データとAIでカスタマーサポートを変革するRightTouch、シリーズAラウンドで8億円の資金調達を実施し累計調達額は14.2億円に |株式会社RightTouch
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※この記事は2025年6月に『RightTouch公式note』に掲載した記事を転載しています。
こんにちは、RightTouchでデザイナーをしているkim(@5o5o_wagon)です。RightTouchは先日、プロダクト3周年記念を迎え、この度シリーズAの資金調達を行いました。
3周年記念と資金調達を記念して、RightTouchではリレー形式でのブログ投稿を行っています。
今回は、私自身がプロダクト開発やデザインの仕事において「大切にしている考え」について、お伝えできればと思っています。
完全に個人的な感覚として育まれてきたものですが、私がRightTouchのプロダクト開発に関わる中で、少しずつその視点が会話に、設計に、そして意思決定に現れ、もしかするとプロダクトのDNAの一部となりはじめているかもしれません。
ここで改めて言語化することで、社内でも、社外でも、この考えが多少なりとも誰かに影響を与え、プロダクトを通じた"良い関係"が少しでも増えていく。そのきっかけになれば、とても嬉しく思います。
プロダクト開発に関わる人は「それってユーザーのためになってるの?」と誰かが問いかける瞬間を一度は目の当たりにしたことがあるのではないでしょうか?
「ユーザーのためにプロダクトをつくる」
これはとてもまっとうな言葉に聞こえます。むしろ、それ以外の目的ってあるの?とさえ思える。
私も例に漏れず、多くの時間をこのテーマに費やしてきた一人です。私がこのテーマに出会ったのは大学生時代に遡ります。
2年生の頃、製品デザインのコースを専攻していた私は必修科目の1つとしてなんの気なしに情報デザインの演習授業を受け、そこでたまたまHCD(人間中心設計)というアプローチに出会いました。
当時自分の中にまだより所となる軸が何もなく、「デザインってよくわからないなー」と思っていた私にとって「”誰かのために”モノや体験を考える」という思想は、それまで自分がずっと好きだった“つくる”というフワフワしたものから突然スッと足が生え、大地をしっかりと踏みしめながら歩み出したような感覚がありました。
また、モノの構造を組み立てる面白さに加え、それを支える意味を組み立てるおもしろさにも気づかせてもらいました。
火がついた私は大学院でさらに研究をしてから社会人になり、デザイナーとして10年近く、あらゆる仕事を「ユーザーのため」にしてきました。
ただ、それらの仕事を通して見えてきたのは、特にプロダクトデザインにおいては「ユーザーのため」をより直接的に行おうとすればするほど逆にユーザーに価値を届けづらくなっていくという構造です。
これはデザイナーにとっては当たり前の視点・気付きかもしれません。
ただその「ユーザーのため」という圧倒的善意の中にある危うさと、「ユーザーのため」の先にあるデザインの要について、改めて思考を巡らせてみたいと思います。
今までユーザーリサーチなどの多くの顧客接点を通して「ユーザー体験・視点」を手に入れようとしてきました。
ユーザーにとって良いモノとは何か、どんな体験を価値に感じるのか。
RightTouchでも「全員プロダクト担当、全員顧客担当」のバリューを掲げ、全員が積極的に顧客・ユーザーを知る文化が根付いています。顧客とのミーティングに参加してヒアリングをしたり、イベントのブースに立って声掛けをしてみたり、コンタクトセンターを見学させていただいたり。
たしかにそういった活動から良い示唆を得て、プロダクト・機能に素早く落とし込むことができてきたことは事実です。
ただし、そのすぐ近くには危ない落とし穴があるように思うのです。
妄想ユーザードリブン
ユーザーの情報を元にして「ユーザーが良いと思いそう」な妄想でプロダクト・機能をつくる
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→ 結果、実際にはどのユーザーもまともに使えなかったり、使えたとしても全く気持ちのよくないモノになる
個別打ち返し型の開発
ユーザーの声に個別にそのまま応えようとしてしまう
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→ 結果、それぞれの要求に対する似たような機能やフローが増えて複雑なプロダクトになる
極端なユーザー選別
特定の顧客や困っている人を中心に据えすぎてしまう
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→ 結果、他の人にとっては煩雑だったり、不必要な負荷が増えてしまう
顕在課題ファースト
現在見えているユーザーの課題感だけに焦点をあててしまう
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→ 結果、ユーザーの元の課題は解決したが別の大きな課題を生んでしまう
こうした判断が必ずしも悪い結果をもたらすとは限りません。
でも、それらが“中途半端な視点”になっていないかをよく見極める必要があります。
そうしなければ、プロダクトは必ず歪んでいくからです。
大前提として、ユーザーの声を聞き、ユーザーのことをよく知ることはとても大切です。
ただし、いくら丁寧にヒアリングをしたり、インタビューしたり、観察をしてみても、ユーザーのことを客観的な視点で理解することしかできません。
本当のユーザーの目や体から得る感覚を、経験や知識からくる思考・行動を、そのまま自分にインストールすることはできないのです。
人は常に“自分の視点”だけがリアリティをもっています。
であれば、自分が確かに感じたリアルこそが、出発点になるべきだと思うのです。
きもちいい配置、かっこいい形、きれいな言葉、おもしろい音、うれしい体験、へんな関係など、自分だけが触れたリアリティ。
それは分析的には説明しきれないことも多いかもしれないけれど、たしかに自分の中に存在している感覚や視点です。
そうした「わたしだけのリアリティ」こそが、言語化だけではたどり着けないユーザー視点のリアルな体験に近づく手がかりになると考えています。
もちろん、主観がそのままユーザーに通用するわけではありません。
それがただの“独善”で終わってしまわないためには、いくつかのアプローチが有効だと思っています。
1. 主観を自覚する
まず「これは“自分にとって”いい」と言えること。
言い換えれば、「これは万人にとって良い」と思い込まないこと。
自分の感覚の偏りを自覚した上で、それを一つの観測点として扱うことが第一歩です。
2. 主観を丁寧に紐解く
自分の感覚を「いい」で終わらせずに、「なぜそれをいいと感じるのか?」を丁寧に紐解く。
それが他者にも共鳴しうる構造を持っているか、他の文脈に置き換えたらどう作用するか。
この主観を一般化するプロセスこそが、デザインという仕事の本質の1つと考えています。
3. 主観を寄せる
「ユーザー」や「ありのままの自分」ではなく、ユーザーの状況に近い「ある状況に置かれたときの自分」として体験・想像してみる。
困っているときの自分、疲れているときの自分、不安なときの自分。
実際に自分がその状況にならない限りは想像の範囲になってしまいますが、他者の視点よりはかなりリアルなイメージができるはずです。
4. 主観を検証する
自分がいいと思うモノを体験できるようにしてユーザーや他の人に体験させてみる。
そのモノを他の人に見せて反応を見たり、プロトタイプに落とし込んで触ってもらったり、逆に他の人がいいと思うものを見て触ってみたり。
そこで自分の主観と他者の主観がどう重なり、どうズレるのかを丁寧に観察していく。
それをしていくことで自分の主観が研ぎ澄まされていきます。
主観は強い起点になります。
でも、それを誰かと共有・共感するには、上記のような翻訳と再構築が必要です。この往復があることで、「主観=わたしだけのリアリティ」がユーザーなどの他者にとってのリアリティへ、さらに言えば世界のリアリティへとつながっていくと思っています。
真に「ユーザーのためにプロダクトをつくる / デザインする」ためには、もう一つ視点が必要だと考えています。
それは「世界を想像する視点」です。
自分の目で見たものを信じる。そこから始まるのが「主観の力」だとしたら、その“わたし”の視点をいったん脇に置いて、世界そのもののリアルな構造を想像する圧倒的な客観が必要になります。
例えば、プロダクトをつくるとき、私たちはよく「誰の、どんな課題を解くのか?」という問いから入ります。この問いは一見まっとうに見えますし、実際にプロダクト開発の現場でも効果を発揮することが多いです。
でもこの問いには、「世界」という視点がすっぽり抜け落ちていることがよくあります。なぜなら、「誰の課題か」と捉えた瞬間に、その人とその課題を個別に切り出してしまっているからです。
けれど現実には、課題は単独で存在しているわけではありません。どんなユーザーの行動や問題も、他の人や仕組み、環境、制度との関係性の中で生まれている。私たちが扱っているのは、単体の「ユーザーの課題」ではなく、モノや人が作用し合う複雑なネットワーク=“世界”の中の現象なのです。
例えば、カスタマーサポート業務において「問い合わせ件数を減らしたい」という企業側の要望に応えてFAQ導線を強化し、問い合わせ導線を奥に隠す施策を行ったとします。一見すると企業にとっての課題は解決されたように見えるかもしれません。でもその裏で、本当に問い合わせしなければ問題を解決できない生活者が大きなストレスを抱えているかもしれない。
このとき重要なのは、「どちらの課題を優先するか?」ではなく、「そのふたつの現象が、どんな関係性の中で生じているのか?」を冷静に見つめることです。「ユーザー」や「課題」という枠を超えて、外に広がる関係性を見つめ直す視点があれば、世界の構造自体の歪みに気づくことができるかもしれません。
このような構造的な視点を持つには、目の前で起きていることだけでなく、その背後にあるつながりや因果、そして時間を超えた影響範囲まで想像する力が必要になります。こうした想像力は、ただの空想ではなく、構造の整合性を保ちながら描く力、つまり“リアリティのある構想”と言えるかもしれません。
私はこの感覚を、しばしばSF作品に重ねて考えます。
例えば『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』では、テクノロジーが社会制度や倫理観にどう作用するかが緻密に描かれていますし、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では時間旅行が家族関係や個人の生き方に与える影響がユーモラスに表現されています。『スター・ウォーズ』の世界では、テクノロジーと信仰が並存し、それぞれが人間や社会の在り方に深く影響を与えている。
こうした作品に共通しているのは、「これはフィクションだけど、まるで本当に存在している世界の一部のように感じる」ことです。プロダクトのデザインも同じで、目の前の要望や機能要件だけではなく、それによって立ち上がる“世界”全体を、リアリティを持って構想する必要があるのです。
このようなリアルな構想には、見えていないものを想像する力が欠かせません。
プロダクトやユーザーの課題を考えるとき、私たちはよく目に見えている情報だけをもとに判断しがちです。それはまるで、地上から見える月の表面だけを見て「月とはこういうものだ」と決めつけてしまうようなものです。
けれども月には裏側があり、そこにも地形があり、重力があり、同じように世界が広がっています。月の全体像を知るには、見えていない側の存在を前提に想像することが必要です。
プロダクト開発も同じです。目の前のデータやユーザーの声は「月の表側」にすぎません。その背後にある感情、文脈、関係性、さらには時間を超えて変化する構造の連なり。それら「裏側」を想像できるかどうかで、プロダクトのあり方は大きく変わってきます。
わずかに得られた観測点から、見えない構造を想像で補うこと。それが、プロダクトが置かれる“世界”のリアリティを支えるのだと思います。
例えば、私たちが生み出したモノを使った人の仕事はどう変わるのか。生活の中でどういう感情が芽生えるのか。ある人がその体験を他の誰かと共有するとき、どんな関係性が生まれるのか。そうした“間接的なつながりの先に広がる世界”を想像してはじめて、デザインは社会や文化にとって意味を持ち始めるのだと思います。
“世界”の視点に立ったとき、プロダクトをつくる / デザインという行為そのものも再定義されます。プロダクト開発やデザインにおいては、しばしば何かを「足す」ことで課題を解決しようとします。でも、世界はバラバラの課題に対して機能を追加していくような“足し算”だけでは成り立っていません。ひとつ何かを足すことで、他の関係性が壊れたり、負荷が偏ったりする。
だからこそ、ときには「足す」よりも「引く」こと、あるいは「何もしない」ことの方が良い結果をもたらす場合もあります。デザインとは、“世界に何を置くか・置かないか”の選択そのものであり、つくることだけがデザインではないのだと思います。
こうして主観からはじまり、関係性を想像し、そして置かれるべき構造としてのリアリティを描いていく。その往復の中で、プロダクトの意味と位置づけが決まっていくように思います。
「ユーザーのため」という善意を本当にカタチにしていくには、目の前の声に応えるだけでなく、主観的な身体感覚と、構造的な想像力の両方を持って世界と向き合うことが必要です。リアリティとは、主観と客観を何度も往復しながら、関係性の中に浮かび上がってくるものなのです。
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