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早稲田大学 菅野研究室にチームラボ有志で訪問しました

チームラボではエンジニアのコミュニティと知見を広げるため、大学研究室を訪問する活動を行っております。11月24日(金)には社内有志で 早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科 菅野研究室 を訪問しました。今回はそのレポートをお届けします。

菅野研究室は1997年から活動している研究室です。感覚的に「いい」とされる様々な表現は、なぜ「いい」のかが科学的に解明されていないものも多いのですが、この研究室では音や音楽などを中心にこれらの「いい」表現を工学的な枠組みで捉え、新しい表現をつくることに取り組んでいます。弊社メンバーがインタラクションという学会でお会いしたことをきっかけに、今回ご訪問させていただくことになりました。

教授室に入ってすぐに紹介いただいたのは、様々な「いい音」が鳴るものたち。上の写真でぶら下がっている鉄の箸は明珍火箸といい、箸と箸を当てるとリーンという澄んだ心地よい音がします。こういった「いい音」とは何なのかという疑問が、菅野研究室の中心的な問題意識のひとつです。

またこの音は心地よいだけでなく、とても遠くまで聞こえる性質があり、その理由もわかっていません。明珍火箸の音は 80kHz までの非常に高周波な非可聴音(人間には聞こえない音)が含まれ、マイクロホンの性能測定などにも利用されているのですが、この高周波成分が原因ではないかと考えられているそうです。菅野先生は、別の素材でそれほど高周波の非可聴音が鳴らない同様の火箸を作り実験を行い、そちらは音がそれほど遠くまでは届かないという結果を得たそうです。

こちらは日本庭園などにある水琴窟。水をかけると、水が滴る色々な音が響きます。大学の職員さんなど色々な人が、わざわざこの音を聞きに研究室を訪ねてくるそうです。こうした音の心地よさの仕組みも解明されているとはいえず、またマイクロホン性能などの限界から現在のデジタル技術では十分に音の再現ができないとのことでした。

次に学生さんたちの居室に移動したのですが、部屋の色々なところに大小のスピーカー、指向性スピーカー、その他の音響機材が並んでいました。たくさんのスピーカーから上記の明珍火鉢や水琴窟の音など心地よい音を再生し、その空間を自分で移動することで聴きたい音を楽しめるというデモなどを体験し、ゆったりした雰囲気の中で研究についてご紹介いただきました。

例えばCDよりアナログレコードを好んだり、FMラジオよりもAMラジオを好む人が少なからずいます。それを説明する仮説として、人間は聞こえない周波数帯についても何らかの感覚を持っており、本当は音が鳴っているのに耳では聞こえていないことがストレスを生んでいて、そのため聞こえない周波数がそもそもカットされたレコードやAMラジオの音を好むのではないか、という仮説を提唱されているなどのお話をお聞きしました。必ずしも再現度の高い音が「いい音」であるとは限らないという問題の複雑さが、とても興味深かったです。

さらに学生さんたちの研究も見せていただきました。雨の音は特有の魅力がありますが、これを水滴が様々なものに当たる音から再構成できるかといった研究や、水槽の中の魚の動きによって心地よい音響演出を行う研究、対位法の自動生成、さらにはVRにおける引っぱりの力覚を提示する研究など、繊細で感覚的なものを対象とするという軸を持ちながら、幅広いドメインで研究をされているのが印象的でした。

その後は弊社の音楽体験の試みの事例として、参加没入型ミュージックフェスティバル teamLab Jungle の事例、作品制作のためのチーム体制、弊社のサウンドチームの仕事内容などをご紹介させていただきました。学生さんもアートや表現に関心の高い方が多く、弊社の制作プロセスやビジネスモデルについて色々な質問をいただきました。

菅野先生はアナログの良さを解き明かしデジタルの力を借りてその可能性を広げることに興味をお持ちで、いっぽう弊社はデジタルでしかできない部分を活かして新しいものを作ろうと活動する中で物質のもつ力を借りることが少なくありません。お互いの関心事である、アナログ(=物質)とデジタルの対比を中心に議論が盛り上がり、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

また学会などで研究室の皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

※チームラボは今秋、有志で以下の研究室を訪問しています。各記事のリンクは以下です。
10月5日 埼玉大学 小室研究室(コンピュータビジョン)
10月18日 お茶の水女子大学 伊藤研究室(データ可視化)
10月20日 首都大学東京 石川研究室(ビッグデータ解析)
10月25日 東京電機大学 高橋研究室(コンピュータグラフィクス)
10月30日 慶応大学 筧研究室(ヒューマンコンピュータインタラクション)
11月21日 明治大学 宮下研究室(ヒューマンコンピュータインタラクション)
11月24日 早稲田大学 菅野研究室(表現工学)
・11月27日 東京農工大学 藤波研究室(ユビキタスコンピューティング)
・11月28日 芝浦工業大学 菅谷研究室(クラウドロボティクス)

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