※この記事は2025年6月に代表の野村が『RightTouch公式note』に掲載した記事を転載しています。
「いつかはエンタープライズセールスをやってみたい。でも、今の自分にはまだ早いかもしれない。」
そんな風に、どこかで選択肢から外してしまっている人は少なくありません。 高単価・長期商談・複雑な意思決定構造……。未経験から挑戦するには難しすぎる、そう思われがちな領域です。
けれど本当にそうでしょうか?
いま、エンタープライズセールスの現場では「未経験から一流が育つ環境づくり」が始まっています。必要なのは、才能ではなく、育てる構造と文化です。
本記事では、RightTouchが実践している「未経験から一流が育つ7つの条件」を紹介します。
営業未経験の若手はもちろん、コンサルティングやSIのプリセールスなど、顧客課題に近い職種からキャリアチェンジを考える方にも、本記事で紹介する7つの条件は強力な羅針盤になるはずです。
また、これからエンタープライズ攻略に取り組もうとする経営層やリーダーの方には「育つ環境をいかにつくるか」の参考としてお届けします。
環境が人を育てる。そして、環境は意志を持って設計できる—その前提に立つことから、すべては始まります。
条件1:Land & Expandの“型”がある
かつてのエンタープライズセールスは、単価が高く、導入までに長い時間と決裁プロセスを要する「一発勝負」の世界でした。未経験者がそこに挑むには、あまりにも難易度が高すぎたのです。
しかし、SaaSの登場により、その構造は大きく変わりました。スモールスタートが可能になり、今では「どうやって入り口を設計するか」が勝負の分かれ目になっています。
RightTouchでは、「最初の導入(Land)でどんな課題を解くか」「どの部署から入るか」「導入後すぐにどんな価値を出せるか」といった設計を、徹底して磨き込んでいます。このLandの成功が、その後の拡張(Expand)を自然につくるからです。
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「Land& Expand – 大型商談の受注には欠かせない営業手法」Gainsightより
未経験者にとっても、すでにパターン化されたLand戦略を活用することで、迷わずにスタートを切ることができます。これは属人的な“営業の勘”ではなく、再現性のある型です。
Land & Expandは、一流営業の秘訣であると同時に、育成のための戦略でもあるのです。
条件2:大企業の“解像度”が組織にある
エンタープライズセールスの難しさは、誰にどう提案するか以前に、「組織がどう意思決定するか」を理解できるかどうかにあります。
大企業では、予算は年度の初めに一括で決まることが多く、その多くは中期経営計画や年度の重点テーマに基づいて割り振られます。
つまり、年度末に営業をかけても「来期予算にはもう入っていない」と断られる。そんな経験をしたことがある方も多いはずです。
だからこそ、単に顧客と接点を持つだけでなく、“予算が設計される前のタイミング”に入り込む視点が欠かせません。
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筆者作成
加えて、提案が組織内でどう回るかを読み解くためには、「誰が影響力を持っているのか」「推進役となるchampionをどう見つけるか」といった視点も重要になります。(詳しく知りたい方は下記のnoteもご参考に)
これらを属人的な経験値に頼らず、チーム全体で共有し、仕組みとして再現できるかどうかが、未経験者を成長させる鍵になります。
条件3:顧客に“学ぶ場”がある —ドメインエキスパートになる環境
エンタープライズセールスの真価は、提案書の巧緻さより、顧客の現場が頭の中に鮮明な映像として再生できるかに懸かっています。そこに立てば、課題も解決の筋道も自然に見えてきます。
その映像を得るために、私たちは現場見学、ユーザー会、懇親会など顧客から学ぶ場を日常へ織り込んでいます。
たとえばコールセンターでオペレーターの画面越しにクリックの手間を数え、どの瞬間にストレスが生まれるかを五感で掴む―教科書では絶対に拾えない一次情報なのです。
こうした見学の体験は、提案の引き出しとして生きてきます。
新人でも「通信業のセンターでは、契約変更フローで顧客とオペレーターの画面が食い違い、対応が長引いていました。御社は損害保険ですが、契約変更の導線で構造も近い箇所があり、同じような課題がありませんか?」と問いかけられるわけです。
現場映像→洞察→他社への仮説提起 学びが説得力へ変わる瞬間です。
条件4:セールスの“難易度設計”がされている
エンタープライズ案件は、難易度を見誤ると商談が長期化し、人も予算も摩耗します。だからこそ「案件の段階づけ」と「アサインのルール化」が不可欠なのです。
まず案件を〈新規 / 既存〉 × 〈実績プロダクト / 新規プロダクト〉の4象限で整理し、さらにラージエンタープライズか否かを重ねて計8パターンに分けます。
担当指針はシンプル。
・オンボーディング中(3ヶ月前後):
 既存 × 実績 × ノンラージで勝ち筋を掴む
・オンボーディング直後(3〜6ヶ月後):
 新規 × 実績 × ノンラージに挑戦する
 既存 × 実績 × ラージも挑戦する
・成長加速期(1年後):
 新規 × 実績 × ラージで強い営業力を体得する
・プロフェッショナル(2年後):
 新規 × 新規プロダクト × ラージで事業開発力を身につける
組み合わせを言語化して共有するだけで、誰もが現在地と次の挑戦領域を直感的に理解できます。こうして“半歩先”の案件を追い続けるリズムが生まれ、挑戦・学習・成果が滑らかに循環するのです。
条件5:セールスノウハウが“可視化”されている
エンタープライズセールスには、予算編成の年次サイクル、決裁者への上申フローなど大企業固有の知識が欠かせません。私たちはそれらをノウハウとして、Notionに蓄積しています。
たとえば、下記のような内容です。
・予算策定スケジュール:
年間予算作成スケジュールからbackcastして営業活動の羅針盤になるもの
・決裁者アプローチ:
商談中にいかに早くchampionにアプローチできるか、そのノウハウを記載したもの
・上申ナレッジ:
上申する際の稟議資料に含めるべき内容
各notionのコンテンツには 「アンチパターン」 を必ず添え、読者が自分の営業活動と照らし合わせて落とし穴を確認できるようにしています。
また、提案メールや初回ヒアリングでそのまま使える具体的なスクリプトも併記し、読んだその場で実践に移せる設計にしています。
これはあくまで一部。下記のようなエンタープライズセールスに限らないセールスノウハウも極力言語化しようと努めています。
属人的な暗黙知が共有財産へ変わり、未経験でも「自分だけ知らない」状態にならないわけです。必要なときに必要なノウハウへ即アクセスできる環境は、組織全体の学習と成果の速度を一段引き上げるのです。
条件6:チームセリングの文化がある
エンタープライズ商談では、スタートアップであっても「会社の総合力」を正面から評価されます。財務・IT・セキュリティの社内プロが審査席に並び、こちらの帯同メンバーまでもが提案品質の一部と見なされるからです。
そこで私たちは、課題の深掘りやROI試算にはCS、導入設計やセキュリティチェックの核心を担うIT担当 / プリセールスを初手から巻き込む。そして必要メンバーを即座に帯同させる柔軟さが、商談を進める前提になるのです。
この巻き込みを支えるのが案件相談ホワイトボード・ミーティング。営業以外の社内メンバーも集まり、案件概要を共有した上で遠慮なくリスクを突っ込んでもらいます。
「導入手順が曖昧で、情シスが中心となる段取りが伝わっていないのでは?」
「検討を取りまとめているのは佐伯さんだが、実際のキーマンは今野さんかもしれない。どう巻き込むアクションをうつ?」
バイアスを外した指摘が次々に飛びます。
合言葉は「スピルバーグせよ」─名監督がシーンごとに専門家を招くように、最適なメンバーを瞬時に決めます。
相談→即連携→リスク洗い出しの循環を高速で回し、営業は“社内を動かす力”を実地で習得できるのです。それが、プロ揃いの大企業に「この会社なら任せられる」と思わせる決め手になるわけです。
条件7:失敗を許容する文化がある
大企業相手の商談では、萎縮しない姿勢が成果を分けます。「挑戦と初回の失敗は歓迎、同じ失敗を二度すれば本気で叱る」ことが重要になります。失敗を試行の証とみなし、血肉にするためですね。
商談はどんなフェーズでも頻繁に行うのが案件レビュー。上司とチームメンバーが率直フィードバックを投げ込みます。
「この質問が曖昧で稟議のイメージが伝わらなかった」「次は導入フローを図解してみよう」―具体的な改善案に絞ることで、未経験でも“次の一手”を即座に持ち帰れることができます。
失注時は定期的にクロスファンクションなレビューを実施し、営業・CS・プロダクトが同じテーブルで原因を深掘りします。
営業だけで振り返ると「根性論」で終わりがちですが、導入フローの複雑さやプロダクト仕様の誤解など、組織的課題まで顕在化させる狙いです。
こうして挑戦→率直FB→学習→再挑戦のループが回り続けます。質問や相談は歓迎、失敗は糧―この空気がある限り、メンバーは萎縮せずに次の高難度案件へ踏み出していけるのです。
最後に
エンタープライズセールスは「選ばれた才能」ではなく、育つ構造と文化が生み出す―それが本稿で示した7つの条件の核心です。
1. Land & Expandの型
2. 大企業の解像度
3. 顧客に学ぶ場
4. 難易度設計と明快なアサイン
5. セールスノウハウの可視化
6. チームセリングの文化
7. 失敗を許容する文化
▸ 未経験のあなたへ
大企業を動かすセールスは、才能より 「育つ構造」 で決まります。
- エンプラセールスがまったくの初挑戦なら、まずは既存顧客 × 実績プロダクトのような “勝ち筋” で手応えをつかむ──そんな段階設計がある会社を選んでください。
- コンサル / SIプリセールスなどからキャリアチェンジを考えるなら、課題仮説・要件定義のスキルをLandの設計や導入提案に横展開できる学習ループがあるかをチェックしましょう。
どちらのルートでも、挑戦 → 率直フィードバック → 再挑戦が高速で回る環境なら、数字責任の手応えと「総合力で顧客を動かす醍醐味」を最短距離で味わえます。
転職先を見極めるときは、ここで紹介した7つの条件を照らし合わせ、自分が伸びる土台が整っているかを確認してみてください。
▸ 経営層・リーダーのあなたへ
7つのうち、まず1つでも仕組み化すれば組織は動き始めます。人数やフェーズは関係ありません。仕組みが人を伸ばし、人が再び仕組みを磨く循環を、ぜひ自社でも設計してみてください。
— 才能より環境
— 個人戦よりチーム戦
— 失敗は咎めるものではなく、次の成長投資
この3つの前提が整ったとき、エンタープライズの扉は思いのほか軽く開きます。次にその扉を押し開けるのは、この記事を読み終えたあなたです。
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