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突き動かされている感覚

仕事をしているとき、「何かに突き動かされているような感覚」を味わうことがある。自分の意志で仕事をしているというよりは、何かに突き動かされているような感覚。この感覚は一体何なのか。改めて考えてみると、心の奥底に「共感」というものがあるような気がする。

会社を始めてから26年以上が経つ。その中で利益を最優先に考えていた時期があった。社員を初めて採用した頃だ。もし事業がうまくいかなくなった場合、私一人の会社なら困るのは自分だけだが、社員を雇っていると他人に迷惑をかけてしまう。そのプレッシャーが私を利益重視にしていった。

利益ばかりを追求していると、一時的にはうまくいっても長期的にはうまくいかない。利己的になってしまい、ステークホルダーを大切にしないからだ。それに、利益のためだけに仕事をするというのは、私の場合、あまりモチベーションは高まらないようだ。

そこで次に考えたことは、利他の精神を持つということ。これは無論素晴らしいことではあるのだが、私はうまくいかなかった。心のどこかで「やってあげている」というような恩着せがましい気持ちとか、「損をした」というような自己犠牲の気持ちが生まれてしまうからだと思う。

では、どうしてきたのかというと、自分の心の中に沸き起こる「ワクワク」に素直に従ってきただけだ。一見、利己的に思えるかも知れないが、それとはちょっと違う。ワクワクというのは、ふだんの生活の中で、お客さんとか社会の雰囲気を何となく感じており、それと自分の興味が一致したとき起こるものだと思う。だからワクワクに従うことは、自然と自分にとってもお客さんにとっても社会にとってもプラスになることが多いのだ。

つまり私にとってのワクワクは、お客さんや社会との共感から生まれるものであり、その気持ちに素直に従って仕事をすると「突き動かされているような感覚」になる。その感覚で仕事をしているとき、お客さんと自分との境界線や、仕事とプライベートとの境界線は消える。あらゆる境界線がないので、それは宇宙の意志そのものであり、だからこそ「突き動かされているような感覚」になるのだと思う。

宇宙の意志というと大げさな感じがしてしまうのだが、私たちは「宇宙の子」なのだ。宇宙が銀河を生み、銀河が太陽系を生み、太陽系が地球を生み、地球が私たち人類を生んだ。だから、私たち一人ひとりは宇宙の子であり、宇宙の意志が働いている。お客さんと自分、仕事とプライベートといった、あらゆる境界線が消えたとき、私は宇宙の意志そのものになる。一体化する。ひとつになる。その状態こそが「突き動かされている感覚」だ。この感覚でする仕事は、もはや仕事ではない。ビジネスでもなく労働でもない。湧き起こる衝動にただ従っているだけだ。

私にとってはその感覚に入っているときが最も幸せな状態なのだと思う。旅行に出掛けたり美味しいものを食べることも幸せではあるが、自分が没頭できることで誰かに貢献できたり喜ばれたりすることのほうが実は幸せなのかも知れないと思ったりする。

私は今年、新しい事業を進めるにあたり、この「何かに突き動かされるような感覚」で仕事がしたい。夢中になりたい。

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