Plott(プロット)は、IPコンテンツの企画から制作、ビジネス展開までを一気通貫で手掛けるスタートアップです。
『混血のカレコレ』はチャンネル登録者数260万人を達成。同作品の楽曲『人間E判定』は再生回数600万回を突破しました。また、『私立パラの丸高校』はKADOKAWAグループ運営の「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門にてU-NEXT賞を受賞しました。
さらに、ゲームスタジオ「Plott Games」としてゲーム分野にも参入し、2025年4月に『ドズル社』のスマホゲーム『ゴゴゴゴーストランド | ドズル社ランドを取り戻せ!』をリリースしました。
今回は、『混血のカレコレ』の楽曲『人間E判定』の制作に携わったゆかしとまほしにインタビュー。制作の進行過程やクリエイティブに対する想いを聞きました。
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IP展開事業部 音楽ライン ディレクター
社内ニックネーム:ゆかし
Plott入社以前はフリーランスとして音楽やWEBなどのディレクション業務を経験。
その後2024年にPlottに入社し、楽曲やMVのディレクション、イベントの企画などに携わる。最近はまっているのはTAK「孤独サイコ」。
ショートアニメ事業部 プロデューサー
社内ニックネーム:まほし
2021年にPlottにインターン生として入社して以来、今日まで「混血のカレコレ」運営に携わり、ストーリー編の制作進行や、サムネイルのアイデアラフなどを主に手がける。最近一番ハマっているのは「ハズビンホテルへようこそ」。
目次
「世界観や個性を表現する」キャラクターに根差した楽曲を制作する
「キャッチーさで記憶に残るインパクトを」クリエイティブに広くかかわる醍醐味とは
「好きなことを仕事にしてよかった」制作を振り返った感想と今後の挑戦について
「世界観や個性を表現する」キャラクターに根差した楽曲を制作する
── 『人間E判定』の制作のきっかけを教えてください。
ゆかし:「キャラクターそれぞれの個性を反映した楽曲を制作しよう」ということで、カレコレの主要キャラクター4名のキャラクターソングを制作することになったんです。その中のヨーメイのキャラクターソングとして制作されたのが『人間E判定』です。
楽曲の制作は、キャラクターが持つ世界観や個性を最大限に表現することを目指し、楽曲ごとにコンセプトを設定するところから始めました。
── どのようにコンセプトを決めていったのですか?
ゆかし:ヨーメイというキャラクターは、自己肯定感が低く、一見するとネガティブな性格ですが、そこが彼女の個性でもあります。
ネガティブな感情を持つことは、少なからず誰にでもあることで、だからこそ共感できる気持ちもあるのではないかと思って。その特性を活かして、「自己肯定感が低いことも悪くない、それもまた個性なんだ」と、自分の性格を肯定できる曲、というのをコンセプトにしました。
そうすることで、ファンにも「ヨーメイらしい!」と感じてもらいながら、同じようなコンプレックスを持った人たちにも共感してもらえるような曲になると考えたんです。
── 楽曲のテイストや構成はどのように決めたのですか?
ゆかし:テンポや歌詞に含めたいワードなどのイメージは、音楽プロデューサーである私が定義をしてクリエイターさんへ制作依頼をします。今回は、何度も繰り返し聞きたくなるメロディーではありつつ、ヨーメイの持つチクチクとした陰鬱な雰囲気を出したかったので、音にノりやすく、かつテンションを上げすぎないよう、抑えたテンポを意識しました。
まほし:クリエイターさんへ「ヨーメイはこういうキャラです」と、細かい設定や作品の世界観を伝えることもしています。どんなに良い楽曲でも、キャラクターイメージと一致しなければキャラクターソングとは言えません。
── 制作プロセスで特に苦労した点はありましたか?
ゆかし:苦労したのは、デモ音源の微調整を繰り返したことです。特に歌詞部分では、「キャラクターらしいワード」や「聞き手に共感してもらえる表現」を追求したくて、細かい調整を重ねましたね。
「ヨーメイは本当にこういうことを言うだろうか?」という視点で、まほし・クリエイターさんと何度も議論を重ねて、キャラクター性を深堀りしていきました。
まほし:プロデューサーとして、カレコレのキャラクターに対する理解度は深い自負があります。ただ、楽曲制作に関しては経験の浅い分野なので、歌詞としてどういったワードを使うべきなのか、どういうリズムにすればいいのかというところは、クリエイターさんに相談することになります。可能な限りヨーメイについて理解してもらいながら、ベストなフレーズを組み立てていただくために、なるべく細かくイメージをお伝えするように意識しました。
時には、「ヨーメイは、学校の教室にいたとしたら、この席に座っていて、こういう感じの話をしている子です」のような、キャラクターの特性を具体的な姿に落とし込んでいく場面もありましたね!
――「ヨーメイらしさ」をとても大切にされているんですね!
ゆかし:そうですね!そのおかげで、キャラクター性を出しつつも、みんなが心の底に持っているネガティブな感情を代弁して、共感を呼ぶような歌詞に仕上げることができました。
まほし:「ざまぁみろです」というフレーズは、ヨーメイらしくも、キャッチーで頭に残るキラーワードですよね!
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ゆかし:IPと音楽を掛け合わせて、世界観もしっかり守りながら良い曲を作ることってすごく難しいです。
私は楽曲制作の経験はあったのですが、「誰かの気持ちを代弁する」というよりも、「自分が考えたり感じたりしたこと」をベースに曲作りに携わっていたので、自分の日記帳のような感覚で歌詞を書いていました。
しかし、キャラクターをテーマにした楽曲では、キャラクターの表面上の性格だけでなく、内面の深い部分まで掘り下げて理解し、表現しなくてはいけません。これまで私がやってきた音楽制作のスタイルとは全く異なる、初めての挑戦でした。
最終的には「自分がキャラクターを一番理解する」という意識で作り込めたと思います。その結果、ファンにもしっかり届く楽曲にできたのではないかなと感じています。
「キャッチーさで記憶に残るインパクトを」クリエイティブに広くかかわる醍醐味とは
── 『人間E判定』は、歌詞だけでなく、メロディーも頭に残りますよね。
ゆかし:メロディーに関しては、「一度聴いただけで耳に残るキャッチーさ」を重視して制作しています。次々と新しい楽曲が生まれる今の時代だからこそ、「聴いた瞬間に心を掴む」「もう一度聴きたい!」と思わせる力を持ったメロディーが不可欠だと考えています。
また、曲の構成にも意識を向けています。最近の曲構成は、「Aメロ・Bメロ・サビ」といった定型を超えて、多様な形になっていると思っていて。
また、SNSではメロディーの一部分が切り取られて動画になることが多いので、どこを切り取られてもインパクトがあるようにするのが「今っぽい」曲になるポイントなのかなと思います
まほし:今回、オリジナル楽曲を使ったショート動画を制作することになっていました。その際に、同じメロディーばかりで視聴者が飽きてしまわないよう、曲や歌詞、ビジュアルも含めて「キャッチーさ」を重視しました。
そのため、『人間E判定』はどのパートも印象に残るメロディーで、さまざまなパターンの動画を制作できる楽曲になっています。
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ゆかし:「キャッチーさ」を大事にして、「すぐに覚えられるか」「頭に残るか」というところを判断するために、デモから曲を決める時も、何度も聴きすぎないように気を付けています。聴きすぎると愛着が湧いて冷静に判断できなくなるので、3回くらいだけ聴いて決めるようにしてますね。
── 「キャッチーさ」といえば、可愛らしさがありつつ、どこか毒を感じるミュージックビデオ(以下、MV)も印象的でした。
まほし:MVの中でも、サムネイルの印象を特に意識しました。配色にこだわっていて、「この曲の色」として、一目で覚えてもらえるようにカラーパレットを設計しています。
また、ファンの方にはヨーメイのストーリーを楽しんでもらえて、かつカレコレを知らない人のことにも伝わる演出になるよう意識していました。
例えば、ファンが見たら「敵」と分かるキャラも、『カレコレ』のストーリーを知らない初見の人にとってはどういう存在なのか分からず、MVを見るうえでノイズになります。そこで、ヨーメイの表情で感情表現をすることで、「このキャラクターは、この女の子に対して害を与える存在なんだな」と、背景を感じてもらえるようにしています。
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── 曲作りからMVまで、クリエイティブにこだわって制作されたんですね!
ゆかし:音楽制作やディレクションに関われるだけでなく、MVや曲名のロゴなど、さまざまなクリエイティブに携われるのは楽しいですね。音楽だけでなく、曲全体の世界観を作れることにやりがいを感じています。
とはいえ、こだわりすぎてしまうことも課題です。リリース前に「もうこれ以上直せない」と言われても粘っちゃうことがあって、自分でも気をつけたいと思ってます。でも、その粘りが良いものを生むこともあると思うので、バランスを取るのが難しいですね。
まほし:私はアニメ制作の現場にいながら、音楽やグッズなど、幅広いIP展開事業にもプロデューサーとして関われることがやりがいにつながっています。
部門を横断して、良いクリエイティブをファンの方に届けるためにアイデアを出せる環境はすごく楽しいですね!
「好きなことを仕事にしてよかった」制作を振り返った感想と今後の挑戦について
── ゆかしとまほしにとって、『人間E判定』の制作で初めてチャレンジすることも多かったと思いますが、振り返ってみていかがですか?
ゆかし:私は『人間E判定』で初めてプロデューサーとしてメイン進行を担当しました。初めてのプロジェクトで不安もありましたが、周りの人がたくさん協力してくれたおかげで、こうやって形にできたと思っています。メンバー全員が「良いものをファンに届けたい」と同じ方向を向いて取り組んでいるからこそ、こうした挑戦ができるんだなって感じます。
クリエイティブに幅広く関わることができる環境で、音楽に深くコミットすることができてすごく楽しいですね!
好きなことを仕事にすると、熱中しすぎて仕事とプライベートの境目がなくなる瞬間もあります。でも、プライベートで得たことを仕事に活かせていたり、仕事で見つけたものがプライベートでも趣味につながったり。良い意味での「境目がない」状態なんです。むしろ、好きだからもっと頑張ろうって思えていますね。
まほし:ゆかしからは「好きなことを仕事にしている」って感じが伝わってきます!私も、今担当している『混血のカレコレ』が誰よりも好きで、誇りを持って仕事に打ち込んでいます。「好きなことだから離れられない」とか、「嫌になったらどうしよう」って不安になることもありますが、そういう時は「好きだから頑張れているんだ」って考え直します。もし、将来別のIPを担当することになったとしても、「自分が大好きになれるIPを作ってしまえばいいんだ!」と思えたら、それはそれで最高じゃん?って!
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── 二人の仕事への熱い思いが伝わってきました!最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください
ゆかし:これからもっとたくさんの曲を作りたいし、いろんなアイディアを試していきたいですね。明るくてキラキラした曲から、人間関係の中で起こる感情の機微とか、妬みや嫉妬みたいなダークな気持ちをテーマにした曲まで幅広く作ってみたいです。
これからもキャラクターの世界観や個性を大切にしながら、ファンやリスナーにとって新しい発見や感動を与えられる楽曲を作り続けたいですね。