を発揮したい、自分の力でサービスを大きくしたいという方は、ぜひご応募ください!