こんにちは!採用担当の松繁です。
今回の記事は、弊社のメイン事業である「LIFULL介護」の事業部長、原田邦昭さんにインタビューさせていただいた内容の第一部です!
これまで様々な領域のメディアを経験してきた原田さんに、シニアマーケットの魅力を語っていただきました。ぜひご一読ください!
▼LIFULL seniorについて語っていただいた第二部はこちら
そもそもシニアマーケットって?
ーーシニア(高齢者)マーケットは今注目されているとよく言われておりますが、シニアマーケットがそこまで注目されているのはどうしてだとお考えですか?
シニアマーケットは、「確実に対象が増えていく」マーケットです。この傾向は日本の他のマーケットと比べても珍しいと思います。
日本の人口はこれから減る一方、高齢者や要介護者の人口はどんどん増えていきます。つまりマーケットが対峙する人数は右肩上がりに増えていくんです。
いまの多くのビジネスは、対象とする人数が右肩下がりのマーケットになることが多いと思います。しかし、ビジネス視点から考えると、対象の人数が多かったり、対象がどんどん増えるマーケットの方が、当然ビジネスはやりやすいんです。興味を持ってくれる人がたくさんいるってことなので。
しかも、シニアマーケットにはまだはっきりとした「正解」を見つけている人がいないと思います。いままでも、そしていまも多くの企業が参入しているのですが、なかなか成功するまで行きつけていません。例えば高齢者の80%が見ているコンテンツって思い浮かびますか? このマーケットで「私は圧倒的な勝者です」って人は、まだ誰もいないと思います。
だから、シニアマーケットはいわば「日本で最後のマーケット」として、多くのビジネスプレーヤーからチャンスだと捉えられて注目されているのだと思います。
ーーなるほど。でもなぜシニアマーケットでのビジネス成功は難しいのでしょうか?
強いニーズに応えるための解決策がそもそもわからないからじゃないですかね。
シニアマーケットにおける強いニーズとは、わかりやすく言うと「ずっと美しく健康でいたい」ということだと思います。この強いニーズに対して、例えば私たちLIFULL介護も含めて、世の中にある多くのサービスは周辺のニーズに応えているに過ぎないと思っています。
例えば、コスメやエステ業界も、すごくたくさんの広告費をかけていろんなメディアが乱立していますが、「老後の美」という観点では圧倒的なメディアはありません。これは「老いることなくずっと美しくいられる」ための明確な答えがないからだと思います。
「ずっと美しく健康でいたい」っていうニーズがあること自体は、ほとんどのプレーヤーは理解しているかもしれませんが、そのための解決策を本当の意味では提供できないっていうのが、シニアマーケットです。
メディアっていうのは、来てくれた(見てくれた)人に対して「来て(見て)よかった」と思ってもらえるような「ギフト」をあげないと、次また来てくれることはありません。でも、シニアマーケットの場合は、その正解が「ずばり」ではなくて、「老いる速度がさがるかもしれませんよ~」くらいの曖昧な答えしか出せないんですよね。
だから「誰もが手に取りたくなるギフト」がない中で、どうやったら自分たちのサービスを使ってもらえるか? それを考えないといけないし、そういう状況において、おそらくITという手段が一つの武器になるんだと思っています。
シニアマーケットの魅力
ーー原田さんご自身が次に挑戦する領域にシニアマーケットを選んだのはどうしてですか?
一言で言うと、「まだまだわからない世界だな」と思ったからです。
実は、LIFULL seniorに入社する前に、ある不動産会社のシニアビジネスを開発する部署と一緒に仕事していたことがあって。
その不動産会社で家を30年前に購入した人は、当時30代くらいで、現在は60代になっている。それで、きっと住み替えやリフォームなどその層にはニーズがあるはずなんですが、アプローチしたくても、30年前の営業担当は既に退職してたりしてつながりがなくなっていたんです。そういったターゲットをどうにか戻してくださいっていう依頼でした。
まずはWebマーケティングをして、リストを集めて…という方法で施策を回してみたのですが、うまくいかず…。そこでシニアの方の興味ある話題だけで編集した紙の冊子を配って、アンケートを封入してみたんです。すると、これが圧倒的に結果が良かったんですね。そういう体験があったので、シニアマーケットって世の中が当たり前って思っているやり方だけでは上手くいかないんだなぁ、って思ったんです。そこで興味が湧いたのがはじまりですね。
ーー実際にこのシニアマーケットにご自身が参画してみて、参画前と後で新たにわかったことはありますか?
実際に携わってみて、「サービスをいかに使うべき人に装着するか」ということが課題であるということがよくわかりました。そこに関してとにかくわからないことがまだまだ多いんだな、って。
例えば飲食業界でいうと、コロナの前は「配達する人員」や「注文に対応する手間」がなくて、「デリバリー」のサービスを実施するお店なんて、ピザやそば等くらいで、あまりなかったわけです。そこに「UberEats」が出てきた。注文を集める、注文を店舗に伝える、料理をデリバリーする。そんなことまでやって「UberEats」のサービスを未使用の店舗に装着させていった。何より効果的だったのは、アプリ作って、飲食店に使え、使え、ってプロモーションで利用させる戦略だけではなく、実際に「配達する人間」を作っちゃったこと。その人が「UberEatsです。料理を受け取りに来ました~」って店舗に来てくれる。これがまだまだアナログで管理していることが多い飲食店にピッタリだったんだと思うんです。
シニア業界もすごくアナログな部分が多く残っているわけで、高齢者の間に普及しているデジタルなものって数少ないですよね。でも、だからといってITの手段をあきらめるのではなくて、どう装着して使ってもらえるようにするか? を考えなければいけないんだな、と思っています。
あとは、自分が思ってたよりもDATAの活用が進んでいないって感じました。
高齢者の方々は人数がどんどん増えていくし、私たちのクライアントである介護施設には多くの高齢者の方々が入居されていくので、そこでデータも蓄積され、分析が進んでいるのだろうと思っていたんです。例えば、このくらいの年齢の人はこういった生活習慣の人が多くて、こういう食生活をしていたら何歳くらいにこういった症状が出ます、とか。かなりデータ活用が向いている業界だと思っていましたが、多くの企業で今はまだほとんど活用できていない状態ではないでしょうか。
だからこそ、これらDATAを蓄積・分析し、ダイナミックにこのマーケットで活用することができれば、大きなチャンスが生まれると思っています。
ーー原田さんはわからないことが多いマーケットにあえて自ら参入して、少しずつわかることが増えていく過程を楽しんでいるように見えます。
そうですね。正解がわからないということは、裏を返せば何をしても間違いだなんて誰も言えないんです。うるさい「先駆者」のお説教をくらう可能性も低いですよね(笑)。それに、わからないからこそ、周りの意見とか競合の凄さも素直に受け入れられる気がします。あそこあんなことしてるんだ。すごいな。これが正解になるかもしれないなって。
人によりけりだと思うんですが、もし自分だったら、答えがある業界に入るのであれば、もっと大企業にいきます。圧倒的な資本で正解を最速で実現すれば勝ちが見えますから。
でも、そういう「体力」だけで勝負するのは、なんか面白くないですよね。
今は自分のペースで、あるいは周りと協力しながら一歩ずつ進んでいるところです。
そこでもし失敗してしまったとしても、やってみてわかったことは確実に増えていくので、それを元に前に進んでいくことができています。
会社としても、挑戦を応援する文化があるっていうのは対象とするシニアマーケットとも相性がいいと思いますよ。
シニアマーケットで解決すべき課題
ーー原田さんがシニアマーケットの様々な“不”の中で、特に難しい、大きいと感じる“不”はなんですか?
一言で言うと、「お金と健康」ですかね。どちらか一つを解決すればいいというより、どちらも解決しなければいけない課題だと思います。どちらか一つがそろっていても、“不”は解消されませんからね。
「お金」っていうのはわかりやすいと思うんですが、「健康」が少し難しいかもしれません。基準がどんどん変わっていくものなので。
ーー「健康」であれば、「健康である」つまり「病気がない」という絶対的基準があるんじゃないかと思いますが。
一口に「健康である」といっても、時代や年齢などによって、基準が全然違うんです。例えば、今も自分は健康だと思っていますが、20代の時と比べたら「健康」の基準は全然違いますよね。さらに年齢だけとっても「肌年齢」「髪年齢」「腸年齢」とかありそうですし、他にも、肩こりから腰痛はじめ、年齢に関わらず健康を悩ませる要素は多くあり、花粉症みたいに私の子どものころには話題にもならなかった病気も出てくる。さらに個々人の「持病」なんて要素まである。
そこまで基準が多くあると誰にどんな情報を提供すればよいのか、本当にわかりづらいと思いますし、ヘルスケア系のメディアが乱立している理由もそこにあるのだと思います。
ーー確かに。では次に、こういったシニアマーケットで解決すべき課題を自分事化するのは、特に若い世代には難しいことかもしれませんが、それはどうお考えですか。
自分事化できないこと自体が結構不思議なんですよね~。シニアマーケットで起こっている問題は全く特殊なことではなくて、たった3年後くらいには、自分の身の回りで頻出する問題だと思います。
例えば、いま社会問題になっているヤングケアラー(※1)の問題がありますよね。
厚生労働省の発表で中学生の5.7%がヤングケアラーである(※2)というデータがありますが、それって17人に1人の割合で、いまでも学校のクラスで例えるとクラスの2人くらいはヤングケアラーってことなんですよね。この割合ってこれから増えていくと思いますよ。
※1:法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもをヤングケアラーとされています。(厚生労働省HPより)
※2:厚生労働省(調査:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社) “ヤングケアラーの実態に関する調査研究について” 令和2年3月 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000757978.pdf
ーーそう思うと大きくて身近な問題ですね。最後に今後シニアマーケットはどうなっていくとお考えでしょうか。
「シニアマーケット」という言葉は20年後くらいには死語になっていると思います。
2020年9月15日現在の統計では、65歳以上の高齢者の人口は約3617万人で、日本の人口の28.7%。この数値はまだまだ増加すると言われていて、あと5年もしないうちに人口の3割以上が65歳以上の高齢者になる推定もあります(※3)。そう思ったら、「シニアマーケット」がある特定の限定された領域だとは思えなくなると思います。
消費額を考えても、医療費や未病のための費用を「消費」として考えたら物凄い大きな額になります。ビジネスとして興味を持つ人が多いのもこういった理由ですよね。
特に、日本に住む私たちにとって、超高齢化社会は自分事として考えるべき課題ですし、切っても切り離せないとても「身近な」マーケットだと思います。
※3:総務省統計局HP “1.高齢者の人口” https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1261.html
原田さん、シニアマーケットの理解が深まるお話ありがとうございました!
さて、第二部では、原田さんがLIFULL seniorに入社を決めた理由や、今チャレンジしていること、これからチャレンジしたいことに関しても下記の記事で語っていただいておりますので、ぜひご一読ください!
▼LIFULL seniorについて語っていただいた第二部はこちら
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