住みたい街ランキングでは不動の上位を誇る吉祥寺・三鷹エリア。5歳の息子さんと3人家族のM様ファミリーは、数年越しの物件探しを経て、吉祥寺と三鷹の中間にある中古マンションをフルリノベされました。引っ越して約2年、ご夫婦ともに「もっと早くやればよかった」とおっしゃるほど満足されている“帰りたくなる家”はどのようにして完成したのか。お話を伺いました。
Profile
- M様邸@三鷹
- 30代夫婦+お子様1人
- 63.28㎡/2021年12月竣工
- リノベーション費用:1540万円(施主支給・設計費含)
見た目と機能性が両立するキッチン
―キッチンの真鍮と木の組み合わせがすごく素敵ですね。
奥様:リノベーションは元々夫の希望だったこともあり、任せていた部分も多いのですが、キッチンは私がメインで希望を出しました。IKEAのキッチンシステムをベースに造作でアレンジしています。
谷口:キッチンも背面の作業台もベースはIKEAで、引き出しの面材は造作。キッチンのシンクと天板はシゲル工業のものを使っています。それらを工務店さんに組み合わせてもらい、コンセントや、ワークスペースを造作しました。
奥様:キッチンの引き出しは通常の1.5倍くらい奥行きがあるおかげで収納力があって気に入っています。引き出しはIKEAなので、仕切りもIKEAで揃えてぴったりと納まって快適です。食洗機がかなり大きいので1日1回の使用で済んで助かっています。
ご主人:業務用かと思うくらい大きいよね(笑)。
▷キッチンの奥はWTCへ繋がっていて、回遊できる動線になっています
▷IKEAの幅60cmの食洗機。お鍋やフライパンも楽に入るそうです
―引き出しに奥行きがある分、作業台も広くて使いやすそうです。
ご主人:2人でキッチンに立つことや、ウォークスルークローゼットへ行く時にすれ違うことも考慮して、キッチンは余裕を持って設計していただきました。
奥様:LDKの広さに対してキッチンの面積が大きすぎるかもしれませんが、家事動線を考えると、どうしても譲れないポイントでした。ワークスペースは予算削減のためにデスクを購入することも検討しましたが、やっぱり造作にしてよかったです。
―一体感があって美しいです。ここは奥様のワークスペースですか?
奥様:そうですね、月に何度か在宅ワークをする時に使っています。椅子はチェスカチェアを選びました。
ダイニングにリズムを生む名作椅子たち
▷奥様が座っているチェスカチェアは、ハンガリー出身の建築家マルセル・ブロイヤー氏が1928年に自身の愛娘の名前にちなんで名付けた藤と木を組み合わせた椅子
―ダイニングの椅子が一脚ずつ違うのも楽しいですね。どちらのものでしょうか。
ご主人:ここに住み始めてから、2年くらいかけて買い集めました。絶対にほしかったのはドムスチェアとファネットチェアで、これは私がこだわって選びました。テーブルは軽井沢にある北欧家具のhalutaで購入したアアルトデザインのもので、オンラインショップ経由で妻が選んでくれました。
奥様:子供の椅子はストッケです。
ご主人:あともう一脚は、馬喰町にあるHYST(ヒスト)という古道具屋さんのInstagramで見て「これだ!」と。
奥様:週一回しか営業していないお店なんです。夫婦で交代してお店の外で子どもをあやしながら買ったのもいい思い出です。最近買ったのは、国立の家具屋さんで見つけた子供用の小さなチェアですね。フリースペースに置いてあります。
ご主人:数千円とお手頃価格だったのでその場で購入し、かついで持ち帰りました(笑)。
▷ダイニングとリビングにはずっと使いたいと思っていたというイサム・ノグチのペンラントライト「AKARI」を選びました
―家具は新旧問わず購入されますか?
奥様:ヴィンテージのほうが多いと思います。
ご主人:本当はドムスチェアもヴィンテージが欲しかったのですが、なかなか希望の色が見つからなくて。でも、ドムスチェアだけは新居に引っ越すのと同じタイミングで使いたかったので新品を買いました。ゆっくりと時間をかけて自分の味を出していくのもいいかなと思っています。
奥様:ドムスチェアと床材は同じバーチだよね。
ご主人:そうそう、そこは合わせたね。椅子もそうですが、引っ越しのタイミングで家具や家電はほぼ一新しました。
奥様:ちょうどテレビが壊れたり、冷蔵庫が今の半分のサイズで使い勝手が悪かったりしたので、引っ越しを機に家具と家電はほぼ買い替えました。以前の家から持ってきたのは、ダイニングのエアコン下に置いたグレーの棚とテレビボードくらいです。
ご主人:棚は私が一人暮らしを始めた時に蚤の市で購入したもので、もう20年くらい愛用しています。独身時代は洋服を入れていましたが、今はバラして2段は飾り棚、残りの2段は子どものおもちゃ入れになっています。
奥様:そう考えると歴史があるね。この棚は必ず新しい家にも持っていこうと考えていたので、棚ありきで家具の配置を考えていました。
▷壁はすべて塗装。多少の汚れならサッと拭いて落とせてDIYで塗り直しもできるので塗装にしてよかったとのこと
ご主人:テレビボードにしている棚は、以前の家では食卓にしていたんです。削れている箇所もあるし、傷も多いのですが、それも思い出かなとそのまま使っています。
奥様:工務店の方に塗り直した方が良いか相談した時に「これは塗り直さず、そのままがいいですよ」と言ってくださったのはうれしかったですし、信頼できる方たちだなと感じました。
高騰する物件価格が購入の後押しに
―物件選びからEcoDecoにご依頼いただきましたよね。
奥様:はい、お互いの実家も近く、私は独身時代も三鷹・吉祥寺近辺に住んでいたので愛着があり、エリアにはこだわっていました。ただ、フルリノベができて予算に合う物件が少なくて…。実は、この家もご紹介いただいた当初は狭さが気になっていました。
ご主人:70〜80平米くらいの部屋を探していたので、60平米台のここにはあまり期待していませんでした。「希望価格より安いし、まあ1回見てみようか」と軽い気持ちで内見しました。
奥様:そうしたらタイル張りの外観がまず気に入って。中に入ると眺望も抜けていて部屋が明るくて「いいかも!」と。でも、給湯器ではなく電気温水器だったり旧耐震だったりと気になる要素もあって即決はできませんでした。
谷口:物件自体は年末に紹介したのですが、春先にやはり内見したいとご連絡をいただきました。
ご主人:フルリノベできる物件が出てこなかったので、新築や部分リノベについても検討する期間として3ヶ月くらい家探しは中断していましたが、「やっぱりここにしよう!」と。
―それはなぜですか?
ご主人:コロナ禍に突入して物件価格が上昇したことが大きいです。どんどん値上がりする様子を見ていると「予算内でこの部屋以上の部屋はもう出てこないだろう」と思うようになりました。デメリットがあって物件価格が相場より安かったのですが、良いところもたくさんあるので、そちらに目を向けるようになりました。
奥様:私の中で日当たりは重要なポイントだったので、バルコニーからの視界も良くて明るいことは好印象でした。
ご主人:物件価格を抑えられる分、リノベに予算を回せることも決め手の一つでした。あまりに高騰する状況に、一時は部分リノベに切り替えることも検討していましたが、おかげで希望どおりフルリノベーションできました。
―デメリットだった要素はどのように払拭されたのですか?
谷口:このお部屋は、階下に音が響きやすいと売主側から事前に伺っていましたので、施工会社さんと相談しながら、床も壁も音が響きづらいよう配慮しました。そのためには硬く重くすることが必要ということで、床には防音のグラスウールを多く敷き詰め、下地材も固い板を選んでいます。壁には断熱材だけではなく遮音シートも入れてあります。
▷beforeの様子
奥様:事前に谷口さんから丁寧に説明していただいたので、防音や断熱については施工次第で不安を払拭できることを知り、安心して購入できました。おかげで下の階の方との関係も良好で、マンション内で会うと子どものことも可愛がっていただいています。電気温水器も最初は室内にこんな大きなモノがあることを懸念していましたが、うまく隠していただきましたし、給湯器よりもすぐに熱湯が出るので不便に感じたことはありません。
「EcoDecoならやりたいことが実現できそう!」
―中古を買ってリノベーションされたきっかけは?
奥様:妊娠が一番のきっかけだったと思います。ただ、当初私は「新築でいいよ」と思っていました。
▷寝室のチェストの上のディスプレイ。「夜の木」のシルクスクリーンは、初デートでお二人共に気に入ったという思い出の一枚
ご主人:私はインテリアが好きで、建築にまつわる仕事をしていることもあり、自分好みにリノベーションをしたいとずっと思っていました。それで、妻に「新築で既存のままよりも、自分好みの家に長く住んだほうが良いと思わない?」と説得をして(笑)。話をしているうちに妻も賛同してくれたので嬉しかったです。
奥様:リノベーションが嫌だったわけではなく、ただ単にリノベーションについて知識がなかったんですよね。だから、いろいろなサイトの施工事例を見ながら夫の話を聞くうちに「こんなにおしゃれな生活が本当にできるなら、新築マンションよりも楽しそう!」とリノベの良さを知っていきました。
―EcoDecoを選んだきっかけは?
ご主人:他社のセミナーにも参加しましたが、webサイトで事例を見ているうちに「こんな家になるならEcoDecoさんがいいな」と思うようになりました。特に、府中や南行徳の事例は何度も見て参考にしました。
奥様:その後、EcoDecoさんの事務所を訪れた際に、事務所もセンスが良くてかっこよかったので「私たちがやりことを実現できそう!」という思いが強くなりました。
―実際に依頼していかがでしたか?
ご主人:私たちの要望を叶えてくれるのはもちろんですが、そのまま採用すると後々不便が出るようなことには「こうした方がいいですよ」と具体的なアドバイスもしてくださったので非常に助かりました。施工を担当してくださった工務店さんも気遣いが細やかで本当に満足しています。ここに住んでもうすぐ2年ですが「こうすればよかった」と後悔していることが全然ないですね。
奥様:強いて言うならキッチンのコンセントくらいかな。ブレンダーを使う時にキッチンの作業台にコンセントがあれば便利だったなと。設計時にシミュレーションをした時は、ダイニングテーブルでホットプレートを使う想定でコンセントの位置を決めましたが、結局まだホットプレートは使っていなくて(笑)。
ベッドをやめたことで広がる可能性
▷玄関土間と寝室の段差を最小限にすることで寝室とシームレスな繋がりを感じます
―63㎡とのことですが広々とした印象を受けます。何か工夫はありますか?
ご主人:はい、そこは意識しました。LDKにつながる廊下の扉はガラス面が大きなものを選んだり、寝室の引き戸をすりガラスにすることで、全体的に圧迫感がないようにしています。それと、寝室の扉引き戸にして開け放せるようにしたことでいろいろな用途が生まれましたね。寝室でありながら、来客時にはコートや靴の脱ぎ着ができるスペースにもなるし、家族が出かける時の準備スペースにもなっています。
▷寝室の引き戸を全開にすると、玄関を入ってすぐに開放的な空間が広がります
―広さを感じるための工夫がお部屋を多目的に使えることにもつながっているのですね。
ご主人:そうですね、ベッドが寝室を占領してしまうのも避けたかったので、ベッドをやめて布団にしたのもよかったです。
奥様:以前の住まいは、玄関が狭くてベビーカーを置く場所もなく大変でした。今は子どもも大きくなってベビーカーを使う機会はなくなりましたが、振り返ると「よくあそこで子育てしていたな」と思います。玄関周りだけではなく、浴室もキッチンも全てが広く使いやすくなってQOLが爆上がりしました(笑)。
朝起きてすぐに顔の見える安心感
ご主人:住んでいても「狭い」っていう感覚はなく、むしろ「当初希望していた80平米の部屋だと広すぎたかもね」と夫婦で話しているくらいです。
奥様:特に寝室とキッチンの距離感はこの広さでよかったと思うことの一つです。
ご主人:寝室とキッチンをつないでいるウォークスルークローゼットのおかげだよね。クローゼットに通じる扉を開けておくと、キッチンと寝室の間に“抜け”が生まれるので、朝、息子が寝室で目を覚ました時に、私や妻がキッチンに立っている姿が布団の中からチラッと見えるんです。そうやって自然とお互いの存在を確認できることが、私たちだけでなく、子どもにとっても安心感につながっている気がします。
▷インタビューにも出てきたクローゼットを挟んだ寝室とキッチンの“抜け”。普段は開け放していることが多いそう
▷シューズラックの一角に設けたディスプレイスペースには展覧会で購入したホックニーの作品等が並びます
―なるほど。寝室は木材の雰囲気も良いですね。
ご主人:かっちりした印象よりも少し粗野な雰囲気を加えたくて壁にはラワンを貼りました。
谷口:ラワン材は木によってムラが出やすいのですが、しっかりと染色することで木の質感が引き立ちましたし、造作の家具とのバランスも良くなりました。木の色やツヤ感は工務店さんにサンプルを複数作ってもらい、こだわって選ばれましたよね。
ご主人:はい、この色にしてよかったです。いろいろな場所に木を使っているので、寝室は木目の主張を抑えつつ、重くなりすぎないようにしました。
奥様:ラワンにすることで、他の木材と比較してもコストが抑えられたので一石二鳥でした。
ご主人:あとは、家具とのバランスを考えて床材の主張を少し抑えるために選んだバーチ材も、リーズナブルで助かりました。
谷口:床材にはオークを選ばれる方が多くて、バーチを選ぶ方は比較的少ないのですが、Mさんは木の家具が多いのでオークだと節や木目が強く出すぎるので、バーチと相性がよいと思います。
▷現場でラワンに染色したものと、バーチ材のフローリングや壁との相性を確認している様子。ラワンはリビング側と寝室側で色を変えています
暮らすほどに増していく愛着
▷リビングの一角にあるフリースペース。今はお子様のプレイルームですが、将来は夫婦の寝室として使うことも想定しています
―引っ越して2年、暮らしや心境に変化はありますか?
ご主人:ここに住んでから心持ちが変わったことを感じます。実家が近いのでよく帰るのですが、以前は自分たちの家が狭かったこともあり、実家に帰ると「もうちょっとゆっくりしていこうかな」と思うことも多かったんです。ところが今は「早く帰りたいな」と感じるようになりましたね。きっとこの家に愛着が湧いているのだと思います。愛着があるから、部屋を綺麗に保ちたいと掃除もこまめにしますし、居心地が良いから外出していても早く帰りたくなります。フルリノベーションができて本当によかったです。
―帰りたくなる家というのはすばらしいですね。今後はどんな風に変化しそうですか?
ご主人:この2年はあまり大きな変化はありませんが、子どもが大きくなると共に少しずつレイアウトも変わっていくだろうなと考えています。小学生になったら寝室に洋服かけやランドセル置き場を作ろうかなと検討中です。もっと成長したら、寝室は子ども部屋にすることも想定しています。その時はフリースペースが私たちの寝室になると思います。
―お子さんの成長に合わせてますます進化しそうで楽しみですね。今日はありがとうございました。