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都会生まれ都会育ち、農業界での挑戦。疲れた心を「農」で満たせ!

こんにちは!
ヒトユニット、アグリイノベーション大学校で関西の事務局をしております元田享兵(もとだきょうへい)と申します。

名前は「元気な田んぼ」の「元田」で覚えて下さい。

苗字から察するに、先祖はきっと稲作農家であったろうと思われるのですが、私自身は社会人になるまで一切「農」との関わりはない人間でした。

両親祖父母みな農業経験はほぼなく、農地もありません。

私は大阪の梅田からほど近い、天満(てんま)という街で生まれ育ちました。

天満は日本一長い天神橋筋商店街と夏の天神祭が名物の、下町的な雰囲気の街です。
雰囲気は下町ですが梅田に近い事もありオフィス街でもあって、とにかく建物と人はやたらとあったり、いたりしますが、自然を感じられる場所はごくごく僅かしかない、そんな街です。

そんなところで育った反動からか、私は都会に住みながら自然と田舎が大好きな人間になりました。

そんな私が農業に本格的に興味を持ったきっかけは、大学時代に読んだある本です。

その本は、近藤亨さんという方の『夢に生きる 秘境ムスタンに黄金の稲穂を』(講談社、2000年)で、ムスタンというネパールの荒野に日本の稲作の技術を伝え、不毛な地域に産業を作って現地の人たちを助けたという話でした。

その当時の私は

「農業」ってすげぇ!

と純粋に思いました。

※ちなみに弊社代表の西辻一真の著書『マイファーム 荒地からの挑戦: 農と人をつなぐビジネスで社会を変える』(学芸出版社、2012年)のタイトルをはじめて見たとき、私は反射的に「うわっ西辻さんももしやネパールに!?」と一瞬思いましたw

その後、「とにかく農業の経験を積もう」とネットで探し、農業インターンで飛び込んだ観光農園「杉・五兵衛」(有限会社 杉農園)で私の農業人生が始まりました。

 

■杉・五兵衛で学んだ14年

 杉・五兵衛は大阪府枚方市にある観光農園で、有機循環農法で育てた自家野菜、果物をつかって農園料理を提供している、いわゆる農家レストランの走りです。今年で創業54年目になります。

 

※画像は杉・五兵衛のウェブサイトより

 
杉・五兵衛での仕事は面白くて、料理に使う食材をとにかく自分たちで、種まきや苗植えから始めます
都会に住んでいるだけでは絶対にできない、様々な仕事を経験させてもらいました。

例えば、料理の中に「そば」を使うことがありました。
一般的な飲食店の発想なら、食品会社やスーパーから製麺されたそばを仕入れてきて、湯がいて、提供するのがセオリーだと思います。

杉・五兵衛では違います。まず種まきから入ります。

杉・五兵衛は甲子園球場の約2倍(約5ha)の敷地があり、田畑や果樹園が住宅街と隣接しています。
この時は住宅街の合間にある20aくらいの畑にそばの種をまき、栽培をスタートしました。

そして除草、土寄せを経て、だいたい2~3か月で収穫。
その後、乾燥、脱穀、選別、仕分け、脱皮、製粉…そして製麺して、湯がいて盛り付けて、客席まで運ぶ、というところまで自分たちでやっちゃいます。

さらに言うと、薬味のネギとワサビ、飾りに使う葉っぱまで自家製です。
さすがにめんつゆ用の鰹節や醤油は仕入れていましたが、とにかく自分たちで何でもやる。

江戸時代の百姓はこんな生活だったのではないか、と思われるような様々な仕事を経験します。
これって結構大変です。
座って注文すれば出てくる蕎麦屋さんのありがたみがわかる…

その代わり、混じりっけなし、ほぼ100%その場所で生産された、自家原料の十割そばを味わっていただくことができます。
都会では絶対に味わえない御馳走です。

 

※画像は杉・五兵衛のウェブサイトより

 
家族に食べてもらいたいものをつくる。
そして来て頂いたお客様を、家族のようにお迎えする。

これが私が杉五兵衛で学んだ「おもてなし」で、このおもてなしを楽しむために、お客様は親子3世代で永く愛用してくださっている方が多かったです。

「将来、近藤亨さんのように農業で人助けをしよう」と飛び込んだ杉・五兵衛で私が見たのは、都会の喧騒から逃れて、疲れた心身を癒しに来る人達の姿でした。

そして思い至った事は、

「ムスタンのような資源的に貧しい地域を救う農業もすごいけど、日本という先進国の都心部で、疲弊した人々の心を満たす農業もすげぇじゃねえか!

でした。

 

■そして、マイファームへ

 そんな杉・五兵衛で、私は農作業、接客、農業体験のインストラクター、体験農園の事務局、地域の小学校への食農出前授業、市農政課との農業人材育成事業などなど経験し、あっという間に10年以上の月日が流れていました。

 

 
ちなみに、私が杉・五兵衛で体験農園を開園した時や人材育成事業に取り組んでいた時、風の噂で自分と同年代の西辻一真さんという人がマイファームという会社を立ち上げて、農業界に新たな風を吹き入れている、という情報が耳に入って来たことを覚えています。

ここだけの話、その当時

「新参者が立ち回れるほど農業界は甘くはねぇぜ!」

と「謎の上から目線」+「とはいえ気になる横から目線」=「斜め上から目線」で、マイファームのニュースやウェブサイトをチェックしていました。

そして、10年間杉・五兵衛の農園で働いたタイミングでふつふつと湧いてきた感情は、

「もっと広い範囲の多くの人と関わる仕事がしてみたい」

でした。
杉・五兵衛は「先祖から引き継いだ農地を独自の農業で守る」というコンセプトで始まった農園のため、当たり前ですが地域に根差した仕事が多く、外の世界との関わりはあまりありませんでした。

また、その頃までに知った農業界の課題として、

「人材不足」
「遊休農地の拡大」
「農家の所得水準の低さ」
「労働時間の長さ」

などがありました。
そんな課題を解決するための、もっと広い範囲の多くの人に関わるような仕事がしてみたい、と思うようになっていました。

今思えば、同年代の西辻社長が会社を興して、全国で活躍している姿を知って刺激を受けていたのかもしれません。

その後、私は杉・五兵衛を退職し、知人が経営する飲食の会社で2年ほど働いたのちに、斜め上から目線でチェックしていた株式会社マイファームへの入社を決意します。

入社までの2年間を詳細に書き出すと長くなるので割愛しますが、一つだけ。
肉料理の飲食店を経営する会社で働いたので、野菜の目利き+肉の目利きも出来るようになり、鍋料理の腕前が妻から公式認定されるほどレベルアップしたことだけは申し添えておきます。笑

 

■過去の自分に勧めたい、アグリイノベーション大学校

 前段が長くなりましたが、今、私はマイファームで「アグリイノベーション大学校(AIC)」の事務局の仕事をしています。

AICは私のように農業との接点がなかった人が、農業界という特殊な業界の全容を体系的に学びながら、自分の農業人生を決められる、社会人向けの学校です。

農業技術を習得する農場実習に加え、知識の裏付けとなる技術講義や、農業経営について学べる経営講義など多角的なカリキュラムがセットになっています。
1年という農業にとっては非常に短い期間で、多くの学びが得られることが特徴です。

現役農家さんや農家の後継者の方が、学び直しのために通学する事もあります。

 

 
元農業法人従業員歴14年の、私の経験になぞらえてAICについて感想を述べるなら、

「もっと早く知りたかった…!」

です。
まがりなりにも杉・五兵衛で10年以上働いた経験で、身につけたものはあります。
例えば農機具を扱う技術や、仕事のスピード感などがそれです。

ただ、がむしゃらに手を動かして、駆け回っていた10年前の自分は知らなかった情報が、AICの講義には山ほどあります。

例えば、有機的病害虫の防除や、緑肥の活用法で農作業の時間が劇的に短縮できること、「有機農業」と「有機農法」は同じ文脈で語られるべきではない、など。(文字に起こすとちょっとマニアックすぎる情報かもしれませんがw)
たくさんの有益な情報が学べます。

農業の原理原則を知らずに、手探りで挑んでいた過去の自分が知ったら、「なるほど!」と首がもげるほど頷いていたであろう内容です。
私は農業界の入り口として最初に現場に身を置きましたが、正直、情報不足であった感は否めません。

農業者としての成長を早めるためにも、入り口としてAICのような学校という選択肢を、過去の自分にもし提案できるなら全力でお勧めしたいところ。

もちろん今は運営側として、AICの仕事にやりがいを感じています。

それは前段で書いた農業界の課題

「人材不足」
「遊休農地の拡大」
「農家の所得水準の低さ」
「労働時間の長さ」

これらのある種、解決策がここにはあるからです。

誤解を恐れず、超ざっくり説明すると、「人材不足」や「遊休農地の拡大」は技術と見識ある若手農業者が育てば解決へ向かいますし、「所得水準の低さ」や「労働時間の長さ」は技術や情報不足に起因する場合が多く、原理原則を学べば回避できます。

ただし、すべての解決策がここにあるわけではなく、日本の農業政策に起因する問題や、消費者意識に起因する問題などは政治的なアプローチも必要であると、私は考えています。

ともあれ、AICの講義を、各地域で、多くの人に受けてもらう事は、杉・五兵衛時代に私がやりたいと思っていた「広い範囲の多くの人と関わる仕事」のど真ん中であるといえます。

 

 

■都会の人が自然と触れる機会を増やしたい

 唐突ですが、農林水産省の予算額をご存じでしょうか。

令和5年度の農林水産省の予算額は2兆6808億円。
それに対し、厚生労働省の予算額は33兆7300億円でした。

日本は少子高齢化の影響で、国家予算のうち、医療費を含めた社会保障費の割合が非常に高くなっています。
私はこのことを、あまり健全ではないなと思っています。

体や心の健康を失ってから医療機関へ頼るよりも、健康な食事と、健康な環境を整えて、体と心の健康を維持する方が、効率的に国民の生活が守られると私は考えるからです。

ではそれをどうやって実現するのか。
私は農林水産分野にこそ、その答えがある、と考えています。

例えば、私が暮らす大阪市内は日本で一番緑地面積が少ない地域と言われていますが、確かに生活していて息が詰まると感じる時があります。

大阪は明るくて元気な人も多いですが、少し勘ぐって生活環境に目をやると、窓から見える景色はコンクリートばかりで土や緑はほとんど見えませんし、道に出れば車であふれて排気ガスを避けることはできません。
病院は診察待ちの人が行列をなしていますし、商店街は各種治療院や薬局が立ち並んでいます。

都会の暮らしは便利ですが、自然との距離を置きすぎたことによる弊害が、様々な形で出てきているように感じます。

想像してみてください。

『毎日コンクリートに囲まれた場所に出社して、パソコン画面と睨めっこし、目肩腰の痛みに耐え、週末は病院に通い、運動のために排気ガスにまみれた道路を走る生活』

『緑に囲まれた環境で、新鮮な空気を吸いながら仕事をし、週末には適度な日光を浴びて土に触れ、自分が食べる野菜を作るために体を動かす生活』

どちらが精神衛生上快適な生活だと感じますか?

健康な生活と、健康な環境を創る。農林水産業にはその力があります。
そのために、日本はもっと農林水産分野に予算を使うべきだと、私は考えます。

 


 

もうひとつ、農林水産業に馳せる想いを書かせてください。

農林水産業は食べ物を生産する機能はもちろんですが、環境を創り保全するという他産業にはない機能を備えています。

例えば、他産業でとある商品を作るときに、「CO2の排出量を下げることに成功しました!環境負荷が従来の半分です!」と発表して、メディアなどで取り上げられ報道されているところを見かけます。

しかしこれは私から言わせれば、環境負荷マイナス100がマイナス50になったに過ぎません。
他産業での経済活動は、決してマイナスをゼロに、ましてプラスにすることはありません。

一方で、もし農業で、耕作放棄地を解消して、有機農業を始め、生物多様性を復活させることができたなら。
これは環境負荷のマイナスをプラスに転じさせる可能性を秘めています
農林水産業、特に農林業は、環境を創り、守る事が出来る、唯一の産業です。

 
話をAICに戻しますが、私はAICの仕事は「仲間づくり」だと思っています。

卒業生は皆さんが農家になるわけではないですが、入学前より何かしら農林業との距離が縮まって卒業していかれます。
農林業に関心をもつ人口が増えれば、国もそれを無視できなくなります。

というか国民の希望が国家予算に反映されるはずですから、農林水産分野に多くの関心が集まれば、自然に農水省の予算が多くなると考えます。

その増えた予算で、都会の人が自然と触れる機会を増やす
それが私の今後やりたいことです。

 

 

■おわりに

 先日出張で島根に行きましたが、綺麗な日本海に沈む夕日の美しさに息を飲みました。

AICの農場で真っ赤に熟れたトマトをその場でかじったときに感じる味は、夏そのものです。

いずれも、都会の生活にはないものです。
今の都会での生活は、自然との距離が遠すぎます。

私のマイファームでの夢は、緑が少ない地元・大阪市内に体験農園をもっともっと開設して、市民が自然と触れる機会を増やし、健康な生活環境を整えて、疲れた都会の人間の心を満たすことです。

心が満たされた人が増えていけば、日本はもっと元気になると思っています。
そのためにも、今はAICでの仲間づくりを引き続き全力で頑張ります!

私の想いの丈をつづった徒然なる長文にお付き合い頂き、ありがとうございました!

 

↑ 島根で見た、日本海に沈む夕日

 

\2024秋入学生 募集中!/

▽アグリイノベーション大学校 公式サイト
https://agri-innovation.jp/

※無料の説明会や農場見学会を開催しています!詳しくは上記ウェブサイトをご覧ください。
※2024秋入学生の募集は、2024年9月末までです。

 

↑ 最後に農場での自撮り写真を。関西の大阪農場・京都農場にてお待ちしています!

 

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