Q1:まずは自己紹介をお願いします。カメラを始めたきっかけや、これまでのキャリアについて教えてください。
イ ウンソと申します。ピースウィンズ・ジャパンには2019年3月に入社しました。出身は韓国で、大学ではペット学科を専攻していました。犬のトレーニングや基礎的な動物看護の知識を勉強していたのですが、正直に言うと、当時は机の上で学ぶことが多くて、実際の保護現場とはかなり違っていたなと思います。
就職活動のとき、たまたまピースウィンズ・ジャパンが学校に説明会に来てくれて、それがきっかけで団体の活動を知りました。当時の韓国には、保護犬を支援するような団体がほとんどなかったので、「こういう場所で働けたら、私にもできることがあるかもしれない」と思って、日本で働くことを決めました。
入社後は、シェルターで犬たちのお世話をする仕事をしていました。特に野犬が多い場所で、最初は驚きもありました。でも、日々接しているうちに、「この子たちをどうにかして守りたい」と自然に思うようになって、いつのまにか4年以上が経っていました。
カメラを持ち始めたのは、その中で「伝える仕事」に興味を持ったのがきっかけです。自分が経験してきたこと、見てきた犬たちのことを、言葉だけじゃなくて写真でも伝えたい。そんな想いから、少しずつ広報の仕事に関わるようになりました。
Q2:ピースウィンズ・ジャパンでカメラマンとして活動するようになった経緯を教えてください。どんな思いでこの団体に関わるようになったのですか?
きっかけは、現場で感じた違和感と無力感だったと思います。
「このまま何も伝えなかったら、この子たちのこと、誰も知らないままだな」って思ったんです。
私は、もともと動物が好きで、犬のこともたくさん勉強してきたつもりだったのですが、現場に出てから、「知っていたこと」と「現実」が全然違うことに衝撃を受けました。特に、殺処分の現実に触れたとき、「なにかしないと」と強く思いました。
最初はトレーニング犬舎や、介護が必要な子が多いオレンジ犬舎で働いていて、保護されてくる犬たちの姿を目の前で見てきました。人に怯えていたり、身体にケガを負っていたり……そういう犬たちが、少しずつ変わっていく様子に何度も心を動かされました。
そんな毎日の中で、「この子たちの存在を、もっと外に伝えたい」「知らない人が多いなら、私が知ってもらうきっかけをつくりたい」と思うようになって。そこから、広報の仕事にも関わるようになり、カメラを持つようになりました。
Q3:撮影する上で大切にしていることや、心がけていることはありますか?
一番は、その犬の「そのままの姿」を見てもらいたいという気持ちです。
私は、純血種も雑種も関係なく、どんな子にもその子らしい良さがあると思っています。特に、雑種の子たちは本当に個性が豊かで、同じ顔をしている子がひとりもいないんです。表情や仕草、そのときの空気感も含めて、「この子、いいなあ」と思える瞬間がたくさんあります。
撮影するときは、私自身の好みや主観が入りすぎないように意識しています。どうしても「この子かわいいな」と思うと、その気持ちが出てしまいそうになるのですが(笑)、広報の仕事としては、もっと広い視点で、「たくさんの人が見たときにどう感じるか」を大切にしています。
現場で犬たちと過ごしてきたからこそわかる空気感があるので、それを壊さず、自然なかたちで伝えられたらいいなと思いながら撮影しています。
Q4:撮影におけるやりがいや、難しさを感じる瞬間はありますか?
最初は本当に手探りでした。カメラのことはまったくの初心者で、周りのスタッフに聞いたり、ネットで調べたりしながら、なんとかやってきた感じです。
でも、「どうしても伝えたい」という気持ちがずっとあったので、続けてこられたんだと思います。勉強というよりは、気持ちのほうが大きかったかもしれません。
自分が撮った写真に反応があったときや、「この子に会ってみたい」と言ってもらえたときは、本当にうれしいです。写真を通して誰かの気持ちが動くことって、すごく大きなことだと思いますし、それが犬たちの未来につながると信じています。
Q5:カメラマンとしての活動が、保護犬たちの命や未来にどう影響を与えていると感じますか?
私が現場で犬たちと関わってきた経験は、今の広報の仕事にもすごく生きていると思います。
たとえば、少し緊張しやすい子の撮影では、無理をさせないように時間をかけたり、その子が安心できるスタッフに一緒にいてもらったり。単に「かわいい写真を撮る」だけじゃなくて、「この子に合った伝え方ってなんだろう」と考えるようになりました。
保護犬たちが新しい家族に出会えるまでの時間を、少しでも短くしたい。そのために、私は「知ってもらう」きっかけをつくる役割を担っていると思っています。
Q6:現場で感じる「チームとしての魅力」や、「この環境でこそ得られるやりがい」があれば教えてください。
ピースウィンズ・ジャパンは、本当にいろいろな活動をしている団体です。保護犬の活動だけじゃなくて、災害支援や国際支援も含めて、多様な現場があって、それぞれの専門性が集まっている感じがしています。
私自身、能登の地震支援にも参加させていただきました。韓国ではあまり災害の経験がなかったので、サイレンの音や避難所の雰囲気など、すべてがリアルでした。正直、怖さもありましたが、現場で動いている人たちの姿を見て、心が動かされました。
「現場に行く」ということの意味や、「助けること」について考える貴重な機会だったと思っています。
Q7:今後、カメラマンとしてピースワンコでどんなことをしていきたいですか?夢や目標があれば教えてください。
大きな夢というよりは、毎日の積み重ねを大事にしていきたいと思っています。
一枚の写真が、誰かの心に残って、「この子を迎えたいな」と思ってもらえるかもしれない。そんなふうに、小さなきっかけをつくれる存在でありたいです。
そしてこれからも、現場で犬たちと一緒に過ごす時間を大切にしながら、写真や動画を通して、その子たちらしさが伝わるような表現をしていけたらと思っています。