データとAIでカスタマーサポートを変革するRightTouch、シリーズAラウンドで8億円の資金調達を実施し累計調達額は14.2億円に |株式会社RightTouch
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https://righttouch.co.jp/news/FpF1waA5
※この記事は2025年6月に『RightTouch公式note』に掲載した記事を転載しています。
こんにちは、RightTouchで『RightVoicebot by KARTE(β)』(以下RightVoicebot)というボイスボット(※)プロダクトの事業推進を行っている武藤です。RightTouchでは下の名前のnaoya、一部のメンバーからはたまに兄さんと呼ばれています。
武藤尚也 / Naoya Muto
慶應義塾大学経済学部卒業後、2014年に新卒でリクルートホールディングスに入社。入社後は大規模サービスのグロース、エンジニアリング、新規プロダクトの立ち上げなどに一貫してプロダクト開発に従事。2019年にプレイドに参画後は主に0→1、1→10フェーズでの事業推進をロールを問わず担当。現在はRightTouchにて、『RightVoicebot』のプロダクトマネジメントおよび事業推進をリード。お笑いと音楽とバスケが好き。
※主にAIを活用した音声ベースの電話自動応答システムのこと。チャットボットの音声版。
RightTouchは先日、プロダクト3周年記念を迎え、この度シリーズAの資金調達を行いました!
3周年記念と資金調達を記念して、RightTouchではリレー形式でのブログ投稿を行っています。
本記事では、私が現在メインで携わっているRightVoicebotのプロダクトによって、”世の中の電話問い合わせ体験をアップデートしたい”という思いを語らせてください。
はじめに
誰もが感じる電話問い合わせのモヤモヤ
なぜ電話体験は変わってこなかったのか?
1. 音声認識・音声合成技術のハードル
2. 市場構造の壁
3. 顧客体験への懸念
長年続いてきた「IVR」体験
現在、変化の波が押し寄せている
市場の変化
技術の進化
生成AI時代における音声体験とは?
ストレスのない会話体験
マルチモーダル、マルチチャネルの活用
ボイスボットtoボイスボットの体験
カスタマーサポートデータによる更なる進化
電話問い合わせ体験の再発明をしたい
さいごに
皆さん、カスタマーサポートへの電話問い合わせで、こんな残念な経験をしたことはありませんか?
自動音声のガイダンスを聞き、ボタンを押し間違えて最初からやり直し、ようやく選択が終わったと思ったら「ただいま混み合っております」というアナウンスが流れて延々と待たされ、待った末にようやく有人オペレーターに繋がっても「その問い合わせは対応できません」と、たらい回しにされる経験...。
SiriやAlexaのような音声での対話型インターフェースでのやり取りが日常化してきた現代においても、電話問い合わせの体験に関してはまだまだアップデートされていないと思うことがよくあります。
電話問い合わせの体験が長年あまり変化してこなかった背景には、大きく3つの理由があると考えています。
まずは、技術的なハードルの存在があります。音声でやりとりを行うためには、ざっくりと音声認識(発話内容を認識する)と音声合成(認識した音声を踏まえ発話する)の2種類の技術が活用されているのですが、SiriやAlexaなどの対話型音声アシスタントが一般に普及し始めたのは2016年頃からで、それ以前は自然な会話を認識・応答できる技術は実用レベルに達していませんでした。また、カスタマーサポートの場合は基本的には電話回線を通した音声となり音声が劣化するため、認識精度がさらに低下していました。
さらに、電話応対では当然ながらリアルタイムなやりとりが求められるため、音声をテキスト化して議事録や、VoC(Voice of Customer:顧客の問い合わせデータなどの声)として活用するようなリアルタイム性を伴わないケースと比べるとその分、技術的な難易度も高くなります。
カスタマーサポート業界のシステムには独特の構造的課題があります。多くの企業は長年にわたり、大規模かつ個社ごとに独自カスタマイズされたシステムを使い続けてきました。そのため、わずかな改善でも専門のシステム開発会社(SIer)による工数確保と実装が必要となり、莫大なコストと時間がかかります。
また、コンタクトセンターのシステムはいわゆるオンプレミス(※)構成のものもまだまだ多く、初期構築・運用費の高さに加え、WebシステムであればスタンダードであるAPIでのシステム連携が難しいといった点も挙げられます。
その中でも、特に電話システムはコンタクトセンターの中核を担い、システム障害が顧客対応の停止に直結するという「ミッションクリティカル」(業務の根幹に関わる最重要システム)な性質を持っているため、このリスクの高さが、変革へのハードルをさらに高くしています。
カスタマーサポート業界における壁については代表の長崎のnoteでも触れられているので、こちらも読んでみてください。
※サーバーやソフトウェアなどのITインフラを自社で保有し、自社で構築・管理・運用する形態。
最後に、こういった技術を導入することによる顧客体験への懸念があります。先述の通り、電話でのリアルタイムで自然な応対が求められるので、少しでも違和感があったり、会話がチグハグになった瞬間に顧客は離れてしまいます。
FAQ・チャットボット・メール・有人チャットなどさまざまな問い合わせチャネルがあるなかで、多くの企業は電話を「最後の砦」と位置づけています。FAQやチャットボットで解決できない問題や、緊急性の高い問題など、顧客が本当に困ったときに頼る最終手段が電話です。そのため、不完全な音声AIを導入して顧客体験を損なうリスクを避けたいという思いから、企業は慎重にならざるを得なかったのです。
コールセンターの問い合わせ体験という意味では、長年「IVR」の仕組みが採用されてきました。IVRはInteractive Voice Response(インタラクティブ・ボイス・レスポンス)の略で、電話の着信時に自動で音声ガイダンスを流し、番号入力によって適切な部署やオペレーターに接続するシステムです。「新規契約の場合は1を、契約変更は2を、解約は3を、もう一度聞く場合は9を、、」といった、あの体験です。
このIVRは顧客と企業の双方にとって、以下のようにさまざまな課題があります。
ユーザーにとっての課題
企業にとっての課題
しかし、これらの課題が認識されていたものの代替手段がなかったために、IVRによる体験が長年続いてきました。中には、IVRの顧客体験の悪さを認識し、IVRを廃止して直接オペレーターに接続するように方針転換した企業もあります。
しかし、ここ数年で電話問い合わせの体験を根本から変えるような技術革新と市場の変化が起こり始めています。
オンプレミスからクラウドへ
これまで企業内に設置されていたCTI/PBXと言われる電話交換システムはオンプレミスが主流でしたが、インターネット経由で利用できるクラウド型のCTI/PBXへ移行する動きがここ数年で加速しています。これによりシステムの柔軟性が格段に向上し、新しい技術の導入ハードルが下がってきています。
生成AIによる業務効率化の波
ChatGPTに代表される生成AIの登場によってあらゆる業界に大きな影響を与えているのは言わずもがなですが、特にカスタマーサポートは、生成AIの活用が最も期待される「一丁目一番地」となっていて、生成AIへの投資が活発になってきています。
音声認識・合成音声技術の飛躍的向上
生成AIの技術発展とともに、音声認識・合成音声技術のレベルは日々向上しており、基本的な問い合わせであれば、AIが十分に電話対応できるレベルに達しています。
音声認識技術のコモディティ化
技術の向上に伴い、音声認識や合成音声のAPIも充実し、これらの技術を企業が取り入れるハードルが下がりました。もはや技術そのものの優位性よりも、「その技術をどう活用し、どんな価値を生み出すか?」という視点が、より重要になってきています。
これらの変化により、自然な音声体験を構築できる環境が整ってきていると言えるでしょう。
生成AIをはじめとした技術革新によって、電話問い合わせ体験自体の総数はマクロ的には減少していくと予想されます。ただこれはあくまでも「電話」という仕組みの話であり、むしろ音声をインターフェースとしたコミュニケーションは技術の発展により今後もより増加していくと考えています。
↑のnoteにてVCの細村さんが下記のように述べています。あくまで一例ですが、こういった未来になるのではないかと自分もワクワクしています。
主なUIが「音声」になると、カスタマーサポート領域のデータとして重要な「VoC(ボイス・オブ・カスタマー)」がより集まりやすくなるはずです。現在のコンタクトセンターは必ずつながるわけでもありませんし、わざわざ人に伝えるほどではないと考えて伝えていない潜在的な「ボイス」もあるでしょう。それがAIエージェントが自動で対応してくれるとなれば、顧客もよりボイスを伝えやすくなると予測できます。
現在、企業は顧客データを持っているとされますが、その実態は属性データと購買データがほとんどで本質的な活用はまだまだこれからです。オフラインでの体験が中心のサービスでは、誰が何を買ったのか、なぜ買ったのかというデータをきちんと収集し扱えていることは稀ですし、何よりサービスをより良くするために必要になるペイン(課題)に関するデータは持てていません。
しかしながら、AIエージェントによってユーザーインターフェースが移り変われば、音声で顧客の声は自然に、かつ大量に集められるようになります。このパラダイムシフトはカスタマーサポートの領域から起こると期待していて、そうするとRightTouchが提供するプロダクトは、コンタクトセンター向けのソリューションから事業の改善に活かせる、経営の根幹を担うデータを集められるプラットフォームになる可能性があります。
これまでのボイスボットは、決められたシナリオ通りにしか話せず、途中で会話を遮ったり、不自然な応答をしてしまうことが課題でした。しかし、生成AIの活用により、より自然で柔軟な会話が可能になります。
たとえば、「すみません、やっぱり違いました」と言っても、文脈を理解して前の選択肢に戻れたり、複雑な質問でも意図を汲み取ってくれたりする、そんなストレスのない会話体験が実現できるようになってきています。
生成AI時代の音声体験は、「音声だけ」で完結するものではありません。そもそも、電話(音声)で来た問い合わせを、音声空間上ですべて解決する必要は必ずしもないと思っています。例えば、Web上のマイページでサクッと解決できたり、画像や動画などの視覚情報とともにサポートがあった方が解決しやすい場合は、音声のみの対応がベストな選択肢ではないこともあります。そのときに鍵となるのがマルチモーダル/マルチチャネルです。
マルチモーダル
電話で話しながら、同時に画像や動画などの視覚情報を活用できるようになります。例えば、「この商品の使い方がわからない」という問い合わせに対し、AIが電話で説明しながら、同時に使い方を解説する動画のリンクをスマートフォンに送るといった体験ができます。
マルチチャネル
電話での会話中に、チャットやWebサイトにスムーズに移行できる「チャネルをまたぐ体験」が可能になります。電話で話していた内容がそのままチャットに引き継がれたり、ウェブサイト上の資料に誘導されることで、より効率的で快適な問題解決が実現します。
やや未来的な話に聞こえるかもしれませんが、「人間がAIに問い合わせ内容を伝え、そのAIが別のAIに問い合わせを行う」という、AIエージェント同士のやり取りが増えていく可能性があります。実際にそのような事例も出てきています。
たとえば、「〇〇レストランに今週末の予約を取って」と自分のAIアシスタントに頼むと、アシスタントがレストランのAIに電話をかけ、予約の空き状況を確認し、予約を完了させるといったことが可能になるかもしれません。
実際にGensparkには「電話代行」という機能があり、問い合わせ内容をプロンプトとして保存しておくと、エージェントが架電することができます。
Gensparkの電話代行
以下の例では、ボイスボットで受付している先で実際にgensparkのエージェントがレストランの予約をしています。
完全な実現に向けては依然としてハードルがありますが、こうした体験が当たり前になる未来もすぐ近くに来ているかもしれません。
生成AIの性能は、言わずもがな学習データの質と量に大きく左右されます。カスタマーサポート領域には、以下のような多様かつ貴重なデータが存在しています。
カスタマーサポートデータと活用例
技術自体がコモディティ化されていくなかで、これらのデータをいかに早く収集し、AIの精度を継続的に高め価値に変換していくか、が今後の鍵になると思います。活用することで、従来型のボイスボットでは対応できなかった範囲をさらに拡張し、より多様なユースケースで高精度な自動音声体験を提供が可能になります。
元来、音声は人間にとって最も自然でリッチなコミュニケーション手段の一つであり、市場/テクノロジー両面の変化により、大きなティッピングポイントを迎えています。
RightTouchはカスタマーサポート領域におけるコンパウンドスタートアップとして、業界のインフラとなることを目指し複数のプロダクトを展開してきました。
まだまだ道半ばではありますが、最新の生成AI技術と、プロダクトの活用によって得られるカスタマーサポートデータを掛け合わせることで、長年あまり変化のなかった電話での問い合わせ体験そのものを再発明し、世の中の新しいスタンダードにしていくことができると思ってます。RightVoicebotを通じて、このような世界の実現を本気で目指します。
最後まで読んでいただきありがとうございました。このように、現在の生活者の体験を根本からアップデートできる機会がこの業界には数多くあります。現状のあらゆる負の体験をアップデートし、それを次の世の中のスタンダードにしていく、そんな体験をぜひ一緒に実現していきましょう。
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