今日はシアトル在住で、不動産に特化したシステムやプラットフォーム開発をされているエドさん(以下:エ)に、日本の不動産テック企業シュアーイノベーションのエンジニアである花岡(以下:花)がお話を伺います。
(花)「エドさん、よろしくお願いします。」
(エ)「よろしくお願いします。」
(花)「まず、エドさんが働いている環境について質問したいです。エドさんは、シアトルと日本の違いは何だと思いますか?」
(エ)「リスクに対する気持ちが大きな違いだと思います。まず、日本人の性格は保守的で、安定志向な考え方を持つ人が多いですが、シアトルだけでなくアメリカの人たちは革新的で、ハイリスクでハイリターンなチャレンジをしようと考えている人が多いです。日本は大企業で雇われることが成功と捉える人が多いですが、シアトルではスタートアップの方が面白いと感じている人が多いです。」
(花)「そうなのですね。日本人の多くの人が大企業に就職したいと考えているのは私もよく感じます。エドさんは、なぜシアトルと日本の間でリスクに対する気持ちの違いが生まれていると思いますか?」
(エ)「そうですね、それぞれ失敗に対する捉え方の違いが原因になっていると思います。日本では、授業であまり手を挙げる習慣がないように、失敗することは恥ずかしいことと捉えている人が多いと思います。しかし、アメリカでは失敗から学んで成長すると考えている人が大多数です。そのため、授業中は積極的に手を挙げる光景をよく見ます。」
(花)「子どもの頃から失敗は成長するために必要と捉えることはとても重要なことですね。では、ビジネスにおいて、これらの違いはどのような形で現れているのですか?」
(エ)「事業への投資の仕方や、従業員の給料に対する考え方が良い例だと思います。
まず、事業投資においては、アメリカのVCはリスクをとる考え方なので、スタートアップ企業の資金調達のハードルはそれほど高くありません。ハイリスク・ハイリターンを好む投資家が多いため、少額の資金調達が逆に難しいです。良い技術を持っている会社が1億ドルのベンチャーキャピタルを得ようとしてもそれよりもはるかに多い10億ドルも集まってしまいます。」
(花)「なるほど。アメリカ発ベンチャー企業が多いことと、スタートアップ企業の資金調達に対するハードルの低さは関係しているかもしれませんね。」
(エ)「次に従業員の給料に対する考え方ですが、日本では給料を上げるために取る手段として、同じ会社で何年も努力してキャリアアップすることを第一に考えると思います。しかし、アメリカでは、より高い給料を得るための大きな選択肢として転職を考えます。日本に終身雇用や年功序列という文化があるように、何年もかけて自身の収入を上げるという手段はそれほどメジャーな考え方ではありません。アメリカでは、給料が低いと感じ、高い給料を求める際に転職という手段を取る人が多いのです。」
(花)
「転職を決断することは、保守的な考え方を持っていては難しいですよね。それは日本とアメリカでの気持ちの面での違いが大きく影響している可能性がありそうです。エドさんはシアトルで働いていますが、シアトルで働いているからこそ感じる違いはありますか?」
(エ)「シアトルだけでなくアメリカには様々な国籍や文化の方が集まるため、人材やリクルーティングの面ではアメリカは非常に特徴的だと感じます。
まず、人材での面では、やはり多国籍で様々なバックグラウンドや経験を持っている人たちがアメリカに集まりますし、同様にそのような人たちが会社にいるので、幅広いアイディアが生まれていると感じます。アメリカでのAIに対する考え方はとても面白いです。日本では人が足りていないのでAIをどんどん使おうとしますが、アメリカではAIに対して怖がっています。人間の仕事がなくなってしまうことが嫌なので。
次に、リクルーティングの面では、日本はきちんと行なっているイメージがあります。公式なサイトから応募して、何度も面接を行なっています。しかし、アメリカでは自分の人脈を使って就職活動することが多いです。採用する際も紹介が大部分を占めます。会社を条件だけでなくカルチャーを重要視して選ぶところもアメリカ特有だと思います。」
(花)「海外の企業で働いているとアメリカの企業と日本の企業間で大きな違いを感じるのですね。では、今まで挙げてもらった日本とシアトルの違いから生まれるアメリカ企業の強みは何だと思いますか?」
(エ)「アメリカの技術は世界から見ても強みであると思います。アイディアの多様性やリスクに対する考え方の違いから、投資家は事例のない新しい技術に対しても積極的に投資しようとします。そのため、新しい技術が作り出されやすい環境がアメリカには存在しており、技術に関してアメリカが世界の最先端を走っているのだと思います。日本の企業はどうしても海外から輸入した技術を使っているイメージを抱いてしまいます。日本では前例のない新しい技術を作り出すのではなく、海外で生まれた基礎技術をどのようにして応用するかに注力していることが多いと思います。」
(花)「シリコンバレーやシアトルに世界の有名企業が集まる理由はこれにあたるのですね。日本とアメリカで様々な観点でこれほど違いがあることに驚きました。
それでは次に、エドさんに関する質問をしていきたいと思います。まず、エドさんが持つビジョンや今後やりたいことを教えて下さい。」
(エ)「日本の不動産から良いところを学んで、シアトルに普及させたいと考えています。日本の不動産は狭いスペースをうまく使っていて住みやすく、デザイン性が高いです。シアトルでも、狭い空間であっても使い勝手の良い物件を探している人が多いのですが、いまいち良い物件がないのが現状です。そのため、日本の不動産を学んでいこうと考えています。」
(花)「日本の不動産は他の国でも注目されているのですね。ちなみに、エドさんはどんな時に仕事のやりがいを感じますか?」
(エ)「新しいニーズを発見した時と、ニーズに応えられた時です。ニーズに答えられる製品やサービスをすぐに作って見せることができた瞬間にやりがいを感じます。昔は数年かけて作っていたものが、今ではすぐに作ることができるようになったので。」
(花)「お客様のニーズを試行錯誤して発見し、それに対して答えるために努力しているのですね。では、エドさんはどのような人と一緒に働きたいと考えていますか?」
(エ)「ニーズを発見してチャレンジする人と働きたいです。好奇心が旺盛で、新しいことでも考えてやってみよう!と思うことは大切です。決まった答えを探すことよりも、良い問題を探すことが大切と私は考えているので、良い問題を探せる人と一緒に働いてみたいです。」
(花)「新しいニーズに対するこだわりや、積極的にチャレンジしようとする姿勢がエドさんから伝わってきました。では、エドさんのこれまでを振り返ってみて、20代の時にやっておけば良かったと思っていることは何ですか?」
(エ)「ベンチャーをもっとチャレンジしていれば良かったと思っています。シリコンバレーへ若いうちに行かなかったのもその一つです。家が買えない、子供が…と将来のことを考えてしまい、シリコンバレーへ行くことをやめてしまいました。でも振り返ってみると、若いうちに積極的にリスクを取ってチャレンジすべきだったと感じています。」
(花)「若いうちにシリコンバレーへ行く決断は難しいですよね。ですが、リスクを取って積極的に挑戦することが大切とエドさんは思っているのですね。不動産テックに携わっているエドさんは、不動産テックの未来をどうイメージしていますか?」
(エ)「現在も不動産テックはどんどん変わっていますし、これからも変化していくと考えています。今までよりさらなるグローバルな取引が実現することになるでしょう。例えば、老後に日本で住みたいと思っているけどローンが組めるか?というニーズに対してもテクノロジーの力で答えることが可能になっていくと思います。データもますますオープンに、そしてクリアになっていくこれからの不動産テックの変化は、不動産業界の働き方すら変えると思っています。グローバルに、どこにでも不動産を持つことができる未来が来ると考えています。」
(花)「不動産テックは将来の不動産業界に大きな影響を与え、欠かせない技術になっていくと私も思います。最後に、テックカンパニーで成功したいと考えている若者に応援メッセージをお願いします!」
(エ)「まず、お客様の声を常に聞き、会話を大切にして下さい。お客様といっても、まず正しいお客様を見つけることが大切です。様々な関係者や組織の中にいたとしても「誰がお客様なの?」とならないように注意しなければいけません。しっかりと正しいお客様の声を聞くことを忘れないようにして下さいね。
最後に、失敗やリスクを恐れないで積極的にチャレンジして下さい!そして、給料だけはなく、チャレンジすることができる仕事や環境を選び、失敗から学んで試行錯誤してほしいです。その失敗から得られるものは将来において必ず大切なものとなるはずです。応援しています。頑張ってください!」
(花)「素晴らしいメッセージありがとうございます。お客様ファースト、そしてリスクを取って積極的にチャレンジすることや、失敗から学ぶことの重要性が伝わったと思います。エドさん、本日は大変有意義な時間をありがとうございました。」
(エ)「ありがとうございました。」
<エドさんプロフィール>
Sarausad Edward
----Global product manager-------
シアトル在住。マイクロソフト社にてシニアマネージャーとして、ビジネスインテリジェンスプラットフォームの開発など数々のプロジェクトを成功に導く。その後米国の大手コンサルティングファームにてフィンテック領域でデータサイエンスツールや各種アプリケーションの開発責任者を務め、戦略顧問としてシュアーイノベーションに参画。