ORPHE Journal
ランニングのハウツーからシューズの開発秘話まで、地に足の着いた情報を発信する情報メディア。足元から世界を変えるスマートシューズ「ORPHE」が提供しています。
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ORPHEシリーズを開発する株式会社no new folk studioの新入社員でありながら、社会人博士として大学で研究にも取り組む鵜野裕基氏にインタビューを実施しました。
ORPHE Journal編集部:本日はインタビューよろしくお願いします。まず自己紹介をお願いします。
鵜野:昨年(2020年)の4月にno new folk studioに入社しました、鵜野裕基(うのゆうき)です。現在、no new folk studioではResearch Unitの一員として働きながら、大学院の博士後期課程に社会人博士として研究活動も行なっています。
編集部:大学院での研究について教えてもらえますか?
大学院ではスポーツ医学という分野でスポーツ、特に球技で起こる怪我についての研究をしています。バイオメカニクスといって、ヒトの動きとその時に発生する力の関係を分析して、どのような動きが怪我を起こしやすいのかなどを調査しています。
編集部:研究もスポーツなんですね。何かスポーツをやられてらっしゃったんですか?
中学生の頃からハンドボールをやっていましたがランニングも結構好きでした。身体も大きくない方なので、運動も特別できるわけではなかったのですが、中学生の3年間で長距離のタイムが伸びるのを実感できたので、楽しかったんだと思います。地域の駅伝大会のチームに入れてもらったり、高校のマラソン大会で上位に入ったり、それなりに走れたこともあって、ランニングが好きでした。
編集部:そこから研究もスポーツに関することをしようと思ったのですか?
そうですね。スポーツが本当に好きで、将来も何かの形で関わり続けたいと思っていたのと、もともとシューズにも興味があったので、シューズに関わる仕事がしたいと考えていました。ハンドボールもランニングも自分の身につけるのはウェアとシューズくらいなので、シューズは何か自分の武器みたいに思っていて、すごく思い入れがありました。高校からの進学先を考える時期に、オリンピックに向けたシューズ開発に密着したテレビ番組を見て、自分もこういった道に進みたいと思ったのがきっかけです。
実は大学では材料開発に関することを学びたいと思い、化学専攻の学科へ進みました。学部4年生の時には研究室に配属され、化学合成を行う日々を過ごしていましたが、やっぱりもっと人に近いことについて知りたいと思いました。シューズがどうやってヒトの動きに影響を与えているのかを知るため、バイオメカニクス分野の勉強をしたいと思いたち、大学院からスポーツ医学分野に移って、今に至ります。
編集部:そこからno new folk studioに入ることになった決め手はなんだったのでしょうか?
自分の興味があった仕事を、大学での研究と一緒にできる環境を作ってもらったことです。以前からORPHEというスマートシューズの存在は知っていて、興味があったので、Facebookでフォローしていました。ちょうど就職活動の時期にバイオメカニクス分野の人材を募集していたんです。ただ中途採用・転職者の募集だったので、ダメもとでお話を聞かせてもらおうとメッセージを送ると、ぜひお話しましょうと返事をいただきました。
シューズもいろんなバリエーションがあったり、カスタムメイドのインソールがあったりと、より個人に最適化されたものがユーザーに届けられる仕組みが増えていることは感じていましたが、ユーザーの手に渡った後のサポートがあまりないと思っていました。選んだシューズが本当に自分にあっていたのか、自分の動きがよくなったのかがわからないままであることに少し疑問を持っていて、何かそこでサポートできるものがないかと個人的に考えていました。ORPHEはセンサやアプリを通じてそのようなことが実現できる製品だと思って興味を持っていました。
実際にお話を聞いてみると、走りのデータを計測するというそれまで実現されていなかった技術を実現していることに加えて、それらがどのように社会に影響を与えるか、自分の考えよりもっと大きくアイデアが広がっており、とても興味が深まりました。
就職活動をしつつも、実はもっと大学で研究に深く取り組みたいという思いもあり、進路に迷っていました。経済的な問題もあるので、大学での研究は少し諦めかかっていたのですが、そんな時に研究と仕事の両方をするのはどうかとCEOの菊川さんに提案をいただきました。
他にも内定をいただき、そこからもとても悩みましたが、前例も多くなく、自分のやりたいことが両方できる環境を与えてもらえるのなら飛び込んでみようと思い、no new folk studioへの入社と博士後期課程への進学という道を選びました。
編集部:no new folk studioではどのような仕事をしているのですか?
大きくいうとORPHE COREで取得されたデータからユーザーにとって有益になる情報を作り出すことが僕の役割です。実際にORPHE COREで計測して、そのデータを解析し、動作の特徴と照らし合わせたり、過去の研究と比べたり、というのが主な作業です。よりパフォーマンスの高い走り方、ケガになりにくい走り方をするには、どこがよくなくて、どう改善すれば良いのかをフィードバックする仕組みを作るために、データから何を求めれば良いのかを考えています。
編集部:実際にno new folk studioで働いてみてどうですか?
新しい発見がたくさんあり、すごく楽しいことが多いです。新社会人ならみんな新しい発見は多いのかもしれませんが、特にno new folk studioは少人数の会社なので他のチームとの距離が近いです。いろいろなことを知るのが好きなので、広告からハードウェア設計、ソフトウェア開発、デザインのことまで知る機会が多いのは、楽しい部分の1つです。このご時世なので対面で話す機会が少ないのは残念ですが、もっとたくさん話したいと思っています。
あとは難しく感じる部分もたくさんあります。大学でも研究を行っているので、仕事で言えば比較的近いことをしているのですが、スピード感や考え方が違ったりもします。やはりスタートアップだと開発までのスピード感はすごく重要ですし、サービス化というアウトプットを常に意識しながらデータ解析・調査をするという点がかなり大学での研究と異なると感じています。特にサービス化という出口を意識しながらの取り組みは経験がないので、勉強の日々です。
編集部:もうすぐ入社して1年が経ちますが印象に残っている仕事はありますか?
昨年発売した、ASICSさんと共同開発したEVORIDE ORPHEというスマートシューズの開発です。社内全員でプロダクトの開発に取り組み、自分もソフトウェアのデバッグ作業に関わりました。普段のResearch Unitでの仕事とは少し異なる作業で、この時により社員みんなのやっていることを知ることができました。社員それぞれが異なる強みを持っているのですが、みんなが集結して製品を作り上げる経験はすごく印象に残っています。
編集部:スマートシューズの今後の可能性についてどのように感じていますか?また今後の目標についても教えてください
僕自身はランニングを競技として取り組んだ経験はないので、中学・高校生の頃はフォームなどは特に何も考えずランニングを楽しんでいました。幸いなことにどこかに痛みが出ることはありませんでしたが、なんの知識もなく悪いフォームのまま走ってしまうと怪我に繋がってしまいます。せっかくランニングを楽しんだり、健康のために始めようと思っても、痛みで断念してしまう人は多いと思います。そういった人たちにORPHEのスマートシューズ を使ってもらうことで、自分の走り方とより適切な走り方を知ってもらい、怪我なく、ランニングを楽しむことをサポートしていけると思っています。もちろんウォーキングにも同じことが言えて、もっと多くの人に身体を動かすことを楽しんでもらえると思っています。
ORPHE を通じて、これらを実現するためにもバイオメカニクス研究のより深い知識と、スタートアップならではの新しいアイデアを持って、今までにないサービスを世の中に送り出していきたいと思います。
no new folk studio メンバーへのインタビュー記事はORPHEのオウンドメディア「ORPHE Journal」でも公開しています。