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【三井物産、DNX Ventures 合同イベント】TRUE INDEX -世界で戦うために求められる組織改革とは-

Magic Moment は、2022年12月6日に DNX Ventures と合同で「TRUE INDEX -世界で戦うために求められる組織改革とは-」と題した営業生産性向上に関するイベントを開催いたしました。

当イベントは三井物産株式会社社内にて開催し、当日はオンライン・オフラインを通じて約100名の三井物産・三井物産グループ会社の皆様にご参加いただきました。

後半のパネルディスカッションでは日本における営業関連ツールの利活用や営業生産性向上をテーマとして、約20分時間がオーバーするような熱量の高い議論が展開されました。

本稿では、登壇者 DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表倉林氏と、Magic Moment 代表取締役 CEO 村尾による発表内容に加え、三井物産 執行役員ICT事業本部長 小日山功氏・りらいあコミュニケーションズ執行役員 佐々木亨氏を交えて実施したパネルディスカッションの内容をレポートします。

DNX Ventures 倉林氏が語る米国のセールステックトレンド

まずは、セールステックの概観として、米国でのセールステックトレンドについて DNX Ventures 倉林氏から語られました。

日米労働市場の違い

日本と米国では、営業組織を取り巻く環境が異なります。倉林氏によると、中でも労働市場においては大きく2つの違いがあるといいます。

「日本と米国では、人材の流動性が違います。日本では新卒一括採用から社内で長期的に育てていくことが一般的です。一方、米国では中途で入社し短期間で活躍することを目指します。」(倉林氏)

「もう一つの大きな違いは労働の生産性です。日本では、お客様への提案準備というところに半分以上の時間が割かれています。本来時間を使うべき顧客への営業活動に時間を使えていないのです。」(倉林氏)

営業活動における顧客と企業の関係の変化

営業における企業と顧客との関係は変化しており、これも営業領域におけるテクノロジーの進化に大きく関わっている要素です。

「インターネットの発展により、営業と接する前の段階で顧客が自発的にサービスに関する理解を深めるようになりました。

そのため、営業がカスタマージャーニーの中でカバーしている範囲は狭くなり、最終的な意思決定に踏み切ってもらうよう促すことが営業の仕事となりつつあります。こうした顧客と企業の関係の変化を受けて、マーケティングオートメーションやセールステックなど次世代テクノロジー・プラットフォーム基盤が現れてきています。」(倉林氏)

営業スタイルの進化を支える3つのセールステック

営業スタイルの進化を支えるセールステックの中で、DNX は次の3つの分野に注目しているといいます。

①Sales Engagement と Sales Enablement、②Virtual / Remote Tech、そして③Conversation Intelligenceです。

「1つ目の Sales Enablement のツールでは、社内のハイパフォーマーの知見、経験をもとに、提案準備における最適なコンテンツの検索や、レコメンドが提案されます。

Sales Engagement は顧客のエンゲージメントを測るデータの自動収集や、それに基づいて顧客に対するアプローチを最適化するツールです。

2つ目の Virtual/ Remote Tech 領域では Zoom に代表されるようなビデオ会議の仕組みもありますし、hopin のようなバーチャルイベント管理の会社も話題になっていますね。

3つ目の Conversation Intelligence は文字通り会話を分析して商談の確度を上げたり、インサイドセールス組織のパフォーマンスを均一に高めたりするツールです。カスタマーサクセス分野でも有望な会社が次々と現れています。」(倉林氏)

米国におけるセールステック関連トレンド

倉林氏は、米国において以下の5つのトレンドがあると語ります。

  1. コロナ禍を契機とした BtoB 営業のデジタル化によるセールステックの拡大
  2. AI による営業の自動化
  3. 企業が顧客の獲得以外にも既存顧客の維持とエンゲージメントを重視
  4. セールステックの中でも Sales Engagement/Enablement 分野に投資が集中
  5. ユニコーン企業が増加し、セールステック企業間での M&A 活発化

「コロナ禍を通して従来の対面営業からバーチャル営業にシフトし、BtoB 企業の営業活動においてデジタル化は避けて通れない状況になっています。

また、セールステックの中では 自動化や AI・機械学習を通じた効率化がトレンドとなっています。顧客側の優先順位については、ベンダーとしては顧客エンゲージメントを高め、今のお客さんを解約させないことが重要になります。

そうした流れの中で、Engagement ・Enablement 業界の企業は2022年においても、トップ Tier の VC から大型の調達を実施しており、この分野の今後の成長への期待の高さが伺えます。」(倉林氏)

最後に倉林氏は今後のセールステック業界におけるファイナンスの動向についてこう語りました。

「また、経済環境が不安定な中では、VC でのバリュエーションがつきにくくなる中で、M&A によってサービスの幅を広げていくということが起こりやすくなります。セールステック業界においても今後プライベート、パブリック両方の側面で M&A が続いていくと予測しています。」と倉林氏のセッションは締めくくられました。

Magic Moment 村尾が語る LTV 経営

続いて Magic Moment 代表の村尾から Magic Moment が提唱している LTV 経営とその実現方法について語られました。

LTV 経営とは何か

「Magic Moment はお客様が最も価値を提案したいと思っている顧客を魅了し、LTV を最大化できるようご支援することをお客様との約束としています。

LTV の最大化は近年主流になりつつある、サブスクリプションやリカーリングなどのビジネスにおいて重要な指標になっています。これらのビジネスモデルでは、継続的な顧客との関係性構築ができていないと、収益性を担保することができないためです。こうした流れを受けて、私たちはお客様にも LTV 経営の推進をご提案しています。」(村尾)

「 LTV 経営は顧客ライフサイクルに合わせてサービスや価値提案を続けることにより、顧客からの LTV を最大化する経営手法です。

LTV 経営では、新規獲得の売上や目先のアポイント、架電数を増やすということではなく、顧客にきちんと向き合って信頼関係を築く体質にしていくことが大事になります。LTV のために活動するのであれば、お客さまとの関係性との総量である顧客エンゲージメントが重要な指標になります。」(村尾)

顧客のふるまいをもとに信頼関係を作ることが LTV 最大化に繋がる

「顧客エンゲージメントを何で測るのかというと、顧客の行動です。例えば、Website への訪問、口頭合意、アップグレードのお試しなどの行動が顧客エンゲージメントを表す手がかりになります。

ひとりひとりの行動やふるまいを元に、信頼関係を作っていき、エンゲージメントを高めることが LTV 経営の一丁目一番地だと思っています。商談数を上げたり、アポを取ったりすることも大事なんですが、LTV とは直接関係がないんです。」(村尾)

LTV 経営を実行するために必要な IT システムとは

「CRM・SFA は商談や顧客情報を管理するマネジメントシステムです。一方、顧客エンゲージメントを高めるためのシステムでは、まず、顧客の振る舞いに関するデータを蓄積し、そこから顧客エンゲージメントの高さを算出して、顧客エンゲージメントを高める次の一手をシステムが提案してくれます。」(村尾)

マネージャーがデータを管理するためではなく、営業担当者が目の前の顧客のエンゲージメントを高め、LTV を高めるための活動に集中するための行動支援システムとして Magic Moment Playbook を開発したと村尾は語ります。


「Magic Moment Playbook では営業アクションの質の向上と定型作業の自動実行で LTV 最大化を支援します。営業アクションの質の向上のために、Magic Moment Playbook では確度が高く、決まりやすい案件がどれかを教えてくれます。

また、その案件へのアプローチの中で発生する定型作業を自動で実行します。1人の営業が担当する顧客数を増やすと累進的に作業量も増えていきますが、煩雑な作業が自動化されることで、1人あたりの担当できる案件数が何倍にもなっていくと思っています。」(村尾)

最後に、村尾は、営業活動の価値創出は全て次の掛け算になっていると語りました。

『営業活動の価値創出=人×オペレーション×テクノロジー×インサイト』

「こうした要素を束ねた活動プロセスこそが大事で、Magic Moment は人、オペレーション、テクノロジー、インサイト、全ての要素において最高峰のレベルを目指し、掛け合わせたソリューションを提供していきます。」と村尾のセッションは締めくくられました。



対談セッション

ここからは、三井物産小日山氏、りらいあ佐々木氏も加わり、4人でのトークセッションとなりました。

営業関連のテクノロジーによって、日本の営業の生産性は上がったか?

小日山氏:日本のシステムは SOR(System Of Record)、記録するためのシステムが多くなっています。記録がメインなので、取得したデータをもとに、生産性を上げたり効率的に顧客を取りに行くといったところの活用はあまり進んでいないと思います。

実際、SFA を導入してもダッシュボードを作ってそこから生産性を上げるための行動に移せている企業はほとんどいません。それどころか、膨大な情報量のエクセルで案件管理を日々頑張っている企業の方が多いのが現状かと思います。

モデレーター:倉林さん、VC の観点からはいかがでしょうか?

倉林氏:まだ道半ばだと思います。ただ、ジョブ型で社員の仕事を決め、分業体制が作られるような時代がくると、人材の流動化が進み、非常にセールステックと相性が良い環境になるんです。加えて、データを活用した効率化の波も加速すると思います。例えば、昔は属人的に見よう見真似で身につけていた営業ノウハウをデータで可視化するといったことは既に取り組む企業が増えています。今後5〜10年でさらに環境は変わってくるのではないかと思います。

特に米国と比較して、営業関連のテクノロジーの利活用状況にどういった違いがあるのか?

倉林氏:日本と米国の企業の大きな違いは各社に導入されている SaaS の数だと思います。米国では大量の SaaS を導入して、API でそれぞれをつなぐことを前提としています。その上で、顧客のデータを統合して新しいインサイトを出すことが求められます。一方、日本の場合は企業で導入されている SaaS の数が少なく、こうした議論にまだなりにくい場面もあります。

もうひとつの違いは、日本では自社の営業スタイルに合うようにベンダーとの間に SIer が入ってシステムをカスタマイズしてきたことに対し、米国ではアプリケーションに合わせて営業スタイルを変えてきたことです。米国型の方が効率的でいいのかもしれないと考えると、今後は日本でも SIer ドリブンからアプリケーションドリブンの方向性に変わってくるかなと見ています。

モデレーター:小日山さんは、三井情報で社長をされ、様々な企業の DX をサポートされてこられたと思いますが、そうしたご経験の中で営業関連のテクノロジーの利活用において、感じられていた課題感などございますか?

小日山氏:倉林さんが仰った通り、日本では SIer がベンダーとの間を全て取りまとめていたんですね。こういった構造なので、どうやってツールを利活用するかはそもそも念頭にないし、度胸もないと思います。

米国のように自社でエンジニアを抱えてソリューションを選び、 API 連携をしてシステム構築する概念がないので日本では SIer は必要になってくると思いますが、ユーザーサイドが変わらないと日本の IT 業界は成長しないのではないかと思います。

雇用環境や分業の状況と、営業関連のテクノロジーの利用の相関は?

佐々木氏:雇用環境は年々非常に厳しくなってきており、弊社でも人の採用が難しくなっています。当然テクノロジーを活用しないといけないというのがここ10年言われていますが、顧客が変わらないと DX はなかなか進みません。

営業関連のテクノロジーは過去からたくさん使ってきていますが、実態として、データの活用以前に、登録すらまともにできていないのが実情です。そのうち現場も諦めてしまい、歴史が繰り返されています。

こうした現状を踏まえると営業関連のテクノロジーの利活用は「これから」だと思っています。そんな中で、りらいあでも Magic Moment Playbook を使い始めています。人材が足りない部分をテクノロジーの活用によって補完していけるといいなと思います。


モデレーター:なぜ、日本では営業関連ツールがあまり使われないのでしょうか?

村尾:まず、日本のエンタープライズ企業ではグループ営業が主流になっており、新規営業をあまりしないので効率化の必要性がそこまで強く感じられていないんだと思います。

また、米国では分業体制のもと、大量のリストに対してアプローチするのでテクノロジーを使わないと捌けないし変数も見えてきません。人が捌ける量ではないんです。

一方、日本はアプローチする対象があまり多くないので、テクノロジーを活用してもあまり変わらないと思われているんですね。

データから何か分析をするには、分析に資する加工が必要になり、加工されたデータには「信頼」が大事になりますが、そもそも日本ではデータの記録すら徹底する文化がない企業が多いです。記録のインセンティブも働かず、分析をしなくてはいけないという意識も育たなかったし、深い課題になってしまっていると思います。

営業生産性向上がうまくいっている企業のポイントは?

村尾:どうやったらツールを使えるかを考えるのが大事だと思っています。特に、シンプルに意味のあることだけをやる形に変わろうと、トップダウンで実行できる企業だと思います。

本質的に必要なデータやオペレーションが何なのかを考え抜き、トップダウンで徹底的に実行に移せる企業がうまくいっていると思います。そうしたことができる企業は、テック企業に多いと思います。

倉林氏:SaaS を使いこなすためには、トップのコミットメントが重要だと思います。SaaS の活用に合わせて、これまでのやり方や組織の変更も必要になるので、現場の抵抗は必ず発生します。データの入力をしない人にはボーナスを支給しない、というくらい、必ず活用させるという気迫でやり切ることが必要だと思います。

投資先のスタートアップは、規模が小さいこともありますが、トップが業績向上のため必死に使っているので効果的に活用できているのだと思います。

以上のように、DNX Ventures倉林氏・ Magic Moment 村尾によるプレゼンに加え、営業変革に関するトークセッションを通して、日米における営業テクノロジーの利活用状況の違いや今後日本の営業生産性を高めていくためのポイントが議論されました。今後日本においてツールを活用し、営業生産性を高めるためには、ユーザー側のトップを含めた全社的なコミットメントや分業による効率化の浸透が鍵になってくると言えるでしょう。

Magic Moment Playbook は三井物産グループの会社さまにご導入いただいています。

事例については詳しくは、こちらの事例記事をご覧ください。

登壇者情報

DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表 倉林陽氏

富士通、三井物産にて日米のテクノロジー分野でのベンチャー投資、事業開発を担当。Globespan Capital Partners、Salesforce Ventures で日本代表を歴任し、2015年に DNX Ventures に参画。これまでに Sansan やマネーフォワード、アンドパッドをはじめ、数多くの日本を代表する SaaS スタートアップに成長投資。BtoB・SaaS 領域における豊富な経験と見識から業界の発展を導いてきた。

三井物産 執行役員ICT事業本部長 小日山功氏

1989年に三井物産に入社後、SHIBAURA TECHNOLOGY INTERNATIONAL CORPORATION 副社長、芝浦メカトロニクス営業部長、三井物産エレクトロニクス事業部装置事業室長、インド三井物産情報産業部長等、営業・技術両方の現場経験とマネジメントに従事。その後、2013年から三井情報金融営業本部長、執行役員 CTO オフィス技術統括、取締役副社長 執行役員技術管掌を経て、2017年から取締役社長を歴任。

りらいあコミュニケーションズ執行役員 佐々木亨氏

三井物産入社後、モバイル通信、システム・ネットワークインテグレーター関連子会社へ出向、その後米国三井物産 Information Business Dept.にて ICT 関連事業に従事。2015年から三井情報執行役員として金融、ネットワーク領域を管掌し、2018年より BPO 事業領域に参画。現在はりらいあコミュニケーションズにて執行役員の傍ら、CIO 兼 CPO 兼社長室長、DX 戦略本部・情報セキュリティ統括部担当。

Magic Moment 代表取締役 CEO 村尾祐弥

毎日コムネット、マイナビを経て、Google Japan では営業統括部長を歴任。代理店営業、モバイル、ダイレクトセールスの立ち上げに従事し、そのオペレーションをグローバル展開・標準化。2015年に freee に参画し、1ヶ月でインサイドセールス組織の成果を倍にし、設立後初となる予算達成に導く。その後、執行役員営業統括権パートナー事業本部長としてパートナーセールスの垂直立ち上げなど成長を牽引。2017年から Rapyuta Robotics 執行役員ビジネス統括を経て、2018年9月より Magic Moment 事業を本格化。
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