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エンジニアが光り輝ける組織を求めて。-Part2-

2.父の隣でインキを配達した少年時代。

 鈴木はポスト団塊世代、所謂ロストジェネレーションと呼ばれる年代に、大阪市東住吉区にあった印刷材料の卸売会社の長男として生まれた。夫婦で会社を営む父親は取引先の印刷工場へインキを配達するためにトラックを運転し、当時、特に印刷業が盛んだった東大阪を中心に周り、子供の頃から鈴木は車の助手席に乗って父の隣を無邪気に駆け回っていた。

 配達先の町工場で働く作業着姿の男たちは幼い鈴木にとって少し怖いような存在だったが、大阪下町ならではのくだけた雰囲気で「ぼん」と呼ばれ、地元大阪のおっちゃんおばちゃんたちにかわいがってもらえるのがうれしかった。

       (写真:印刷会社だった頃の鈴木商店。) 

 しかし、鈴木が高校生の頃にバブルが崩壊し、配達先の中小零細企業は次々と倒産してシャッターを下ろし店を閉じて事業を畳んだ。地元の町工場や商店がいつの間にか消えてなくなり、かつてはにぎやかだった地域の活力や活気が跡形もなく失われ、バブル絶頂期の狂気的な好景気が砂上の楼閣の如く一瞬にして消え去り、景気は底冷えして大手の金融機関は次々と破綻していった。

 国内における中小零細企業の破産が激発して雇用情勢は悪化の一途を辿る一方、消費税率引上げの影響により消費全般が急激に冷え込み、物価下落を伴うデフレ不況が深刻さを増すなか、なんとか倒産を免れ生き残った企業も苦境に立たされ厳しい状況が続き、子供の頃に世話になった地元の大人たちが肩を落として疲弊する姿を前に、まだ何者でもない鈴木には為すすべもなくただ見ていることしかできなかった。

 「中小企業の力になりたい」という想いが芽生え始めたのはこの頃である。 

 景気が低迷して閉塞感が漂う大阪の街で、昔と同じように地道に仕事を続けていた父親が大腸がんと診断されたのは、鈴木が大学を休学してオーストラリアの青い海でサーフィンに明け暮れていたときだった。

 富田林の高校を卒業後、神戸市内の国立大学工学部へ進学したものの特に目的もなくふらふらと遊んでいた彼は「お父さん、癌になったから帰っておいで」と母に呼ばれ大阪に戻り、父の家業を手伝うことになる。

 ほかの学生達と同じように遊び呆けたい気持ちでいっぱいであったが、家業を手伝うため体調の悪い父に代わって零細企業へインキを配達し、やや強面の「怖いおっちゃん」たちに怖気づきながら御用聞きを繰り返す単調な毎日を送っていた。

 ある日、いつもと同じように配達用の軽トラックのドアを開けて運転席に座り、なにかに呼ばれるように社内のダッシュボードへ手を伸ばし蓋をあけると、思いがけないものが鈴木の目に飛び込んできた。

 ガツンとハンマーで頭を叩かれたような、稲妻のような衝撃が鈴木の身体に走った。トラックのダッシュボードの奥に見つけたのは、父親が使っていると思しき大人用のおむつだったのである。

 大腸がんを患う父親が、おむつをしてまでなお黙々と仕事を続けていたことを知って息が詰まった。

 それまで家業を継ぐということは、鈴木にとってなんとなく当たり前のことだと思っていたが、仕事とはここまでするものであり、父親が身体を張って築き上げた商売や目に見えない資産を「自分自身が経営者として守っていかなければならない」と、心の奥底から悟った瞬間でもあった。

 バブル崩壊後の超就職氷河期と呼ばれる時代に、同世代の友人たちがスーツにネクタイを締め必死で就職活動をして夢を語り社会へ出ていくのを傍で眺めながら、鈴木は大学卒業後もインキの配達業務を続けていた。

 「誰が届けたところで黒のインキはインキ」と半ば自暴自棄になるほど儲かる気配はまったくなく、出口の見えない停滞感や閉塞感を打破して新たな突破口を切り拓きたいと思いながら、しかし、学生時代に遊んでばかりだった自分には何も技術がないと、失望と焦燥ばかりが肥大して鈴木は完全に行き詰まっていた。

 ところが、しばらく体調の優れなかった父親がなぜか急に元気になり、主治医によると「2年ぐらいは大丈夫じゃないかな」と言われたことで、鈴木曰く、

チャンス、キターーーーーー!!

と感じた彼は、あることを決意する。


突破口を求めた鈴木の決意とは果たして何だったのか。Part3へ続く。



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