新規サービスを複数立ち上げ中の株式会社HANABISHI。立ち上げ期特有の過酷で地道な作業がつづくなか、代表・川村が、年間目標を達成した人に「予算1人10万円以下&行き先自由な旅行」という、なかなか豪華で楽しそうな休暇をプレゼント?しかし、ただの休暇ではないらしい、それには条件がありました。
条件は「MISSIONを自分で設定・計画し、旅を通して成長すること」。MISSIONを決め、現地で遂行して帰ってくれば、あとは各自好きなように予定を立てられるという、HANABISHIならではの自由な旅行となりました。
今回はWantedlyブログで、MISSION&成果を発表! 軍資金以外は会社のサポート一切なしの旅行から無事帰還した旅レポを公開します!
選ばれたのはHANABISHIの鉄砲玉ことミウラと、HANABISHIのヒットマンとして重宝されるホロケイによるヤバい予感しかしないコンビ。一体どんな旅行になるのでしょうか・・・!
あらすじ
ある日のこと。「テーマ・ミッションを決めて旅行しろ」。会社からそう命じられた僕たちは、迷いなくこう思ったのだった。
『少年漫画の主人公のような成長をする旅がしたい......』
そう、『ドラゴンボール』の「孫悟空」や、『NARUTO』の「うずまきナルト」など、少年漫画を代表する主人公のように……。
少年漫画好きの男子2人が集まってしまえば、そうなるのは必然のことと言えた!
では、少年漫画のような旅とは一体!?......
登場人物
主人公:ホロケイ
1番好きな漫画は、週刊少年サンデーの名作『からくりサーカス』という僕「ホロケイ」!『封神演義』や『シャーマンキング』など、ユルイ系主人公の活躍する物語を好んで読み、「魔族の血が覚醒」「父親が超強い」「兄貴が行方不明」など、王道の展開の少年漫画が大好きだ!
仲間:ミウラ
もう1人が、冨樫義博先生作・『HUNTER×HUNTER』を何よりも愛するミウラ!『ジョジョの奇妙な冒険』や、『寄生獣』などユニークな作風や作画で、単純な力と力のぶつけ合いに終わらない、頭脳戦が好きな男!.....と思いきや、元祖バトル漫画の王様『ドラゴンボール』も大好き!ちなみに彼は、僕・ホロケイの高校と大学の後輩でもあるのだ!
少年漫画のような旅とは!?
その答えに気がつくのに、そう時間はかからなかった。
僕らが読んだ数々の少年漫画の名作を思い起こした際、主人公たちの成長には必ず、”修行”と”試練”の存在があったのだから!
『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空は、ナメック星へと向かう宇宙船のなかで体に負荷をかける重力トレーニングを行い、劇的なパワーアップを果たす!ライバル・ベジータですら敵わなかったリクームを、一瞬で撃破した!
そして、『ハンター×ハンター』では、主人公・ゴンとその仲間が、ハンター試験と呼ばれる過酷な”試練”に挑戦。ゴンたちは多くの試練を乗り越え、プロハンターの資格を手に入れた。その後の活躍について、多くは語るまい。
では、旅行における「修行」とは?「試練」とは?
難航する国決め。しかし、お互いの意見を出し合ったことで、1時間とかからず結論は出た!
選んだ国は、「タイ」と「ラオス」。
そして僕たちは、タイとラオスを旅行するにあたり、『少年漫画の主人公のような成長をする』ため、2つの修行&試練(ミッション)を定めた!
少年漫画の主人公のような成長をするにあたり、最もわかりやすい成長は何かしらの資格を取ることだなと考えた僕たち。
『ハンターハンター』のプロハンターになるためのハンター試験や、『ヒカルの碁』のプロ棋士になるための試験など、何かしらの資格を得るための”試練”は、少年漫画の名作に数多く登場している!
一つ目のミッション(試練)は、ラオスで「象使い」になること!
なぜなら、「象使い」の資格は、東南アジアの『ラオス』で獲得できるから!
果たして僕たちは、立派な象使いになることができるのか......
少年漫画の主人公といえば、やはり強くなるための”修行”を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。
前述の重力の修行をした『ドラゴンボール』の主人公・孫悟空や、卍解の修行後に副隊長を素手で叩きのめすほど強くなった『BLEACH』の黒崎一護など。
そこで僕たちは、タイの伝統的な武術『ムエタイ』を習う。
タイの国技であるムエタイは、パンチやキックといった攻撃はもちろん、肘や膝を使った技が特徴的な格闘技だ!
また、「立ち技世界最強の格闘技」とも謳われており、少年漫画の主人公のように成長したいと願う僕たちにとって、これ以上ない選択ではないだろうか!
日本で最も売れていると言われている、漫画界のモンスター『ONE PIECE(ワンピース)』。その魅力とは一体何だろうか!?
その1つが仲間だ。イーストブルーの田舎から船出した「ルフィ」は、船上レストランで「サンジ」を、水の都ウォーターセブンで「フランキー」を仲間にした。出会ったその場で仲間になったのだ。
そこで僕たちは、"タイで子供たちと仲良くなって一緒に遊び、仲間にする"というミッションを定めた!
最後には仲良くなった子供たちを旅に誘う、もし断られたらこう言ってやる。
「うるせぇ!行こう!」 ドン!!
そして日本へと連れて行く!誘拐!
ーーーーついに迎えた運命の日…
第一話 いざ、新天地へ
成田空港のロビーで待ち合わせをした僕ら。
これが恋愛ドラマだったら、"海外出張から帰って来た彼氏(もしくは彼女)に、恋人が抱きつく"みたいなシチュエーションになるんだろう!
しかし、四捨五入すれば30に近い男たちの集合に、ロマンスのかけらも見当たらなかった...
とりあえず、2人して最寄りの椅子へ腰掛ける。あたりを見渡すとキャリーケースを持った日本人が目立つ。当たり前かぁ。成田だもんなぁ。
それと部活の遠征だろうか、見るからに学生という感じに制服を着込んだ青年たちが、ずらりと受付前に並んでいた。受付のお姉さん大変そう〜
ちなみにこの時、海外旅行初の僕はワインの澱のように、不安がちらちらと溜まっていた!
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、大学時代の後輩でもあるミウラは言う。
「今どんな気分ですか?」
「ワクワクするけど、不安なんだよね」
その言葉が全てだった!
くじら島から冒険の一歩を踏み出した『ハンターハンター』の主人公「ゴン・フリークス」も、
伝説の厨具を探しに中華全土に渡る旅に出た『真・中華一番』の主人公「劉 昴星」もきっと同じ気持ちだっただろう......
僕は旅行童貞。物語の主人公は、誰もが最初は不安からのスタートだ。いよいよ初海外。
鉄の翼に乗ってまだ見ぬ新天地へ向かう!
この旅がぼくたちを成長させてくれることを願って……
第二話 カレーと夜行列車
台北で飛行機を乗り継ぎ、バンコクの空港に到着。
さて、腹が減っては戦はできぬ。
「うまそうなカレーの店があるんで、行きましょう」
ミウラは、着いてそうそう、飯の話。
「行ってみるか」
いざゆかんカレー屋!と、駅を出る。そのすぐの道路っぱたには、タクシーがずらりと並んでおり、運転手がギラギラとした目つきで、駅から出てくる人間を品定めしている。
「この人たちは観光客をカモろうとしている」と、海外旅行慣れしているミウラから教わった。なんと、彼らは相場の運賃よりも高い金額を要求することがあるそうだ。みなさんも旅行に行く際は、カモられないように気をつけましょう。
途中、土砂降りだったり、店舗が見当たらなかったりと、すんなり到着とは行かなかったものの、ミウラの案内(Google map)で無事、屋台式のカレーショップに到着。
Netflixで配信されている、海外の屋台料理を取材したドキュメンタリー番組『ストリートグルメ』でも紹介されていた名店らしい。
カラッカラに乾いたソーセージをトッピングに勧められたのだが、これが程よい脂っ気があって、なんともうまい。
これで日本円にして、だいたい一杯150円くらいというのだから、驚きだ。
カレーの天才と呼ばれる『ミスター味っ子』の「堺一馬」が作るカレーと、どっちが美味しいだろうか。
ブアカーオ(※日本でもお馴染みのムエタイ選手)に似ていると言われる僕が、タイ人の方々とともにカレーを食べた。
美味しいカレーを食べたあとは、寝台列車でバンコクからラオス国境付近のノンカーイへ移動。気分はまさに「世界の車窓から」。車内で石丸さんのナレーションを思い出しつつ、窓から外を眺める。
いつのまにか眠っていたらしい。到着はあっという間だった。着くとそこはモロ、東南アジア。心なしか、ナンプラーの匂いを感じるような......
そして国境線を越えて、ラオスのビエンチャンに到着した。目的地はラオスのルアンパバーン。ビエンチャンからは飛行機でルアンパバーンへ向かう。
もちろん、象使いの免許を取得するためだ。
第三話 不安を煽るプロペラ
ラオスでは、象使いの免許を取ることができる。なお、人気アイドルグループ「欅坂46」の菅井友香ちゃんも、獲りたい資格だそうで。
習得のための試験はルアンパバーンで、受けなくてはいけない。
まだ見ぬ試練を前に、僕は覚悟を決めた。
「今から死亡率・事故率ナンバーワンの、飛行機に乗ります」
「今撮ってる動画が遺言になるかもしれませんよ」
ミウラはスマホでムービーを撮りながら、不吉な言葉を口にする。
なんでもこの「Lao skyway」は、世界で1番事故が多いんだとか(※根拠のあるソースはなし)。
日本に帰りたい。
先ほどの覚悟は一瞬で消し飛んだ。周りを見ると僕たち以外にも、胆力ギンギンの奴らがわんさか!
「神様......」と祈りながらのフライト。
やけに激しい機体の揺れと、バラバラとうるさいプロペラ音が不安を駆り立ててくる。
飛行機に乗るまでは、ジャングルを舞台にしたギャグ漫画『ジャングルはいつもハレのちグゥ』の登場人物ぐらい、ほのぼのとしたルックスの僕だったが......
「Lao skyway」に乗った瞬間は、僕の顔はきっと恐怖のあまり、藤田和日郎先生の名作『からくりサーカス』の水墨画のような絵柄になっていたことだろう。
祈りのおかげなのか、2時間ほどのフライトで、何ごともなくルアンパバーンに無事到着。
空港を出てタクシーに乗り込み、当日予約したゲストハウスへ向かった。
第四話 湧き出る雑念
ゲストハウスでチェックインを済まして、ようやく寝れる...わけはなかった。次の日に象使いの資格を取るために、休む間も無く旅行会社を回りまくる。
そしてようやく入った旅行会社。
「明日、象使いの免許を取りに行きたいんですが……」
「わかりましたー!」
愛想よく、30代前半ばと見られる女性が対応してくれた。
ソンさんと名乗るこのラオス人女性が、今回の象使いツアーに同行してくれるとのこと。
ソンさんは、日本に留学していたことがあるらしく、簡単な日本語なら話せるとおっしゃっていた。
そういえば、週刊少年サンデーの執事コメディ漫画『ハヤテのごとく!』に登場する「マリア」さんは、13ヶ国語をマスターしたという。日本語で精一杯の僕には、2人のような言語が堪能な人が羨ましい。
「日本人の女性のお客さんが1人、一緒に行くのでよろしくお願いします。」
ソンさんにそう伝えられたのは、諸々の受付を済ませ、その場を後にしようとした時のことだった。
どうやら明日は、僕ら2人のほかにもう1人加わった、計3人で象使いの免許を取るらしい。
「ホロケイさん、どんな人だと思います?明日いっしょにいく女性」
旅行代理店を出て20秒くらいしてから、ミウラが聞いてきた。
「ひとり旅が好きな、女子大生じゃないかな」
少しばかり期待に胸を膨らませて、僕は言う。
「自分に自信が持てない、そんな自分を変えたくてミスコンに出場したんです」という理論を持ちがちな、黒髪ロングヘアーの女子大生。もしくは、ミディアムショートの茶髪で「私ラーメンとか焼肉に1人でいけちゃうんです〜」と言いがちな"自称サバサバ系女子"(だけどかわいい)なんかと、ゾウ使いの資格をきっかけにLINEを交換するビジョンが、僕の頭の中にはありありと浮かんでいたが、ミウラの冷たい一言が心を突き刺す。
「俺は普通におばさんだと思いますよ。」
次の日、ミウラの予感は的中した。
僕らと一緒に象に乗る日本人は、年頃は40代後半の大人しそうな女性だった。
(なにを期待していたんだ......!僕は!!)
そう。我々がタイ&ラオスにきたのは、恋人探しのためではない!!!
あくまで「少年漫画の主人公のような修行をする」ためだ!
どうしても恋愛がしたくなったらキンドルで、マガジンの人気ラブコメ『五等分の花嫁』を読むか、高橋留美子先生の名作『めぞん一刻』でも読んでりゃいいさ!
旅行先でかわいい女子大生といい感じになるって......『BOYS BE...』じゃねぇんだからさ...夢見んな!バカ!
己に残った最後の雑念を振り払い、「ホロケイ」、「ミウラ」、「ソンさん」、「40代後半の女性」4人を乗せたバスが走る。
車内では、ミウラが率先して場を回していた。対する僕・ホロケイは、振られた時だけ話をする。というか、ほとんど話をしなかった。
冨樫義博先生の名作バトル漫画『幽☆遊☆白☆書』。
主要キャラの1人・蔵馬が、「禁句(タブー)」の能力を持つ「海藤」との戦いで、1分ごとに"あ"から順に50音を喋れなくなるゲームの提案をした。もしこれを破れば、魂を取られてしまう...... このやりとりから学んだこと、それは...
「安易なコミュニケーションが命取りになる......」
ミウラの質問にも、途中から「さてね」で返す。すでにこの時、あ行は消滅していた。(絶対に喋らんぞ...)
そんな熾烈な"タブー"バトル(自分だけの)を繰り広げているうちに到着。
第四話 象使いへの道
到着すると、日本では見慣れない動物・象(エレファント)がたくさんいる。
同行者が女子大生ではなかったことを忘れ、僕は象がいるという非日常に対し、
なんだかワクワクしていた。
恐る恐る象を撫でるミウラ。
僕もそばにいた象に優しく触れる。
「……ホロケイさん、象ってなんか質感キモくないですか?」
「…たしかに……」
今まで体感したことのない独特なテクスチャーに困惑してしまった。ヒソカの念能力「薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)」でも、この奇妙な質感は再現できまい。
荷物を置いた後は、さっそく、ソンさん翻訳のもと、象使い講義が始まる。
この講義で学ぶのは、象に命令する言葉だ。なんでもタイの象は、タイ語の命令しか聞かないとのこと。
なお僕の着ているTシャツは、高校2年生の時に京都の修学旅行で買った「新選組Tシャツ」だ。遠い異国の地・タイに来たとしても、自らが"侍(日本人)"であることを忘れたくなかった。
それは、「郷に入っては郷に従え」をモットーに生きる僕だからこその、タイに対するささやかな抵抗だったのやもしれない.....
11人兄妹の10番目であるソンさんが、黒板を使って熱心に説明を始める。
ちなみにソンさんには旦那さんと子供がいて、夕飯は自分で作るらしく、外食はほとんどしない。その割には、結構ぽっちゃりだ。
「左へはサイ、前へはパイ......」
結構覚えることが多くて、焦り出す。そうだ。ゾウ使いは、国家資格だった。
ちゃんと勉強しないと...!
「使わないけどね」
オイィィィィィィ!!(『銀魂』の「志村新八」風に)
なんでも、象は訓練士(飼い主)の声でしか、命令を認識しないとのこと!
だから今ここで学んだ言葉を言ってみても、象は僕たちのいうことは一切聞かず、そっぽを向くのだ!!!
しゃらくせぇ!シャルナークの「携帯する他人の運命(ブラック・ボイス)」よろしくアンテナぶっ刺すぞ!!!!
気を取り直して、今度はソンさんから、"象に関するマニュアル"を渡された。
そうそう、こういうのを読んで勉強したいのよ、僕たちは。
象使いマニュアルには、象の生態や保護活動について書かれていた。日本語訳版も記されていて優しい。
しかし、どういう意図なのかわからないが、挿絵として、なぜか象の交尾をとらえた写真が掲載されていたのだ。
なんで??
それは、『ボボボーボ・ボーボボ』を初めて読んだときに感じた意味不明さと似ていた。
第五話 川に溶けこむ象の糞を超えろ
いよいよ象乗り初挑戦。最初は、僕とミウラ、そして訓練士の3人で乗る。
象の上って意外と高い、象の肌がなんかザラザラしている、揺れる……全てが初体験。ドキドキの連続だった。
さて、チュートリアルも済んだところで、いよいよ1人で搭乗。訓練士は途中から下象し、僕らは1人で象に乗らなくてはいけない。
「案外楽勝だな」と思っていたら、象がザブンと川の中に入っていった。
そして、『1・2の三四郎』の主人公「東三四郎」がヒンズースクワットをするかのごとく、川中へと沈んで行く。ザパーン!!!!!!
オオウ。下半身はびしょ濡れ。しかもなんかクセェ。
川には象の糞が溶け込んでいるという情報を耳にするが無視する。
修行に苦難はつきもの。これくらい、どうってことない。
思わぬアクシデントには見舞われたが、一通り騎乗ならぬ騎象を終えると、同行したプロの象使いに木片を渡され、象の頭や体を洗うよう指示される。
ゴシゴシと洗われている最中の象(エレファント)は、なんだか気持ちよさそうだった。
さて、一回目の象搭乗を終えて、昼食を取った。バイキング形式のランチで、取り放題!
ONE PIECEでルフィがクロコダイルを倒した後、アラバスタ王国から感謝の気持ちを込めて作られた、豪勢な食事の数々を思い出す。
ん?
なぜかラオス人の少女2人が、僕をみてケタケタ笑っている。ミウラではなく、明らかに僕だった。
だから、僕は鈍感系主人公を演じてやった。
肝心な箇所を聴き漏らす『ニセコイ』の主人公「一条楽」や、栗田さんの好意に全然気がつかなかった『美味しんぼ』の主人公「山岡士郎」などの、"異性の好意に鈍感な感じ"を装う。
そして「なんだよ〜俺の顔になんかついてんか?」みたいな振る舞いをするわけだ。
なお、僕の場合装っているのだから、純血の鈍感系主人公ではない。
"メタ"鈍感系主人公だ。
それはともかく、だしがしっかり効いたフォーや、カオマンガイ的なバカうまライスなど、ラオスの飯はとにかくウメェ〜!
島袋光年先生の名作『トリコ』は、うまいものを食べると細胞が反応して、劇的に強くなるグルメバトル漫画。
僕も、この飯たちを食べたことで、細胞のレベルがバチバチに上がった気がする。
今なら、美食會の副料理長の1人「グリンパーチ」にも勝てんべ!
「お前は?ミウラ?」
そんなこんなで、午後も象の搭乗訓練をし、第一の試練は終了!
無事、象使いの資格を取得したのだった。
感無量。
歴史漫画の名作『キングダム』では、象たちを"戦象"に仕立てて、「秦国」の騎兵や歩兵をガンガンに蹴散らしていた。
そんな恐ろしい武力を持つ象を、僕とミウラはコントロールできるようになったわけだ。
自分の力に責任を持たなくてはなるまい。
第六話 揺れる風鈴
象使いの免許を取得した次の日、ルアンパバーンからタイのバンコクへと飛んだ。
少年漫画の主人公といえば、やはり強さは不可欠。
バンコクにあるムエタイジムへと足を運んだ。
金髪白人美少女から、イギリスのオックスフォードに通っていそうなガリ勉、ゴリゴリのタイ人まで。訪れたムエタイジムは、まさに人種の坩堝だった。
明らかに外国人ばかりのジムで、「どうしよう......」と入り口で立ち往生する僕たち。
すると、恰幅のいいおじさんがツカツカと僕たちのところへ来て「見学?」みたいな簡単なテンションで話しかけてくれた。
「予約してないんですけど......」遠慮がちに言った僕たちのことも、快く受け入れてくれた。
ちなみにムエタイの練習料金は、日本円で500円くらい。
それをおじさんに払うと、今度は身長180くらいの筋骨隆々としたトレーナーが、僕たちのところへくる。ギリ、英語ならわかる、くらいのゴリゴリのタイ人だった。
ムエタイの練習のため、短パンに着替えた僕とミウラは、まずパンチの練習から始めた。
「ワントゥー!ワントゥー!」
英語でテキパキと指導してくれる強面のトレーナー。
パンチの次はキック、その次は足捌きなど、僕たちは教えられたことを一つ一つ確実に習得していく。
すると、僕だけがリングの上に呼ばれた。ミットを構えるトレーナーに、いまさっき習った技を繰り出せ、と言うことらしい。
トレーナーは容赦無く、「hey!」「ホウ!」などと技を要求する。しかもそれが3R(9分くらい)続くわけだ。休みはほとんどなし。キツすぎだろ。この人、絶対モテない。
(キツい…死ぬ…)
練習の疲労からか僕の放つ蹴りの軌道が歪み、途中何回かトレーナーのキン○マを蹴ってしまう。マガジンのヤンキー漫画『A-bout!』の砂原ばりのナイマン蹴りに、彼は対応できなかったらしい。
タイ原産の風鈴が、したたかに揺れた。
するとトレーナーは、超神水を飲んだ時の孫悟空並みに、過剰な苦しみ方をする。一通り痛みが治まると、「ココ!ココ!」みたいな感じで、自らの構えるミットを指差す。
どうやらこのトレーナー、「骨掛け」はできないらしい。
「骨掛け」は、格闘漫画の金字塔『グラップラー刃牙』に登場する「愚地独歩」が使う、"自分の睾丸を腹の中に隠す技"だ。琉球の秘伝と言われる、その技の偉大さを知った。
なんやかんやで、地獄のムエタイ練習が終了。
身体中バキバキ(刃牙だけに)だけど、第二の試練(修行)を完遂!
これで街でヤンキーに絡まれても、必殺のムエタイキックをお見舞いできる。
『ホーリーランド』みたいな路上ファイトもなんのその、だ。
第七話 無垢な悪魔
ムエタイを習ったあとは、ついに最期のミッションへ挑戦する。
それは...現地の子どもたちと友達になること。
"元気いっぱいに遊ぶ現地の子どもたち"を探し、街を練り歩く。
見ると、日本の都会ではなかなか見かけない、ランニングシャツを着たおっさんがいて、自分の故郷である田舎を思い出しながら、とにかく歩く。
時刻は夕方だ。夜になって子供たちが家へと入っていったら、ゲームオーバー。
期限は刻々と迫っている。時が来たら、死のウイルスがばら撒かれてしまう『ブラッディ・マンディ』のような緊張感で、歩く。
しかし……
ああ、子供がいない。とにかく探す。日も暮れかかった頃、なんとか道端でバドミントンをしている子供たちを発見。
ここで僕が生来の人見知りを発揮。一緒に遊ぶことはできなかったのだ。かろうじて、木に引っかかったシャトルを回収して、渡したくらい。
「アヒャヒャヒャ!!!」
引っかかったシャトルを渡すと、子供たちが笑う。そんな姿を見て『D.Gray-man』に登場する子供型の悪魔「レベル4」を思い出す。
結局、修行3は失敗に終わった。
しかし、バスケ漫画の名作『スラムダンク』に登場する山王工業の監督は、こう言っていた......
「負けたことがあるというのが いつか大きな財産になる」と。
ミッションは失敗しても腹は減る。僕たちは最期のミッションを達成できなかったことを反省。悔し涙を流しながら、屋台のタイ料理を貪った。
屋台で食べたタイ風?チャーハンは、ニンニクがよく効いており、アホみたいに美味い。
これは日本では食べられない味だった。150円くらいだった気がする。全体的に飯が安い。
屋台のタイ風チャーハンで涙を拭った夜を過ごし、バンコクのゲストハウスで一晩明かす。タイ人女性とのエッチな『ToLOVEる』を期待して、夜の街に繰り出そうとしたが、旅の疲れからか泥のように眠ってしまった。
次の日の朝、帰国...だ。
最終話 来世への願い
タクシーに乗り込み、空港へと向かう。あっという間に飛行機の座席で、テイクオフの時間を待つ。かわぐちかいじ先生の新作『空母いぶき』で、尖閣諸島を占領する中国軍に対し、戦闘機を向かわせるがごとく、飛行機は離陸した。
座席に座りながら物思いに耽る僕。
思えばタイ、ラオス旅行を経て、多くのものを得た。象使いの資格の取得、ムエタイで手に入れた肉体的な強さなどの目に見える成長から、ハート(心)の成長まで。
『BLEACH』の「黒崎一護」が「最後の月牙天衝」を習得したくらいには、成長できたんじゃなかろうか。
そして何よりタイやラオスの人たちの大らかさに触れて、とにかく心が広くなった。『シャーマンキング』のユルユル系主人公「麻倉葉」のように。
微笑みの国・タイに送り出された僕は、優しい気持ちに満ち満ちる。座席に深く深く沈み、足を前に放り投げながらじんわりと眠りに落ちていった......そう、ある願いを頭の中に浮かべながら......
「次こそ魔族に生まれますように...」
To be Continued...…