武蔵常盤株式会社は、2026年8月で創業10周年を迎えました。
第1回では、オンプレミスからクラウド、Salesforce、そしてAIへと変化してきたIT業界について。
第2回では、10年間の経営を支えてきた「始末した経営」について書きました。
第3回となる今回は、
「SES」
について書いてみたいと思います。
現在、SESには、
「スキルが身につかない」
「案件ガチャ」
「エンジニアを右から左へ流すだけ」
といったネガティブなイメージもあります。
そう言われる背景には、IT業界が積み残してきた問題もあると思います。
ですから、SESなら何でも良いと言うつもりはありません。
しかし、私自身のエンジニアとしてのキャリアはSESから始まりました。
そして振り返ると、さまざまな開発現場で身につけたものが、現在の武蔵常盤株式会社の考え方にも大きく影響しています。
それが、
「現場力」
です。
ITエンジニアへの転職
私がITエンジニアへ転職したのは、ITバブルが終わった頃でした。
Javaを学び、Sun Certified Programmer for the Java Platform、いわゆるSJCPを取得し、SESのシステム開発会社へ転職しました。
ところが、最初のJava案件は一般的なWebアプリケーションではなく、
JNI(Java Native Interface)
を使う少し特殊な案件でした。
Javaの資格を取ったからといって、教科書通りの仕事が待っているわけではない。
今思えば、これはSESという働き方を象徴するようなスタートだったのかもしれません。
現場は、自分の都合に合わせてくれない
勉強するときは、
「Javaを勉強する」
「AWSを勉強する」
と、自分でテーマを決められます。
しかし、実際の開発現場には、すでに動いているシステムがあり、採用されている技術があり、お客様の業務、納期、予算、チームがあります。
自分の好きな技術だけを選ぶことはできません。
その現場に入り、状況を理解し、求められている仕事をする。
SESで仕事をする中で、私はこれを何度も経験しました。
技術が変われば、自分も変わる
その後、システム開発の中心はWebアプリケーションへ移っていきました。
私はSJC-WCを取得し、JSPやSeasar2など、その時代のJava Web開発を経験しました。
そしてさらに、
クラウド。
API連携。
SPA。
マイクロサービス。
AWS。
認証基盤。
Salesforce。
と、求められる技術は変化していきました。
そのたびに考えたのが、
「次は何を知らなければ仕事ができないのか」
ということです。
「自分はJavaエンジニアだから、Javaだけをやればいい」
では、長く仕事を続けることはできません。
案件が変われば、求められる自分も変わる
SESでは、プロジェクトが変われば仕事内容も変わります。
ある現場ではプログラマー。
別の現場では設計。
また別の現場では調査や、お客様との調整が重要になる。
技術だけでなく、開発手法も、チームの文化も、お客様の考え方も違います。
そこで必要になるのが、
現場を観察する力です。
この現場では何が重要なのか。
お客様は何を求めているのか。
自分には何が期待されているのか。
何が足りないのか。
それを理解し、自分を適応させていく。
私はこれを「現場力」と考えています。
「全部知っている人」ではなく「知らなくても進められる人」
もちろん、技術力は重要です。
しかし、
技術に詳しいことと、現場で成果を出せることは同じではありません。
知らない技術が出てきたときに、
「知りません」
で終わるのではなく、
調べる。
詳しい人に聞く。
仕様を読む。
実際に動かしてみる。
必要なところまでキャッチアップする。
SESの現場で学んだのは、
「全部知っている人になる」のではなく、「知らないものが出てきても仕事を進められる人になる」
ということでした。
一つの技術に人生を預けない
IT業界では、その時代ごとに人気の技術があります。
しかし、流行は変わります。
私がJavaを学んだ頃と、現在では求められる能力が大きく違います。
そしてAIによって、これからさらに変化するでしょう。
だから私は、
「一つの技術に人生を預けない」
ということを大切にしています。
これまで身につけた技術を捨てるという意味ではありません。
自分の経験を土台にしながら、
市場や現場が変わったら、自分も変わる。
その柔軟性を持つということです。
Salesforceとの出会い
私がSalesforceを知ったのは、2007年頃でした。
まだSalesforce Classicの時代で、クラウドコンピューティング自体も現在ほど一般的ではありませんでした。
Salesforceが掲げていた、
「No Software」
という考え方を知り、
コンピューティングそのものが「サービス」になっていく。
と感じました。
目の前の案件だけではなく、
「この先、何が必要になるのか」
を考えて学ぶ。
この積み重ねが、その後のクラウド開発やSalesforceへつながっていきました。
評価されるのは、技術名だけではない
現場経験を重ねる中で、SESエージェントから高い評価をいただけるようになりました。
しかし、それは単に、
「Javaを知っている」
「Salesforceを知っている」
という理由だけではなかったと思っています。
新しい現場へ入る。
状況を理解する。
必要なことを調べる。
自分の役割を見つける。
そして成果を出す。
その積み重ねによって、
「この人なら、この現場でも任せられる」
と思っていただける。
これもSESエンジニアにとって大切な価値です。
SESを「案件ガチャ」にしないために
もちろん、SES業界には改善すべき問題があります。
過去には、未経験者を大量に採用し、十分な教育やキャリア形成を考えず、目先の案件へ送り出す会社もありました。
その結果、
「SES=エンジニアを使い潰す」
というイメージにつながった面もあると思います。
だからこそ、SESでキャリアを築くのであれば、
エンジニア自身も、自分のキャリアを考える必要があります。
今回の案件で何を身につけるのか。
次に何を経験したいのか。
3年後、何ができるエンジニアになりたいのか。
そして会社側も、
「今どの案件に入れれば売上になるか」
だけでなく、
「この経験が、その人の次につながるか」
を考える必要があります。
武蔵常盤が経験者を求める理由
武蔵常盤株式会社では、エンジニア採用において、基本的に実務経験者を対象としています。
私たちが求めているのは、
これまでの経験を土台にして、次の技術へ進める人
だからです。
オンプレミスを経験した人がクラウドへ進む。
Javaなどの開発経験を持つ人がSalesforceへ進む。
システム開発経験を土台に、AIを活用した新しい開発へ進む。
これまでの経験を捨てる必要はありません。
むしろ、
経験があるからこそ、新しい技術の意味が分かる。
私たちは、そう考えています。
AI時代には「現場力」がさらに重要になる
そして今、AIによってエンジニアの仕事が変わり始めています。
AIはコードを書き、調査し、設計案を出し、テストやドキュメント作成まで支援します。
だからこそ、これから重要になるのは、
「何を作るべきなのか」
「何が問題なのか」
「AIの回答を、この現場で本当に使ってよいのか」
を判断する力です。
これは、SESの現場で培ってきた「現場力」と非常に近いものだと思っています。
変化できる人は強い
JNIから始まり、
Java Web開発へ。
クラウドへ。
Salesforceへ。
そしてAIへ。
振り返れば、ずっと同じ仕事をしてきたわけではありません。
その時々で、
「今、この現場で何が求められているのか」
を考えながら変化してきました。
技術はこれからも変わります。
だからこそ武蔵常盤株式会社は、
特定の技術だけを知っている人より、変化に対応できる人を大切にしたい。
そう考えています。
次回:「できること」と「やるべきこと」は違う
経験を重ねるほど、「できること」は増えていきます。
会社を経営していても、
「あれもできる」
「これも事業にできる」
と思うことがあります。
しかし、そこで私自身も何度か失敗しました。
できることと、やるべきことは違う。
次回は、武蔵常盤株式会社の10年間で経験した失敗も振り返りながら、
「商売の本質を識る」とはどういうことなのか。
について書きたいと思います。