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【月刊瀧】5月のFintechニュースを瀧さんに聞いてきた

巷に溢れるFintech関連のニュース。色々あった気はするけれど、なにかと記憶が曖昧になりがちな皆さんのために、当社Fintech研究所長の瀧が独断と偏見で振り返る「月刊 瀧」。今月は初の特別ゲストをお迎えしてお送りします。ラインナップはこちら!

1. FinTech実証実験ハブの話
2. メタップスのスマホ決済市場参入とJPモルガンが仮想通貨の部署を立ち上げた話
3. オーストラリアで現金の高額決済が違法になった話
4. Ginza Go
5. 今月の瀧的ニュース:「レディ・プレイヤー1」を観た話

それでは瀧さん、よろしくお願いします。

※本インタビューは2018年5月22日(火)午後に実施いたしました。

瀧 :始まりました「月刊 瀧」5月号、今回のお相手はすごいゲストをお迎えしていまして、メルペイの曾川 景介さんです!

曾川:メルペイの曾川です。よろしくお願いしまーす。

瀧 :曾川さんをご存じない方のために、短い自己紹介をいただけると。

曾川:はい。もともとWebPayという決済のサービスをやっていたのですが、2015年にLINEに売却しまして、そのあとずっとLINE Payというサービスを開発していました。去年、サービスが軌道に乗り始めたタイミングだったこともあり、会社を辞めました。

瀧 :はい。

曾川:利益も薄いし、利益が薄いから取扱高も大きくなるので責任も重いし、加盟店集めるのも大変だし、お客さまを集めるのも大変、ということで苦労が多いんですよね。まあ気づいたらまた決済やってるということで…これもご縁かなと(笑)

瀧 :たしかに(笑)

曾川:メルカリに行こうと思った理由を話すと長くなってしまいますし、事業戦略に関わる部分にもなるので省略させていただこうかな…

瀧 :タイムリーなことに絶対話せない案件になっちゃいましたよね。

曾川:まあ、端的にお伝えすると、物・価値の交換をする「場」がメルカリで、その交換を媒介するものがお金だとすると、お金起点で問題解決できることがたくさんあると思っていて。そんなことをずっと考えてきた一年でした。

瀧 :なるほど。ありがとうございます。我々のようなお金の管理側のプレイヤーから見ると、メルカリさんて物を売ることができるじゃないですか。それによって、入金のある「場」になっているのは凄く大きいよなーといつも思っています。

曾川:アドバンテージですよね。

瀧 :LINE Payとかも最初にチャージしなくちゃいけないですよね。社員さんとかには、一部LINE Payでお給料が払われるような部分があるみたいですが。

曾川:そうですね、それをきっかけにいろんな場所でLINEの社員さんたちが使ってくれるようになって、使える場所が増えて、改善やビジネスのつながりが前に進んでいったというのはありましたね。

1. FinTech実証実験ハブの話

瀧 :1件目はFinTech実証実験ハブの話です。この政策は、いろんな位置づけができるものですが、海外で多くの国が取り組んでいる、サンドボックス政策に近いですね。予めリスクを限定したメンバーの中だけで、実験的な技術を活用して運用できるかやってみましょう、という趣旨のものです。FinTech実証実験ハブは、日本では去年の9月から始まっていて、今回で3件目になります。

曾川:内閣府で行っているものとは別に、金融庁が主催するものなんですね。

瀧 :そうなんです。イギリスだと金融関連の行政機関としては、FCA(金融行為規制機構)が実施していて、これまで累計60件を超えるプロジェクトが行われています。例えば、家を必ず90日後に必ず買い取ってあげるからそのために融資をつける、といった結構マニアックなものから、保険をどうやって売ればいいかとか、ブロックチェーンを使った決済まで色々です。

曾川:なるほど。

瀧 :英国の事例に比べれば、日本の実証実験ハブは法的なチャレンジ解消というよりは、純粋な実験場に近いものではあります。今回の実証実験は3件目なのですが、これまでの案件では、ブロックチェーンを利用した本人確認手続きのためのシステム構築の検討が行われたり、顔認証技術を使った本人認証の運用や利便性の検証が行われたりしました。

曾川:はい。

 :で、今回は、金融商品販売時の応接記録や、カスタマサポートに寄せられた音声をAIを使って分析、順位づけを自動化しましょう、という内容になっています。

日本でもここ3年くらい、Fintechが声高に叫ばれる中、RPA(Robotic Process Automation)について語られることが多くなってきたなと思っています。そっちの方が日本企業の意思決定に馴染みやすいのは間違いないんですよね。「確実にコストが減るんだな」という感覚を醸成できるので、それはそれで新規の技術のあり方としては良いのかな、とは思いつつ。

でも、できればFintechは売上を伸ばす方に育って行って欲しいんですよね。今回の案件は、どちらかというとコスト削減の本流にあるような文脈でして、だとするとちょっとした危機感があります。

カスタマーサポートでも、どうしても取りこぼしてしまうような声や要素は絶対あるはずで、そういうものを自動で拾える仕組みを使って金融サービスに反映できれば、ひいては売り上げ向上につながると思うんですね。

曾川:LINEでも、チャットボット機能でお客さまの声を集約して、統計的に処理することでプロダクト改善に活かすなどしていたのですが、これもきっと同じ文脈ですよね。

 :はい。証券会社でも、営業の人たちの電話をモニタリングする人たちの仕事がありまして、その仕事の中で、実は営業電話をかけているフリをしてずっと自宅の留守電に吹き込み続けてる人がいる事実がわかったりするんですけど(笑)、実証実験はどっちかというと、ユーザーにとっての利便性向上につながったよね、という結果になって欲しい思いがあったりします。

ユーザーの利便性向上の文脈だと、うちはMFクラウドのサポートで、BEDOREさんのソリューションを使っています。で、弊社は毎月全社員の中からMVPを選出しているんですが、3月はAIチャットボットの「あかりさん」がMVPに選出されたんです。

高橋:すでに体力的には人間の限界を突破してますよね。24時間365日働けますから。

曾川:確定申告は夜中までやってる人たちがきっといっぱいいるから助かるでしょうね。「やばい、間に合わない!」みたいな(笑)

そういえば、僕、「マネーフォワード For BUSINESS」というサービスを当時使ってました。

 :おおー!そんな前に!今の「MFクラウド会計・確定申告」の初期モデルの名前ですね。

曾川:実家が事業をしていたり、自分たちで事業をしていたのもあって、そういう製品は比較的身近だったんですよね。その前は、MintとかIntuitも見たり、使ったりしてました。

 :すごい。当社の事業を理解するのに完璧な背景知識です。僕が初めて当社の辻に声をかけた時も、「Mintっていうすごいアプリがあるんですよ」とか言ってたのを覚えています。

曾川:最近も色々新しいサービスが出てますが、トレンドはPCフレンドリーなところからスマホフレンドリーなところに移ってきてるのかな、という感じがしてます。

 :たしかに。…そういえば、もともと僕がFintechに詳しくなったきっかけって、WebPayの開発をされていた濱崎 健吾さんと飲んだときなんですよ。彼にいろんなサービスを教えてもらって、その後、週刊金融財政事情編集部さんと共催しているFintech研究会で、記念すべき第一回目のゲストとして来ていただいたこともありました。

曾川:あー、よく知ってますよ(笑)

 :当時、ロビンフッドのようなトレーディングソフトがすごく面白いんだ、とよく言っていて、三田のBAR Monで2時間くらいずっと、すげーすげーって言いながら彼のスマホをいじらせてもらったことがあります。彼がどう思っているかはわかりませんが、僕にとってはすごい恩人で、当時だいぶ助けられたんですよね。

曾川:彼には僕もすごくお世話になりましたし、今でも仲良くしているし、猫を愛しているし(笑)

 :はい(笑)…で、そろそろ最初の話題を締めようかと思うのですが、一言でいうと、サービス開発につながる実証実験になるといいよね、ということです。

単なるコンプライアンスの仕事を楽にするところに留まって欲しくないのと、どうやってサービスを改善するのかという知見はベンチャー側にたくさん集まっているので、金融機関さんと勉強会をしていても、そういうものをシェアすることってウケがいいんです。

曾川キャピタル・ワンがUXコンサルのAdaptive PathとかデザインスタジオのMonsoonを買収したじゃないですか。ああいうことを金融機関がやらなくちゃいけなくて、そういうのをやっているのがJapan Digital Designとかなのかな、と思うんです。

デザインといういわゆる見た目の話ではなくて、お客さまの課題に根ざしていて、どういう風にその課題を解決して行くのかという観点で、設計としてのデザインがこの実証実験の中に取り込めているのなら、恐らくいろんなことができるのではないかと思います。

(広報注:5月31日付で当社も実証実験ハブの案件参加を発表しております。詳しくはこちらをご参照ください)

2. メタップスのスマホ決済市場参入とJPモルガンが仮想通貨の部署を立ち上げた話

 :メタップスがスマホ決済市場に参入した話とJPモルガンが仮想通貨の部署を立ち上げたという話に行きたいと思います。

曾川どちらも際どい話ですね(笑)どっちの話もびっくりしました。

 :メタップスの方ですが、まだ僕使ってないんですよね。加盟店の開拓はそれなりに時間はかかると思いますが、P2P送金の方はもう始まってるのでしたっけ?

曾川:送金はできると思います。一部の銀行では使えるようになっているはずです。

 :6月から福島で実証実験が始まるようですね。

曾川:仕組み自体はもうあるので、あとは繋ぐだけというところだと思います。LINE Payももう繋がっているので。

 :そのつながりでいうと、LINE Payのオンボーディング(利用開始手続き)ってすごい楽ですよね。銀行に依拠する形の本人認証は、ユーザー体験としては一番洗練されていると思います。

曾川:一般的な流れだと、身分証明書をアップロードして、郵送で本人確認書類を受け取って、と大変ですよね。

 :土曜日に自宅で受け取れないと不合格、みたいな(笑)

曾川eKYC(オンライン本人確認手続き)とかが出てくると依拠の流れは不要になってくるのかな、というところですよね。

 :先月、SBIさんが証券口座向けのeKYC構想を発表されたんですが、その中でビデオを用いたKYCのあり方など、新たな認証の方法について触れられていました。去年くらいから、このテーマがテクノロジーの深堀りみたいな方向で進んできたのはすごく良かったと思っています。Fintechについては、オンボーディングが死活的に重要で、今のままだと下手すると7~8割のユーザーが離脱してしまっていますよね。

曾川:はい。銀行につないでもらう、ということ自体、ユーザーからすると意味が分からないとは思いますね。銀行によってUXの差があったりしますしね。

 :うんうん。一方で、JPモルガンの方はというと、昨年社長が仮想通貨に対して「詐欺である」と非常にネガティブな発言をしたのですが、案外というか、変わり身が早かったことに驚きました。そして、仮想通貨を自行のどのような業務に役立てるのかという戦略を、29歳の担当者に任せることとしています。彼は元々、In-Residenceプログラムという、提携プログラムを走らせていた人でもありました。

投資銀行の中には、ヘッジファンドほどのサイズではないけど優秀だ、というファンドマネージャーを社内に抱え込むようなことがあったりします。

VCでも似た形で、ベンチャー経営の経験者を何人か抱えていて、投資先がシリーズA、シリーズBといい感じに育ってきたときに送り込む形のExecutive in Residence、VC内の社内起業家のような形で、Entrepreneur in Residenceのような取り組みってあると思うのですが、銀行の中にもそういう人がいるんだというのが個人的には気づきで。

曾川さんもそうかもしれませんが。銀行のCTO in Residence みたいな。

曾川:猫集めならぬ、CTO集めみたいな(笑)

 :キャットフードがいっぱい置いてあったり。

曾川:最初は僕も、違うことをやったりしてたんですが、気づいたらこんな風になるということもあると思うので、そういう制度は、受け入れられるチームを用意しておくという意味ですごく大きいと思います。ただ、そういう人たちがいつでもオープンなわけではないので、いるときにパッとオファーできることを考えると、良い制度なんでしょうね。

 :JPモルガンは元々、年間1兆円くらいのIT投資をしていて、ブロックチェーンベースのインターバンク取引などには取り組んできていましたよね。今回も特に仮想通貨でトレーディングしようぜ、というようなパブリックな話とも違うようですね。

ちなみに、今、僕のPC画面のBusiness Insiderの広告に、ZelleVenmoが出てますが、最近はZelleがVenmoの約二倍の決済額になってきています。

曾川Square Cashも最近仮想通貨やってますよね。

 :え、全然知らなかったです。

曾川:このレイヤーがこういう発展を見せているのはひとつヒントになるなーと思いました。

 :ビットコインの販売所というところですかね。

曾川:はい。

 :どちらかというとクレジットカードでは仮想通貨を買えないようにしようという流れの中、逆行していておもしろいですね。

曾川:裏側が銀行のデビッドカードのネットワークなので、レギュレーション的にも大丈夫なのかもしれないですね。

 :日本ではP2Pで仮想通貨を送金する流れはだいぶ静かになっていて、そちらの方に戻ろう、という話って最近全然聞かない気がしてます。

曾川:クライアント側にモバイルウォレットを入れると、本来あるべき仮想通貨のモデルというか、Nakamoto論文に書かれていたような姿になると思うんですが、秘密鍵を個別の消費者に委ねていいのか、という課題があって。

本当に技術的に優れたエンジニアであれば、管理可能なのかもしれませんが、秘密鍵を消費者側に委ねるコストは高いし、そういう状況のためのツールになってしまうのですよね。この問題をクリアしないと、汎用的な使われ方をするのはなかなか難しいのかな、と思いますね。

 :たしかに。

曾川:個人的にはモバイルウォレットってみんなが見た夢というか、ちゃんと携帯がお財布になっている状態なので正しいのかな、と思います。

ただ、秘密鍵を失くしたり、盗られたら終わりなのは財布と同じなので、そこをテクノロジーで解決できたら面白いな、と思っています。

 :ちなみにご自身の秘密鍵ってどうしてます?

曾川:ハードウェアウォレットに入れてみたり、ペーパーウォレットも試してみました。最近では秘密分散で2つに分けるとかもやってみました。

管理の手法ってその程度しかなくて、物理的なハードウェアウォレットに入れたり紙に印刷して安心してたりするのって滑稽だと思いませんか?せっかくデジタル化してるものをオフラインに変えて保持しておく方が安心するというのは、人間が物理的な世界に存在していることの所以だなと思っていて(笑)

逆に、本来こういうスマートコントラクトってオンライン上だったらすべて完璧に取引執行できるんですけど、実際にその約束が履行されたかどうかという認証はできないので、素晴らしい枠組みであっても、それを現実世界で機能させるっていうのはなかなか難しいなと思っています。

人間はオンラインに全部乗りたいのか、それともオフラインにいきたいのか、人間がどっちに向かって行くのか、という瀬戸際にものすごく興味があります。

実際のところ、オンラインを信じる人たちと、オフラインで生きている人たちって多分違う人たちです。「安心で安全なFintech」の話をすると、「安心」と「安全」はいつも違うところにあるような気がしています。

安全は技術的に担保できるんですけど、安心って人の心の方なんで、人のマインドセットの方が強い影響を与えるんじゃないかなと思います。物理的なものがある方が安心する、とか人が対応してくれた方が安心する、とか。カスタマーサポートとかされているとより感じるんじゃないですか?

高橋:そうですね。SaaSでもいろんなタッチポイントで温もりに触れた方がサービスのファンになる確率が高くなる、というのはよくある話ですが、今後はいかにそれをAIで擬似的に表現していけるかでしょうね。

 :温もりある「あかりさん」をどうやって育てていくかですね(笑)

曾川:人っぽさ大事ですよね。

3. オーストラリアで現金の高額決済が違法になった話

 :オーストラリアで現金での高額決済が違法になりました。でも、他の国と比べると1万豪ドル(約82万円)って結構高いんですよね。フランスでは1,000ユーロ(約13万円)、スペインでは2,500ユーロ(約33万円)だったりします。

曾川:オーストラリアくらいのレベルでも日本では絶対やった方がいいですよね。

 :やった方がいいと思います。

いくらがいいんでしょうね?ケネス・ロゴフという経済学者が一昨年に出した本の中で、1万円札を廃止せよ、と言っていたりします。どちらかというと禁止というより持ち歩くのを苦痛にせよ感じですが。

曾川:重くすればいいんですかね?

高橋:厚さが1枚:10cmだ、みたいな(笑)

 :キャッシュレスをお笑い的に進めるのであれば、1つは、福澤諭吉さんの代わりに去年のM-1の優勝者を毎年刷る、ですね。そうすると、毎年価値が下落してゆく感じになります(笑)

2つ目は、臭う、です。アメリカの紙幣は、素材の繊維そのものが臭いやすい性質のもので出来ているそうです。

曾川:そのまま触りたくない!と(笑)

 :あらゆる手で価値のディケイ(減衰)を起こしにいく、というやつです。まあ、お笑いじゃない観点で考えれば本来、脱現金は犯罪抑止の観点で語られるものですが。

曾川:アンチマネーロンダリングの観点をオーストラリアくらいしっかり語るのであれば、マネーロンダリングで一番苦労しているのは日銀だと思うので、きっとやった方がいいですよね。

 :だから「ダイハード」も1から3までは匿名資産の受け渡しに対して、ブルース・ウィリスが戦うわけですよね(笑)

現金はいろんな問題の温床になる、というのが日本を離れると強い問題意識としてあるなあと思いますね。日本はすごく無邪気に1万円を扱うというか。

一時期、欧州で500ユーロ札は普通に使われていましたが、もう発行停止が決まり、とても使いづらいはずです。

曾川:一方で、日本はタンス預金も結構あるようなので、ステークホルダーが納得しないだろうなーというのはありますね。

 :インドみたいに、今日から禁止です、とやるんですかね。

曾川:暴動起きそう。

高橋:日銀のカスタマーサポートが死ぬイメージしかないです!(笑)

 :あのときってインドのPFMのプレイヤーが結構伸びて、どこの銀行に新しい現金の在庫があるかを、GPSで表示するアプリが作られたりしました。

4. Ginza Go

 :その昔、日経BPの原さんの携帯に、違う原さんに宛てた、夜のお仕事の方からのメールが届いたらしいんですが、それをきっかけに原さんが銀座のクラブに行ったそうなんです。

曾川:え、そんな話していいんですか?

 :はい、月刊瀧は瀧が話して楽しければいいんです…というのではなくて、この話、記事にもなってるんですよ。そこで、銀座のお店で、Amazon Goの話をしたら、そんなものは全然新しくなくて、昔から銀座はキャッシュレスだったと。つまり、Ginza Goだったと言われたそうです。

いわれてみれば、銀座でのお支払いというのは、踏み倒してしまう人も含めて、ツケで回ってきて、支払い行為は無粋だ、というのがあったんですよね。

もし、WebPayという会社をあと50年経営していってたとしたら、そういう方向に行ってたんですかね?

曾川:どうですかねー。当時はもっと牧歌的な時代で、クレジットカード決済が情報漏洩などの問題を多く抱えている中で、まずはそれを止めたいという観点の延長線上をやっていたでしょうね。信用の創造みたいなことは、少なくとも私たちはしていなかったです。

でも、こういうツケで払えるみたいなところについては、その分のリスクも利益に織り込んでいたというのは面白いですよね。

 :全員がイシュアーであり、アクワイアラーだった時代があったということですね。

曾川:P2Pの金融がある時代が来たら、全員が信用を発行するということも起こり得ると思います。個人がトークンを発行するのも自由ですし。ICOとかだと怒られるわけですけど(笑)

 :その話で思い出したんですが、週末に「レディ・プレイヤー1」を観ました。ご覧になられました?

曾川:まだ観てないですね。

今月の瀧的ニュース:「レディ・プレイヤー1」を観た話

 :基本ほとんどの国民がVR端末をかぶってて、スピルバーグらしい現実世界ではNerdなやつが、VRの世界の中ではその世界を代表するプレイヤーだ、みたいな設定なんです。で、物語の成り行き上当然ですが、活躍している人たち同士がリアル側でも集まったりします。

現実とVR空間がシームレスに続いていれば、多くの人たちがそこにすっと入っていけるんですけど、現実には、今のところは「いや違うでしょ」ていう部分が大きいと、もうその人たちと同じ世界観や決済圏は築けないですよね。

曾川:そうすると隔絶しちゃうんでしょうね。没入感ってその中で過ごした時間だと思うんです。もし1日ログアウトしなければ、その時間そのものが現実なのでそこがすべてじゃないですか。

僕らにとっての現実がブロックチェーン上にあるんだったら、それが現実だと思うし、僕らがまだ紙幣を握りしめているんだったら、そっちが現実なんだと思います。

 :そういえば高橋さんOculus Goって買った?

高橋:まだですね。

 :マストっすよ、23,800円で買える未来(笑)知り合いがWiFi片手に街中でも使ってて、タクシーを待ってる間にかぶったり、完全にアッチ側の世界に往かれてます。

曾川:変態ですね(笑)

 :昔、野村證券もセカンドライフの土地を買って、情報発信拠点とかを作っていました。でも、みんながずっとOculusの世界にいて、Oculusコインでその中の土地を買える世界が出てきたら、それはこれまでの扱いとはちょっと違うと思うんですよね。没入できる世界でなら、ICOしていいんですよ。没入できない世界だったらスキャムとか言われてしまうわけで。

高橋さんは終わらないRPGのサポートをされていたことがあったと思うんですが、その世界でのレアな武器とかの資産が強烈にデフレートしたりすると、(自主規制)みたいなこともあったりしたんですよね?

高橋:ありました。ほんと笑えないです。

 :それぐらいの価値をその空間内で享受できているとも言えますよね。「レディ・プレイヤー1」の場合は、食べる、触れるという部分でまだ現実の方が優っている世界なので、それでなんとか現実側の価値を担保して、残りは全部バーチャルという感じでした。

曾川:そういう意味では、エンタメの中で使われる通貨はやっぱりそっちに倒れやすいでしょうね。そこにフォーカスしたものは遠くない将来現れてそうですね。

 :ちなみに、この映画ではその通貨を得るために全員で大変な思いをしている、という内容になっていますので(笑)、皆さん是非、ご覧になってください!

…では、撮れ高もOKが出たようなので、ここらへんで終わろうかと思います。

曾川さん、今日は貴重なお話をたくさんしていただきありがとうございました!

曾川:ありがとうございました!

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