「好きなもの、素敵だと思うものを空間を通して、直接届けたい」 商業ビルの企画職からホテルスタッフへ…ローカルカルチャーの起点となるホテルをつくる挑戦
株式会社水星に新しく入社した社員にインタビューをする入社エントリ。今回、紹介するのは、大手商業施設の企画職から転職をして、現在は、HOTEL SHE, OSAKAのホスピタリティースタッフとして活躍している武内流荘さん。
学生時代から一貫して、「自分が好きなもの・素敵だと思うものを発信すること」を軸に仕事に向き合ってきたという武内さん。現在は、日々、現場でゲストと向き合いながら、HOTEL SHE,OSAKAのコンセプト「ローカルハブ」=地域の人や文化の交差点となるようなホテルを体現すべく、大阪ベイエリアの個性的な取り組みをしているお店とのコラボ企画などを構想中。「現場に立つことで企画への解像度が高まった」と語る彼が考えるホテルだからこそ出来るカルチャー発信とは?武内さんにこれまでの経歴や仕事への思い、これから挑戦したいことについて話を聞いた。
プロフィール 武内流荘
1999年大阪府堺市生まれ。大阪大学外国語学部インドネシア語専攻卒。大学卒業後は、ファッションビルでの企画考案・シーズン装飾などの運営業務を担当。 自身で考案したモノ・コトを接客を通して発信したいと考え、2023年9月、水星に入社。現在、HOTEL SHE, OSAKAのアシスタントマネージャーとして、ホスピタリティ業務や企画運営業務に従事している。
自分が好きなものを企画に落とし込み、空間を通じて発信したい
― 前職は、流行の先端を発信するSC(ショッピング・センター)業界だとお聞きしました。SC業界に入ったのはなぜですか。
周りの目を気にする性格もあって、高校生の頃から本格的にファッションに興味を持ち始めました。当時は「かっこよく見られたい、でも人と同じは嫌だ」という気持ちが強かったですね、拗らせてるみたいでお恥ずかしいですが(笑)。でも、「枠に囚われず自分軸で生きていく」という信念は、ファッションに限らず自分の生き方として今もずっと持ち続けています。
大学入学直後、ファッションサークルに第1期生として、ゼロから開拓していく段階で入りました。ちょうどファストファッションが台頭し、流行りのファッションを消耗品的に着るライフスタイルが特に若者の間では主流になり始めていた時期。そんな時流においても、僕たちのサークルは「トレンドに縛られず、自分が気に入った服を大切に着よう」をモットーに、年に一度のファッションショーの企画・開催を軸に活動していました。
3年生の時に代表に就任し、代表としてどういうサークルにしていきたいか改めて考え、まずはメンバーがそれぞれ楽しんで活動できるのが一番だと思ったんです。スローファッション・ファストファッションと言うと社会問題感がありますが、僕たちは社会活動をしたいわけではなく、純粋に好きな服を大切に着ることの良さを発信したかった。だから、できる限り、それぞれの考えを尊重し、やりたいことを叶えられるようなサークルを作ろうと努力しました。そして僕自身も、代表という立場だからと諦めず、好きなものや好きなことを追い続ける姿勢を貫いていました。ファッションサークルの経験から、就活も「自分が好きなもの・素敵だと思うものを発信する仕事」と言う軸で行い、その機会を持てるSC業界に入社しました。転職活動でも、その軸は変わっていなかったように思います。
―ファッションに興味があり、かつ「自分が好きなもの・素敵だと思うものを発信する」という軸となると、アパレル業界やメーカーなどをまず考えそうですが…。
SC業界を選んだ1番の理由は、「空間を使って発信できる」からです。全国各地に大きな施設を持っているポテンシャルを活かし、地域でのカルチャー発信源で働けることに魅力を感じました。前職と水星の共通点も、この「空間」だと思っています。空間を活用した企画が好きなのは、初め自分の頭の中だけで考えていた物事が、空間を通してだんだん形作られていく過程に携わることにやりがいを感じるからです。
前職では東北地方で勤務しており、配属当初はカルチャーの違いに驚くことばかりでした。僕は居酒屋でたまたま隣に居合わせた知らないお客さんと話すのも好きなのですが、つい関西のノリで話しかけて困らせてしまいました(笑)。モノトーンや落ち着いた服装の方が多い印象で、ファッションにも県民性が表れるのかなと興味深かったです。
前職は商業ビルの企画職。自分が素敵だと思うローカルのカルチャーを取り入れた企画で勝負を仕掛けた
―生まれ育った関西から遠く離れた新天地で、どのような仕事をしていたのですか。
仕事内容としては、販売やサービスではなく、総合職として主に販促企画や誘致を担当していました。その街には、他にもう1つ競合の大きなファッションビルがあり、どちらかというと客層が幅広いブランドを多く抱えていたのは相手側。だからこそ、「カルチャー路線での発信では負けない!」という気持ちでさまざまな企画に取り組みました。
最初に担当したのは、東北三大祭りの1つとして有名な仙台七夕祭を取り入れた企画です。“カラフルなぼんぼりが街に花開く中、自分たちの個性も開花させよう”というコンセプトで、地元のアーティストさんとタイアップしたり、お客さんに絵を書いていただいた特製ぼんぼりを飾ったり。ディスプレイにも力を入れて、客層がニッチな個性的なブランドのマネキンをあえて1番目に入る正面に展示したり、賑やかで楽しいお祭り気分になれるような装飾に変えたりもしましたね。僕もポップアップを任せていただき、「今年の夏、うちは個性全開で行きます!!」と、楽しくやらせてもらいました。
前職で最後の企画となった、障害のある方への支援団体とのポップアップも、僕の中で印象深いです。その団体との出会いは、休日に参加していた地元商店街のお祭りでした。障害者の方が描いたアート作品を販売している彼らの活動を、僕もその時初めて知り、もっとたくさんの人に広めたいと思ったんです。「うちでポップアップしたらいいやん!」と思いつきその場でお声掛けし、ポップアップイベントを実現することができました。その団体の方にも「こんなな大きな施設でイベントができるなんて、今まで思ってもみなかった。武内さんのおかげで、たくさんの人に知ってもらえて嬉しい」と言っていただけて、最後に相応しいやりがいを感じられた仕事ができて嬉しかったです。
たとえ小規模でも、ローカルで素敵な取組をされている方達の発信をできるのはすごくやりがいを感じます。それをきっかけに活動を知っていただいて、共感してくださる方が少しでもいれば、それが自分が仕事をする意義だなと思います。
―水星でも常々掲げている「土地を再解釈して落とし込む」ということを、武内さんも前職時代から実行されていたのですね。地域や人を巻き込みうまくシナジーを生み出すような企画の秘訣はありますか。
コツというほどのことではないのですが、普段から積極的に街を歩き回りいろんな場所でいろんな人と交流しながら、「面白いな」「これいいな」と思うものをたくさん見つけられるよう常にアンテナを張っています。先ほどの例のように、街での素敵な出会いをきっかけにお仕事もご一緒できることもありますしね。あと、自分と感覚や思いが似ている人たちとなら、自ずと仲間意識が生まれ、リスペクトし合い信頼関係を深めながらプロジェクトを進められるように思います。水星にもバイブスや目線のすり合わせを丁寧にするカルチャーがありますが、これは企画に限らず仕事のどのような場面でも大切ですよね。
―入社早々から最後まで、「自分が好きなもの・素敵だと思うもの」「空間を使って発信する」ことに打ち込めていたように感じますが、その中で転職を考えたのは何故ですか。
「接客をしたい」というのが、転職を考えた原点であり最大の理由でもあります。前職では、基本的に裏方にいて間接的にしかお客様と関われなかったので、自分の企画したものを世に出せても、どこか不完全燃焼感がありました。企画したものを実際に運営するところまでやりたいと思ったんです。転職活動中に水星に出会い、単なるホテル業務だけではなく地域や様々な人を巻き込んでイベント・発信をしているところ、そして日々運営を通してお客様の反応を現場で見れるところに惹かれました。
自分が実際に現場に立つことで、企画をする時の解像度が各段に高まった
HOTEL SHE, OSAKAに配属され、毎日お客様と接しながら、現場に立てることへの喜びや新しい出会いや発見の連続に、今でも毎日新鮮な気持ちで仕事しています。入社して間もないころ、初めてお客様とカジュアルなコミュニケーションができたときは、「これがホテル接客の醍醐味か…」と感動したことをよく覚えています。今では毎日そのようなコミュニケーションができるようになり、接客の楽しさとやりがいを感じる日々です。
先ほどの転職理由にも紐づきますが、ホテルの接客だけでなく企画においても、自分の言葉やアクションを届ける相手が同じ空間にいて、その反応を自分の目で知れることの素晴らしさは、日々を体感しています。良い反応をいただいてモチベーションや達成感に繋がるのはもちろんですが、たとえ思っていたような反応や結果にならなくても、それを実際に見聞きできることで自分の中での反省や改善がすごく進むんです。間接的な情報がメインだった前職時代に比べ、企画するときの解像度も格段に高まりましたね。実際にお客様の反応を見なければわからないことがたくさんあります。HOTEL SHE, OSAKAスタッフとして働いている中で、「この施設をもっと良くしたい」という想いも日増しに大きくなっています。愛するこの施設に、自分の愛するものをさらに取り入れて、より愛されるホテルをメンバーと一緒に作っていきたいですね。
―「企画をやりたい」という人は多いですが、武内さんのように自分が現場に立って運営する大切さもよく理解していたら、より良い企画を作れるに違いありません。入社半年以上が経った今思う、水星で働く魅力や今後の目標を教えてください。
メンバー全員がポジティブなこと。例えばミスがあった時も、ミス自体を必要以上に責め立てるのではなく、「次からはこうしていこう」という改善の方向に持っていってくれる。水星全体として、こういう意識が共通認識としてあり、ポジティブな空気感で満ちているのが魅力だと思います。僕はホテル未経験だったので入社前は不安や心配も少なからずありましたが、HOTEL SHE, OSAKAのメンバーみんな、新人を迎えることにもすごくポジティブに歓迎してくれたおかげで、異業種からの転職でもスムーズにスタートすることができました。今もまだまだ教わることばかりですけどね。
将来的には、現場での経験を活かしプロデュース事業部でガンガン企画に打ち込むというのも面白そうだなと思っています。でも当面の間は、現場に立って経験を積みたいです。自分の目や手が届くこの距離感だからこそ作り出せる濃密な体験や企画があるので、いろいろな可能性が待っているだろうとワクワクしています。
直近の目標で言うと、現在進行形で進めている、地域の某本屋さんとのコラボ企画を成功させたいです。僕たちが掲げる「新しい選択肢を提供する」というコンセプトにおいても、宿泊体験の中で未知の本と出会うというのは、手軽に新しい世界へ踏み込む第一歩になると思います。先ほど「自分と感覚や思いが似ている人たちとコラボする」というお話をしましたが、そのお店が扱っておられる本のラインナップや世界観も個人的にすごく好みでフィーリングのリンクする感覚があるんです。良いイベントができると確信しているので、早く実現させたいですね。今年のHOTEL SHE, OSAKA7周年イベントも、過去イチ盛り上がった企画にしたいです。