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CEOブログ#1 なぜ木材の価格は不透明なのか

森未来 代表の浅野です。
弊社では、建築家 / インテリアデザイナー向けに木材の提案から調達をしています。その際に、私たちでも知りえなかった木材業界の課題や、あまり表にできなかった木材業界の裏側をお伝えできればと思い、ブログを始めました。木材産業に興味・関心がある方はご一読いただけばと思います。

建築家やインテリアデザイナーの方とお仕事をしているとよく耳にするのが「木材は価格がわかりづらい」という声です。それは私たち専門の木材コーディネーターでも感じる時があります。 内装設計の打ち合わせの際、私たちの持っている木材データベースにも入っていない特殊な材の調達を頼まれることがあります。 その際は、弊社ネットワークの中から持っていそうな材木屋に在庫がないかヒアリングをします。大量に材木を保有している材木屋さんが多いため、数社あたれば大抵の木材は見つかります。 難しいのは、価格です。

例えば「このブラックウォールナットはいくらでしょうか?」と聞くと、 「いくらまでなら出せるの?」あるいは、「いくらがいいかな~」と返ってきます。もちろん設計者からおおよその予算感は伺っていますが、予算ありきではなく、

・乾燥状態
・節や割れのあるなし
・どれぐらい在庫しているか...

を見極めて、材木屋の相場を理解した上で「〇〇円ぐらいでどうでしょうか?」 と交渉します。 また、当社は同じ樹種、寸法の木材でも複数社見積りを取ります。 「他の材木屋さんだとだいたい〇〇円ですね」と言ったりもします。 これらの交渉により、数十万円値段が変わることはざらにあります。

とりわけ価格妥当性が分かりにくいのが、寺社仏閣や料亭等に使ういわゆる「銘木」類。弊社で以前、料亭の太鼓橋に使用する木材の調達をさせていただいたことがありました。このケースもヒノキの有名産地を始め複数の材木屋さんに問い合わせしました。

ヒノキを専門としてない材木屋さんからはとんでもない見積が来ましたが、幸いにして、銘木業からプレカット業に業態変更した工場に質の良いデッドストックを見つける事が出来たため、材料費を大幅に下げる事ができました。

なぜ、このような価格設定がまかり通ってしまうのか?

それは、業界が閉鎖的なため、市場経済と切り離されてしまっているからと考えています。 例えば、タイルメーカーであれば、メーカー同士の競争があります。不当に高いメーカーは当然注文されないため、市場経済から退場せざるを得なくなります。 しかし、木材業界は価格情報を公開していないため、価格比較されることがありません。また、一点物のため、買い手が価格の妥当性を見極めにくい。そのため、不当に高くなってしまう事や、あるいは良心的で安い材木屋さんが誰にも知られずに埋もれてしまっていたりします。

私は、木材業界衰退の原因は、この価格不透明性にあると思っています。 木材業界では、木材需要の低下は「和室が減った」「木を使うシーンが減った」ことが原因と言われることがあります。一方で、木を使っていただくために肝心な価格情報へはアクセスしづらく、ようやく入手できた価格も不透明だったりする。安心明朗な価格かつサンプル送付も素早い他建材に比べると「木は使いづらい」「使いたくない」というのはしょうがない事だと思います。

しかし、そのような流れも変わりつつあります。上で述べたように他材木屋との比較や、相場を理解した上での交渉をすれば適正な価格になります。従来のように「木の事をわからない人は買わなくていい」というような時代から、少しずつ変化してきているのです。

多くの材木屋さんは、心から木を愛し、多くの人に木を使ってもらいたいと考えています。決して不当に値段を釣り上げて儲けようと考えているわけではありません。シンプルに、彼らも価格の相場を掴みきれていないのです。そのため、価格を公にすることをためらっていました。

今後当社では、お預かりしている在庫データと価格情報を公開することを考えております。 使い手である、設計者が比較検討できる事は元より、材木屋さん同士が他社の価格を知ることにより、競争意識を持ってもらう事を期待しております。 良い意味で競争し合う事により、もっと木材が使いやすくなっていく。

そのような流通の構築が、適正な木材価格を生み出し、ひいては日本の森林にも適正なお金が戻る、そんな未来を想い描いています。

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