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ギアでアウトドアのハードルを下げる そのためにがんこ親父はこだわり続ける

スペースキーの小野(@tsugumi_o_camp)です。スペースキーでは、中古アウトドアギアの買取・販売サービスとして『UZD』を運営しています。実は、『UZD』は2020年末にリブランディングしました。リブランディングに至るまでのこれまでの軌跡と今後に込めた想いを聞きました。

松下 瑛人
2017年入社 大手中古買取企業にて買取査定を経験した後、現在は『UZD』の現場ディレクション全般を担う。
「キャンプ歴は6年ほどですが、火器類を中心にアウトドアギアが好きで、それは10年以上前から集めてました。特に、ビンテージのものが好きでキャンプに行く際に、どれを持っていくか考えているときが最高に楽しいです。
最近は、キャンプ+@で現地の名産や遊びなどを行うようにしています。」
奥山 大地
2018年入社 現在はスペースキーのサービスのビジネスデベロップメント全般を担う。「昨今、キャンプを始めとするアウトドアレジャーの第二次ブームが到来していると言われていますが、私達はこれをブームで終わらせたくはありません。アウトドアレジャーの価値を掘り起こし、産業やサービスに持続可能性を付与し文化にするべく、ビジネスを創出していきます。」

中古アウトドアギア買取・販売サービス『UZD』

(松下)UZD(ユーズド)』はテントやランタンなどのアウトドアギアを、気軽に売買できるサービスです。買取ではお客様のほうで商品を発送、到着後に査定をする宅配査定方式を取り入れており、自宅にいながらお手軽に買取依頼を完了していただけます。

サービス名の『UZD』は、“Until Zero Disposal”の頭文字を取りました。アウトドアギアの不必要な廃棄が無くなるその日まで、という意味を込めています。



『UZD』の特徴の1つに、丁寧な査定があります。テントも1点ずつ立てて、状態をこまかくチェック。レビューもきちんと書くことで、安心して購入いただけるように工夫をしています。

中古アウトドアギア買取・販売サービス「GEAR HACK」、リブランディングに伴いサービス名称を「UZD(ユーズド)」に変更
■新たなサービス名称 旧名称:GEAR HACK ↓ 新名称:UZD(ユーズド) Until Zero Disposalの頭文字より抜粋 - (アウトドアギアの不必要な)廃棄が無くなるその日まで、という意味を込めています。 ■新たなサービスステートメント ギアの"寿命"とは、いつなのでしょうか。 使わなくなったら寿命。 必要でなくなったら寿命。 汚れやキズがついたら寿命。 ...
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000007764.html


『UZD』に至るまで

-『UZD』に至るまでのストーリーをおしえてください。

2017年1月頃:『買うトドア』リリース(中古買取・販売の原点となるサービス)
2019年2月頃:『GEAR HACK』にサービス名を変更
2020年12月:『UZD』にサービス名を変更

(松下)ざっくりと、このような歴史をたどってきました。それぞれについてお話させていただきますね。

まず前進となるサービス『買うトドア』について。スタートは2017年1月頃と聞いていますが、私自身同年6月からの参加になります。オフィスの一角で、4人くらいのスモールチームでスタート。当時はコンセプトなども明確なものはなく、とりあえずサービスとして成立するかやってみよう、という流れで始まりました。ただ、根底にあったのは、ギアを揃えるためのコストを少しでも抑えてアウトドアを楽しむ人を増やしたいという想いでした。

-松下さんはなぜ『買うトドア』に参加してみようと思ったのですか?

(松下)前職では、大手買取・販売企業にて査定などを行っていました。アウトドア用品の買取査定も担当し、アウトドアギアの二次流通(中古市場)はニーズがあると確信していました。一方で、ギアがお客様の手に渡るまでに、きめ細やかな査定ができたかというと物足りなさがあったのは事実。対面査定のため時間の制約がある中で仕方ない部分はありますが、もっとじっくりと査定がしたい。そのような中、『買うトドア』は宅配査定で、自分のやりたかったことが実現できるかもしれないと感じ、挑戦することを決めました。

-実際にやってみて、どうでしたか?

(松下)正直に言うと、うまくいかないことだらけでした。要因は様々ありますが大きくは2つで、1つめは「サービスに対する読みの甘さ」。買取件数を想定よりも集められませんでした。前職では大手としてのネームバリューがありましたが、現在はほとんど知られていないサービス。なんとかすれば集められると考えていたのが甘かったなと振り返ってみて思います。それに紐づいて損益予想も十分ではなく、戦略の甘さが結果を招いてしまったと実感しています。

2つめは、「責任感」が仇となったと。買取査定の業務経験があるのは私であり、必然的に『買うトドア』の現場責任者は私でした。買取査定のプロとして、私が進めていかなければならない。周囲には頼れないと思い込み、問題を抱え込んでしまったなと反省しています。現場のプロではあるものの、サービス運営の経験はありません。そこを認識して運営していればもっと違う結果になったのではと思っています。

-なるほど、そこがサービス運営のむずかしさですね。では、そこから『GEAR HACK』に変更した経緯をおしえてください。

(松下)これまでの『買うトドア』では、サイト内で買取査定のみを受け付けており、販売機能は別で設けていました。これを1つのサイト内で行えるように機能変更を実施。ただ、「売る・買う」を行えるのに、『買うトドア』(買うだけに言及)ではふさわしくない。そこでサービス名の変更に至りました。

『GEAR HACK』になった経緯は、スペースキーで運営しているアウトドアメディアとの関係性にちなんでいます。例えば、『CAMP HACK』を読んだ方が「キャンプしたいな」「ギアが欲しいな」と思ったときにたどり着いてほしい。メディアの受け皿的な存在として、ギアに関連することは『GEAR HACK』で解決してほしいと考え、名付けました。

-思惑通りにいきましたか?

(松下)それがいかなくて(泣)。ここも正直にお伝えしますと、状況は『買うトドア』時代とそれほど変わりませんでした。ネックだった買取件数もキャンペーンを打ちながらなんとかこなす日々。課題がどこにあるのか把握するのもむずかしく、奥山さんに相談に乗ってもらいました。後々になってわかったことですが、今まで注力していた買取件数は、課題の本質ではありませんでした。

-課題はなんだったのでしょうか?

(奥山)課題を説明するには、中古市場のビジネスモデルの理解が重要になります。例えば以下の2つの店でテントを売ろうと考えた時、小野さんだったらどちらの店に売りたいと思いますか?

-A店ですね。

(奥山)そうですよね。では逆に中古でテントを買おうと思ったときの販売価格が上のパターンだったら?

-逆に安いほうのB店で買います。

(奥山)そうなんです。これが中古市場で生まれるメカニズムで、コストをかけて仕入れて売れば赤字になるというもの。ブランディングなどの付加価値が必要とされていないんです。一方で、一般的な流通はブランディングによる付加価値で価格が決まります。普通の生地が、一流ブランドメーカーで加工されたら値段が上がるのを想像してもらえると。

あともう1点として、オンライン査定と店頭査定の違いもあります。

店頭査定では、上記のようにお客様が持ち込んでくれるので、送料コストはかかりません。商品をその場で査定して利益を勘案した買値の交渉をすればいいので、単価が低い商品であっても利益は出せます。

オンライン査定の一番のポイントは送料がかかること。『GEAR HACK』では、商品の輸送コスト(送料、梱包材)を負担していました。結果起こるのが、商品の買値よりも輸送コストのほうが高くついてしまうこと。これも赤字を生み出していた要因の1つでした。

以上の2点が、『GEAR HACK』の課題であると結論付けました。これまでは単純に査定件数が課題だと考えていましたが、本質は違っていた。件数をやるほどに赤字が発生していた、しかも『買うトドア』の時代から。これは早急に何とかしないとと思いました。

-松下さんと話す中で、『GEAR HACK』にどのような印象をもちましたか?

(奥山)上記でコストをかけるほど赤字になると説明しましたが、コストには査定にかける時間も含まれています。『GEAR HACK』ではこの査定に圧倒的にコストをかけてこだわっていました。だから、1人がさばける査定可能量も少なく、ここも赤字につながる要因となっていました。

なぜ査定に時間をかけるのか聞いたところ、「キャンプ場でお客様をがっかりさせたくないから」と。自分たちが売ったテントが万が一使えなかったとき、お客様のその体験は最悪なものになってしまう。それは絶対にしたくないと。それを聞いて、このこだわりがこの事業の神髄であるようにも感じました。

-そのこだわりが、強みになると。松下さんはどう思いました?

(松下)私は当たり前にやっていたことだったので、改めて奥山さんから指摘されて驚きました。

(奥山)だから『GEAR HACK』は率直に言うと、“がんこ親父のビジネス”ですね。がんこ親父が、損益考えず手間暇かけてこだわりぬいて作ったものを、なんのアピールもしないで市場と同等の値で売っている。そんなイメージを持ちました。ぶっちゃけて言うと、「何やってんだ!」って思いました(笑)。

『買うトドア』時代からベースとなっていたのは、次の人がちゃんとキャンプを楽しめる商品を売りたいという想い。それって、スペースキーのバリューの1つ“For Users / For Society”につながってくるなと思いました。実を言うと、このサービスの立て直しを考えたとき、お手上げに近い状態だったんです。そのようなときに松下さんが何気なく、一貫してきた想いを聞いて、救いを見出した気がしました。これこそがサービスの価値であり、本質だと。であれば、きちんと伝えてその想いに価値を感じてもらわなくてはいけない。これが、『UZD』へとリブランディングしようと決意した分岐点になります。

『UZD』が存在する価値

-あらためて『UZD』で伝えていきたいことはなんですか?

(松下)中古品は安かろう、悪かろうではありません。ちゃんとした使い方をすれば、機能はそのままに新品よりも安く手に入れることができます。ただ、中古品を買うって「本当に使えるのか」「壊れていないか」など、不安な要素も多いのは確か。そこに査定という我々が介入することで、安心感や信頼感が生まれるのだと考えています。不動産がそうであるように、中古ギアも吟味して買ってほしい。『UZD』で全く新しい中古販売の価値提供をしていきたいと考えています。

-取り組みの中でお客様が「ちゃんと安心して使えるものを求めている」と確信できたことはありますか?

(松下)キャンプ場(RECAMPしょうなん)で実店舗販売のテスト運用をしているのですが、お客様の反応からもその端々が感じられます。とても興味をもって下さったり、「これ中古品なの?」と驚くような声をいただくこともあります。

RECAMPしょうなんは、千葉県柏市の手賀の丘公園内に位置していることもあり、公園に遊びに来たついでに『UZD』の店舗に寄っていただくお客様も多くいます。これから始めたいと思われるお客様も多く、つい先日来店されたお客様は「これからキャンプをはじめたいからテントを探していて。一番高いものから見せてくれませんか?」と。中古品であれば安いものほど状態が悪いはず、であれば状態のいいものを買いたい。お客様のその発言で、安心して使えるものへのニーズがあると確信しました。

(奥山)安心して使えるものがほしい、そう思っている人はいるはず。ただ、どれだけ存在しているのかは見えず、そこは根拠が持てず不安に考えていました。ニーズはあるはずだから踏み切りたい気持ちと、きちんと確証をもってから進みたい気持ち。少しでも確証を得たくて『UZD』に寄せられたお客様からのメールを読みあさっていたところ、見つけたのは「キレイな状態で届きました!」「安心して使えそうです」の声。これらを読んで、自信をもつことができました。

-実際のお客様の声が背中を押したんですね。最近取り組んでいることについて、おしえてください。

(松下)1つは、オフライン販売です(先ほどのRECAMPしょうなんの例など)。目的は、オンラインへの送客としての機能、また、オンラインだけだと伝わりにくい“世界観”を伝える場としての機能を想定しています。実店舗に来ていただいて、がんこ親父(松下)と話してもらえれば、『UZD』の伝えたい想いや世界観に少しでも共感してもらえるはず。ただおしゃべりしに来てもらうだけでもいい。関係値を作って、『UZD』のファンになってもらえると嬉しいですね。

2つめは送客先の整備として、ECサイトの構築に着手しています。これまでは既存のECサービスに則って販売していましたが、『UZD』は付加価値もプラスした新しい価値提供をしていきたいため、それを実現するためには独自のECサイトが必要となると考えました。『UZD』で売る価値、買う価値を提示し、その理念に共感した人が利用するサイトにしたいと考えています。

(奥山)まだ構想段階ですが、今後はアップサイクルにも取り組んでいきたいです。アップサイクルとは、リメイクなど(廃棄せずに)全く新しいものに作り変えること。

アップサイクルとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること。 耐用年数を越えたソーラーパネルをテーブルとして利用したり、擦り切れたタイヤをカバンに作り変えたりと、アップサイクルは家具業界からファッション業界など、さまざまな業界で注目されている。 ...
https://ideasforgood.jp/glossary/upcycle/

例えば、どうやってももう使えないテントは解体して、生地をリメイクしてエコバックに作り変えて販売するなどです。大量に展開するものではありませんが、“ギアが、その生命を使い切れるように。”という『UZD』のコンセプトを前提とすると、アップサイクルのような活動も必要になってくるのでは。これは、『UZD』としてこういう価値を出していこうとみんなで話し合って決めました。『UZD』として当然やるべきだよねと、みんながベクトルを統一して向かっていっている。

現場からの意見やアイデアをもっと取り入れて、『UZD』らしい、『UZD』にしか出せない価値を出していきたいです。

『UZD』の未来

-『UZD』の目指すところをお聞かせください。

(松下)実店舗でお客様とコミュニケーションする中で、手ごたえを感じています。『UZD』の価値が伝わっている瞬間を目の当たりにし、この瞬間をもっと広げていきたい。もっとたくさんのお客様に、ギアを通じた体験価値を提供していきたいです。オンライン・オフライン両面での強みを活かし、『UZD』としては価値をより多く発信していく。『UZD』には一般の店舗にはない、1点もののギアも取り揃えています。たくさんのギアと触れあって、お客様ごとに楽しいキャンプを体験していただけたら嬉しいなと思います。

(奥山)どのようなサービスでも、「やりたい」という強い想いを持った人がやるべきであり、僕がサポートさせていただくなら、その想いを最も大事にしたいと考えています。『UZD』は松下さんの想いが詰まったサービスです。その想いは誰かの課題であり、世の中のキャンパーにとっても価値になるはず。その“想い”をビジネスの形に整えるのが僕の役割。これからも松下さんや『UZD』のメンバーの「やりたい」という想いをサポートできるように尽力していきたいです。

(松下)日本には、キャンプをやってみたくても始められない人がまだ多くいると思っています。私が店舗でお話させていただいた中でも、様々な理由で遠慮したり、諦めてしまっている方がいました。そのような人を少しでも減らしたい。『UZD』があることで、キャンプをはじめるハードルが下がって、はじめる人を増やしたい。『UZD』には私が想像していたよりも大きな可能性があると感じています。より多くのお客様の声を聞いて、日本でキャンプを心から楽しむ人が増えるように、もっと努力していきたいです。

-『UZD』の世界観が日本中に広がる日を期待しています。ありがとうございました!


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