40年以上前の1978年(昭和53年)に出た本ですが、エンジニアリングやマネジメントに関わる人はもちろん、全ての人が(少なくとも現代日本人は)一読しておく価値の有る1冊だと思います。
最近久しぶりに同書を読み返してみて、今なお色褪せないというか、今だからこそ想いを新たにせねばならないと思った箇所が有ったので、著者の大野耐一氏の言葉を抜き書きしてみようと思いました。
今回気になった言葉は、「第五章:低成長時代を生き抜く」に出てくる「自働化」と「少人化」です。
まず「自働化」について。
(206頁から引用開始)私どもの目からみると、やれオートメーションだ、やれロボットと大騒ぎするのはよいが、その目的である「真の効率」アップにつながるのか、はなはだ疑問がもたれたのである。(中略)ただ時流に乗ることばかり考えていると、あわてふためくのは目に見えていたのである。(引用終了)
この下りは読んでいてギョっとしました。当時は工作機械がすごい勢いで高機能化・高性能化している時代で、生産性を高める設備を導入するのが常識だと思っていたからです。
この後にその理由が丁寧に解説されています。
時間辺りのアウトプットがでかい新型機械は、間違えたり故障したりした時の無駄も大きい。それをフォローするために人間を貼り付けておかねばならず、原価の削減に貢献しないのだと。
この問題を解決するために作られた言葉が「自働化」。機械に知能を与えて、自分で異常を検知して止まるなどの対応ができることを示します。
機械を導入するなら、一つの仕事を丸ごと任せてしまえる状態を作れるか、ってことが肝要ってことですね。
そして「自働化」によって見えてきたのが「少人化」です。
(209頁から引用開始)トヨタ自工にとっても、オイル・ショック後の減産によって、増産時にはかくれて見えなかった新たな問題に直面させられた。
それは自働機というのが定員制で動かされてたことである。(中略)材料・部品の投入だけ人での作業がいる自働機は、フル生産したとき二人で動かしていたのに、50パーセント減産になっても、一人で運転できない。やはり同じように二人、たとえば大型自働機の入口と出口に一人ずついるのである。(中略)トヨタ方式がつぎに取り組んだのは定員制の打破であった。(引用終了)
n人いなければ生産ができない状態を、1人いれば量は1/nに減るけど生産はできる状態に変えていくという思想。
この考え方は、システムを作る者は忘れてはいけない考えだと思います。
『2人いなければ出来なかった作業を、ロボットのおかげで1人でできるようになった』
私達が作り出していくロボット達も、そんな風に人間の良き相棒になって欲しいと思いました。